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非特異性腰痛の複雑な要因

腰痛と一括りに言ってもその要因は多種多様です。多くの方が人生で一度は経験をするというリサーチデータも報告されている、非特異的な腰痛を引き起こす原因にはどのような要因が含まれるのでしょうか?痛みを感じている時、身体構造的に起こり得る変化にはどのようなものがあるのでしょうか?キネティコスのコンテンツ提供者達の見解をぜひチェックしてください。

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悪い姿勢は腰痛を起こす? パート1/2

悪い姿勢は腰痛を起こすとか、腰痛を治すには姿勢を改善しなさいという意見を、恐らくみなさんは聞いたことがあるのではないでしょうか。理学療法士やカイロプラクター、パーソナルトレーナーなどからのこのような意見を、インターネットの至る所で見つけることができます。Googleで“姿勢と痛み”と検索すれば400万件もヒットします。 こんなに多くの姿勢監視員がパトロール中ですので、遅かれ早かれ権威ある監視員にあなたの姿勢も注意を受けるでしょう。 たとえば、比較的背中が丸く(後弯)なっているとしたら、“上位交差症候群”があると言われるかもしれません。これは、肩が前方へ丸まり、胸が凹み、頭が前方に出ているというパターンです。一般的な“矯正”としては、胸のストレッチと左右の肩甲骨の間の筋群の筋力強化があります。 また、腰の反りが比較的大きい(前弯)としたら、“下位交差症候群”があると言われるかもしれません。これは、骨盤が前方に傾き(骨盤前傾)、腹部が前に出っ張っているというパターンです。多くの人が推薦する矯正としては、腹部と臀部の筋力強化と股関節屈筋群のストレッチ、そして1日を通して腹部を凹ましたりコアを活性化し続けるというものです。 ほかにも頻繁に耳にする考え方として、非対称性が痛みを生むということがあります。たとえば、セラピストは骨盤のアライメントの捻りや歪みを見つけ出し、矯正しようとします。なぜなら、それが背骨を回旋させたり曲げたりしてしまうことを心配するからです。また、一方の下肢長がもう一方より長いことなどを気にするセラピストもいます。それは、その下肢長差が骨盤の左右の高さを変えてしまうからです。 これらの考え方には直感的な訴求力があり、また、数多くの専門家たちから提唱されています。しかし、これらにはエビデンスの裏付けがあるのでしょうか? 姿勢を分析したり、理想的なアライメントとされるものと比較し歪みを矯正することに時間を費やすべきでしょうか? これらの疑問に答えることに役立つ、いくつかのエビデンスをみてみましょう。たいていの書籍や論文からは知り得ないことかもしれませんが、痛みと姿勢測定との関係に注目している研究が数多くあります。しかし、ほとんどの研究で関連性は一つも見つかっていません。では、みてみましょう。 研究によって姿勢と痛みの関係に何があるか分かったのでしょうか? 腰痛と姿勢の関連性を探るリサーチでは、一般的にいくつかの異なる研究設計を使います。 横断研究では、研究者らは被験者となる人を、腰痛ありと腰痛なしのグループに分けます。そして、下肢長差や骨盤の傾斜、腰椎、胸椎、頸椎の弯曲度など骨盤と脊柱のアライメントを計測する方法として、X線画像や放射線写真などを使用します。これらの計測後、研究者らは、腰痛ありと腰痛なしのグループで姿勢に顕著な差があるかどうか調べます。 前向き研究では、研究者らは腰痛なしのグループの姿勢を分析し、ある特定の姿勢の被験者が将来的に腰痛を発症する可能性が高いか低いかを調べます。 これらの研究の結果が完全に明確ではないにしても、ほとんどの研究では、悪い姿勢が腰痛を起こすという主張を裏付けしていません。下記に代表的な所見をまとめます: 下肢長差と腰痛の関連性はなかった。 [1] 重度、中度の腰痛と腰痛なしの3つの男性グループの合計321人において、腰椎前弯や下肢長差に顕著な差はなかった。[2] 頸椎の弯曲の測定値と頚部痛に関連性はなかった。[3] 腰痛ありと腰痛なしの600人を対象にした腰椎の前弯と骨盤の傾き、下肢長差、腹筋とハムストリングと腸腰筋の長さにおいて顕著な差は見られなかった。[4] 非対称性の姿勢、胸椎の過剰後弯、または腰椎の過剰前弯をもつ10代の若者において、姿勢が“良い”他の同年代の若者と比べ、大人になってから腰痛を発症する傾向はなかった。[5] 妊娠中に腰痛の弯曲がより増加した妊婦に、より腰痛を発症する傾向はなかった。[6] 無理な姿勢を強いられる職業に従事している人だからといって、腰痛レベルが高いということはなかった。 [7] 脊柱アライメントの測定値と痛みとの間に関連性があるという研究はあるものの、この法則には例外がある。[8, 9] エビデンスの重要性を示す代表的なものは、おそらく痛みと姿勢の関連性を扱った54件以上もの研究を分析した2008年のシステマティックレビュー[10]でしょう。しかし、研究の質は全般的に低く、また矢状面(前後)における脊柱のアライメント測定と痛みの関連性を支持するようなエビデンスにはなりませんでした。 上記のリサーチでは、姿勢と痛みの間に何らかの相関性が存在するとしても、それは弱いことを示唆しています。腰痛との相関性因子として、エクササイズや仕事への満足感、教育レベル、ストレス、喫煙などが顕著に影響するという研究が数多く発見されていることを考慮すれば、この結果は特筆すべきものです。[11] もし痛みと姿勢の相関性が存在するとしても、因果関係を証明するものではありません。痛みが悪い姿勢の原因となっていて、その逆ではないのかもしれません。これには、かなり真実味があります。腰痛を起こすような溶液を注射された人は、無意識のうちに違う姿勢をとろうとするようです。[12] 驚きですよね!! さらに、もし悪い姿勢が腰痛に関与しているにしても、姿勢は矯正されるものであると結論付けるには無理があります。しかも、“悪い姿勢”を正すことで腰痛が軽減されるという保証もありません。 参照文献 1. Grundy, Roberts (1984) Does unequal leg length cause back pain? A case-control study. Lancet. 1984 Aug 4;2(8397):256-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6146810 2. Pope, Bevins (1985) The relationship between anthropometric, postural, muscular, and mobility characteristics of males ages 18-55. Spine (Phila Pa 1976). 1985 Sep;10(7):644-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4071274 3. Grob, Frauenfelder et al. (2007), The association between cervical spine curvature and neck pain. Eur Spine J. 2007 May; 16(5): 669–678. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2213543/ 4. Nourbakhsh, et al. (2002) Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2002 Sep;32(9):447-60. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 5. Dieck, et al. (1985) An epidemiologic study of the relationship between postural asymmetry in the teen years and subsequent back and neck pain. Spine (Phila Pa 1976). 1985 Dec;10(10):872-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 6. Franklin, et al. (1988) An analysis of posture and back pain in the first and third trimesters of pregnancy. J Orthop Sports Phys Ther. 1998 Sep;28(3):133-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 7. Lederman (2010) The fall of the postural–structural–biomechanical model in manual and physical therapies: Exemplified by lower back pain. CPDO Online Journal (2010), March, p1-14. http://www.cpdo.net/Lederman_The_fall_of_the_postural-structural-biomechanical_model.pdf 8. Chaleat-Valleyed, et al. (2011) Sagittal spino-pelvic alignment in chronic low back pain. Eur Spine J. 2011 Sep;20 Suppl 5:634-40. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21870097; 9. Smith, O-Sullivan, et al. (2008) Classification of sagittal thoraco-lumbo-pelvic alignment of the adolescent spine in standing and its relationship to low back pain. Spine (Phila Pa 1976). 2008 Sep 1;33(19):2101-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18758367. 10. Christensen, et al. (2008) Spinal curves and health: a systematic critical review of the epidemiological literature dealing with associations between sagittal spinal curves and health. J Manipulative Physiol Ther. 2008 Nov-Dec;31(9):690-714. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 11. Papageorgeoui, et al. (1997) Psychosocial factors in the workplace--do they predict new episodes of low back pain? Evidence from the South Manchester Back Pain Study. Spine (Phila Pa 1976). 1997 May 15;22(10):1137-42. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 12. Hodges, Moseley (2003) Experimental muscle pain changes feedforward postural responses of the trunk muscles. Exp Brain Res (2003) 151:262–271 http://cdns.bodyinmind.org/wp-...

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悪い姿勢は腰痛を起こす? パート2/2

なぜ、痛みと姿勢には関連性がないのでしょうか? 上記のエビデンスは驚きであり、常識を覆すものです。なぜ痛みと姿勢に関連性はないのでしょうか? 姿勢が痛みにさほど関係ないのはどうしてなのか、少なくとも説得力のある理由をここに3つ挙げます。 1. 時間の経過とともに組織はストレスに適応する 悪い姿勢が痛みを発生させるという仮説は、特定の部位に過剰な機械的負荷がかかるという考えを基にしています。これが微小損傷を起こし、時間の経過とともに累積されます。これにはうなずけますが、組織には負荷への適応力があることが考慮されていません。 ウェイトリフトで負荷のかかる筋が強くなるのと同様に、特定の姿勢によって、関節や靭帯、腱も局部的なストレスに耐えられるように適応するのです。[1] 2. 組織の損傷と痛みはイコールではない 姿勢が痛みとは関係のない二つ目の理由として、悪い姿勢が組織の損傷を生むことがあっても、組織の損傷と痛みは同等ではないということがあります。 痛みを伴わない多種多様な組織損傷の罹患の研究は数多くあります。これらは、背中や肩、膝に痛みを伴わない人のかなりの割合 (20-50%) が、椎間板の膨隆や回旋腱板の断裂、半月板損傷などを患っていることを一貫して示しています。[2] つまり、30歳以上の人のMRIを撮影すると、それがどの部位でも、たとえ痛みのない部位であったとしても、著しい損傷を見つける可能性は非常に高いのです。 なぜでしょう? 痛みは複雑で、組織の損傷は痛みを起こすひとつの原因にすぎません。[3] よって、姿勢が何らかの形で長期的な組織損傷を起こしたとしても、必ずしもそれが痛みという結果になるとは限らないのです。 3. 人それぞれ “悪い”と思われる姿勢が痛みとは関係がないという三つ目の理由は、身体の構造が人それぞれ異なるからです。実際に人の骨格を見てみると、骨の形や脊柱の弯曲にかなりの差異があることが分かるでしょう。非対称性や不規則性は当たり前であり、例外ではありません。 ある程度、骨のサイズや形が、立ったり座ったり動いたりするために最も効率の良い快適な姿勢を決定づけるのです。ですから、ある人にとっては“機能不全な”アライメントでも、別の人にとっては最適なのかもしれません。 このような個体差があるわけですから、自分の姿勢を他の理想的なモデルと比較し矯正しようとすることは、本質的に問題があります。 姿勢を心配する代わりに何をするべきか 上記のエビデンスでは、痛みの治療や予防の方法として、ある理想的なモデルに合わせて静的姿勢の誤差を見つけ出そうとすることは、時間の無駄かもしれないことを示唆しています。 では、姿勢がそれほど重要ではないとすると、休息時や運動時の身体のアライメントについて全く気にする必要はないということを意味しているのでしょうか? 答えは“ノー”だと私は思うのです。 1. 大きな力が加わる時には正しい姿勢がとれているか確認 姿勢についての研究が、生体力学とフォームの良さはどうでも良いということを示していると誤解しないでください。激しい運動は、単に座ることや立つこととは異なり、適切なアライメントで行うことに、さらに注意を払う必要があるでしょう。 動かず座っているときや立っている間、関節にかかる機械的負荷はとても小さいものです。しかし、身体は長年の間、一日何千回もこのような習慣的な負荷を受け、そしてそれに対応するためにうまく順応します。 一方、高重量のデッドリフトなど負荷の大きいエクササイズでは、機械的負荷が非常に大きく、これら特定の負荷に身体が順応する機会もあまり多くなかったことでしょう。 高重量のデッドリフトでは姿勢やアライメントが重要になります。ジャンプから着地する時や、スプリントやウェイトリフトなど大きな機械的負荷が加わるような運動をする時にも重要です。これらの場合、身体にかかる負荷を分散させ、ケガのリスクを減らし、パフォーマンスを向上させるためにも、生体力学と脊柱のアライメントが理想的であるかを意識的に努力し、または確実にするために指導することが賢明です。 2. 動きを改善しよう 立位や座位が外見上どうであるかよりも、どのように動くかがより重要です。職場で胸が凹み丸くなって座っていても心配いりません。しかし、オーバーヘッドリーチやローテーション、オーバーヘッドプレスなどの機能的な動きができるように、胸部の完全な伸展可動域を保つことを忘れないようにしてください。 3. 姿勢のバリエーションを広げよう 同じ姿勢で何時間も座ったり、何時間も立ったりしなくてはならない人は多いものです。もし、これがストレスや痛みを生むようであれば、姿勢を少しだけ変化さるようにした方が、常に“完璧”な姿勢をとるよりも快適であり得策です。姿勢を変化させることによって、体重を支持するストレスをいつも同じ部位に集中させるのではなく、いろいろな部位に分散させます。頻繁に休憩をとり、常に動いているようにしましょう。ある特定の姿勢が腰痛を悪化させる場合、他の選択肢を試してみましょう。 良い姿勢なんて忘れよう:良い動きのことを考えよう まとめると、静的な姿勢を理想に沿うように変えようと心配しすぎないことが肝心です。悪い姿勢が腰痛の誘因ではなさそうです。その代わりに、快適な姿勢をとり、常に動き、身体の機能を向上するように努力し、負荷の高いエクササイズを行う時はアライメントやフォームを正しくするようにしましょう。 参照文献 1. http://en.wikipedia.org/wiki/D...'_law 2. http://www.bettermovement.org/... 3. Melzack, Katz (2012) Pain. Wiley Interdisciplinary Reviews: Cognitive Science Volume 4, Issue 1, pages 1–15, January/February 2013. http://onlinelibrary.wiley.com...

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脊柱の姿勢が腰痛の要因となるのか?

ベン・コーマックが、脊柱の姿勢が腰痛の要因となり得るのか否かについて、2つのリサーチに基づいて解説をしています。これらのリサーチのエビデンスは、今までの思い込みを覆すものになるかもしれません。 Spinal curves and health: a systematic critical review of the epidemiological literature dealing with associations between sagittal spinal curves and health Christensen et al J Manipulative Physiol Ther 2008 Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain Nourbakhsh et al J Orthop Sports Phys Ther 2002 Sep

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骨盤前傾はじわじわとあなたを葬っているのか?

ほら、かなり引き込まれるセンセーショナルな見出しでしょう!引っかかりましたね! 私は、骨盤前傾(APT)と骨盤前傾が引き起こす可能性がある問題について、最近の議論に基づき、手短かにブログを書こうと思いました。これは決して独創的な投稿ではありませんが、すたることの無いテーマです。実際に、ただの理論ではなく、このテーマに関する研究に少し焦点を当てた投稿は、山のようにある、ストーリーとしか呼べないようなものと比較すると、大海の中の一滴にしか過ぎません。これらのストーリーは、“XがYを引っ張るとZ(一般的に痛み)を引き起こす”という生体力学的な理論が多い傾向にありますが、それを裏付ける真の科学的根拠の数があまりにも少ないのです。 その理論は、このような感じかもしれません:長時間の座位のせいで、股関節屈曲筋が緊張するため、腰椎前彎を増大させる骨盤前傾を引き起こし、腰痛を引き起こします。 控えめな骨盤前傾は、腰痛、鼠径部痛、股関節痛等、実に骨盤に近いどこかに少しでも関連のある、あらゆる痛みの原因として非難されます。身体の中間点であることが、非常に多くの事の原因になっているのかもしれません。 ‘ドクター・グーグル’(ネットで検索)やフェイスブック(もしくは同様のソーシャルメディア)をチェックしてみてください。非常に多くのくだらないものが次々に出てきます。これは、グーグルで“骨盤前傾”と入力した検索結果の1ページ目です。 最初に、骨盤傾斜に関して、何が正常で、何が正常でないか、少しでも多くの知識を持つことがここでは重要です。数多くの罪を着せられる可哀想な骨盤前傾は、これら全ての問題に関する利用可能な研究において、確かに、前彎増大というような関連因子や、関連性があり、無症状の集団よりも痛みがある集団の方でより高頻度に見られます。 この研究、”Assessment of the degree of pelvic tilt within a normal asymptomatic population ( 正常で無症状な集団における骨盤の傾斜角度の評価 )”では、これを正確に調査したかったのです。彼らは、無症状で痛みの無い人たちの骨盤傾斜に着目しました。 彼らは、私達のほとんどが骨盤前傾を有していて、実に85%もの男性が骨盤前傾を有していることを発見しました。つまり、ジムで男性を無作為に10人選んだら、8.5人は骨盤前傾であるということを意味しています。女性では、この数字は75%まで下がりますが、それでも大多数です。もし骨盤傾斜がこれら全ての痛みに対して非難されるのであれば、私達のほぼ全員が骨盤内や周辺の痛みで、苦しみ悶えながら歩いているのは間違いないのではないでしょうか?たった9%の男性が、伝説的な骨盤“ニュートラル”位を有しているのです!よって、再びジムで無作為に10人を選んだら、1人の男性の90%(一人未満)だけしか骨盤のニュートラル位を有していないことになります。女性では、この数字は少し大きくなり、18%まで上がります。 これは主に治療家やトレーナーによって、上記の研究よりも初歩的な方法で評価され、しばしば骨指標、すなわち上前腸骨棘( ASIS ) や上後腸骨棘(PSIS )、そしてお互いの関係性を確認することによって評価されています。 この研究、“Variation in Pelvic Morphology May Prevent the Identification of Anterior Pelvic Tilt ( 骨盤の形態学における多様性は、骨盤前傾の識別を妨げる可能性がある )”は、骨の前後・左右対称性において、かなり大きな多様性を発見しました。骨盤は全て具合悪いように思えるかもしれませんが、実際には、それはただ各人の自然な骨の形状なのかもしれません。おそらく、第一に多様性が問題ではないこの場合では、触診は骨盤前傾を計測するのに、あまり確実な方法ではないのかもしれません。 無痛であるためには、完全に対称な骨格と姿勢が必要であるというのは、私達の思い込みであり、私達の間に見られる姿勢ではなく、完全に対象な骨格と姿勢が生まれながらの正常なデフォルトであるというのは、間違っているのかもしれません。 姿勢に関して言えば、ニュートラル、あるいは整ったアライメントという考えは、身体をニュートラルに回復させる、あるいはバランスを保つことを目的とした、100以上の継続的能力開発(CPD)コースの数々を生み出しています。全てのエビデンスは、私達のほとんどがニュートラルではないという事実を示し、痛みに関しては、恐らく関係ないでしょう! 先程、お話したように、骨盤前傾は、腰椎前彎の増大によって腰痛を引き起こすとされています。この研究、 “Lumbar lordosis: study of patients with and without low back pain ( 腰椎前彎:腰痛を持つ患者と腰痛を持たない患者における研究 )”では、腰痛がある腰椎前彎の女性と腰痛の無い腰椎前彎の女性との間に、違いは発見されていません! この研究 “Low back pain and lumbar angles in Turkish coal miners (トルコ人炭鉱作業員における腰痛と腰椎の角度 ) ”も同じことを示していて、腰椎の角度と腰痛には相関関係は無いことを発見しています。 よって、私達のほとんどが骨盤前傾を有していますが、経験する腰痛とは相関関係が無いようです。 座位は、骨盤前傾の原因として非難される主なものの一つです。この研究、“Use of intermittent stretch in the prevention of serial sarcomere loss in immobilised muscle (不動の筋に置ける連続的な筋節喪失の予防における断続的なストレッチの活用 )” では、1日30分の、単に動くだけで得られるようなストレッチでさえ、関節可動域を維持するのに十分であることが発見されています。怠け者のろくでなしでさえ、ベッドから起き上がり、仕事へ行き、コーヒーを作り、夕食を調理したりします。おそらく、これだけでも合計すると、必要とされている30分になるでしょう。 この研究、“Effect of Changes in Pelvic Tilt on Range of Motion to Impingement and Radiographic Parameters of Acetabular Morphologic Characteristics (骨盤傾斜の変化がインピンジメントのある関節可動域に与える影響と寛骨臼の形態学的特徴のX線写真パラメーター )”では、動的な骨盤傾斜と大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の関係性に着目しました。彼らは、骨盤前傾の増大は、大腿骨寛骨臼インピンジメントの早期発生をもたらすかもしれないと提唱しました。 最初に、これは症状のある集団を用いた後ろ向き研究でした。前向き研究によって、理論に基づいた結論の信憑性が高まるかもしれません。 では、骨盤前傾と関連しているかもしれない大腿骨寛骨臼インピンジメントが、どのように股関節痛と関連しているのでしょうか?この研究、“Radiographic Prevalence of Femoroacetabular Impingement in Collegiate Football Players (大学フットボール選手における大腿骨寛骨臼インピンジメントのX線写真にみる有病率 ) ”では、なんと95%の無症状の大学フットボール選手が大腿骨寛骨臼インピンジメントを有していました。もしあなたがスポーツをし、骨盤の動的な運動を沢山経験すれば、何らかの形の大腿骨寛骨臼インピンジメントを有しているかもしれず、そして、それは痛みを伴わない可能性が高いのです。 私達はまた、位置と運動はそれぞれ別物であることに気付かなければなりません。私は、男性のわずか9%しか有していない、伝説的骨盤ニュートラルを有しているかもしれませんが、私の骨盤は動的に大きく傾き、それによって、私の股関節の骨の本質に影響を与えています。同様に、その姿勢の位置からあまり動くことのない、ほぼ静的な骨盤前傾を有しているかもしれません。よって、静的な測定は、動的な測定とはあまり関連性がなく、何らかの形式での動的測定のメソッド無しで得られる結果は、単に推測でしかないのです。私達は皆、推測や思い込みは全ての大失敗の元であることを知っています。 通常の臨床環境、あるいはジムの環境において、大腿骨寛骨臼インピンジメントの早期発生を予測する研究で使用された、時間のかかるスキャン検査とモデリングの全てが無い状態で、どのようにこの動的な骨盤傾斜を測定しますか? 私見ですが、私達の姿勢は、それが動かない時、より問題のある、関連性のあるものになるのではないでしょうか。私達は、姿勢自体が問題であると示す前に、静的な姿勢からの推測ではなく、その特定の姿勢が、実際に動き変化することができるかどうかを評価する必要があります。 最後に、多くの科学的証拠は存在しませんが(ちなみに、複数のエピソードは証拠ではありません、骨盤前傾は実際に“矯正”されることができるという話もあります。 あなた自身の、あるいはあなたのクライアント/患者の骨盤前傾にストレスを感じるのをやめて、より生産的に時間を使いましょう。

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痛みにおける姿勢の評価・非難する理由の背景にある科学はデタラメである

もしソーシャルメディアで姿勢、あるいは痛みの問題について言及する全ての人にお金が支払われて、それを私が受け取っていたら…、私は今頃、裕福になっているでしょう。 痛みの無い人達と腰痛、肩痛、頸部痛を患っている人達の姿勢を比較する数多くの研究があり、実際の差異は発見されていないにも関わらず、この情報は通常無視され、腰痛、肩痛、頸部痛について口にするとき、姿勢は文字通り人々の思考に深く染み込んでいます。 決して科学的知識に良いお話の邪魔をさせてはいけません!特にインターネット上では尚更です! 実際、私は以前に何度か姿勢に関して記述しています:) とはいえ、科学的知識で始めましょう。2016年に発表されたこの研究論文*ここをクリックしてください*では、腰痛患者と腰痛を持たない人達の間の腰椎前彎(脊柱彎曲)において、有意差は発見されませんでした。 これは非常に重要です。いかにして、痛みの無い人達に見られる何かを痛みの原因として非難することができるのでしょうか?    十分に理解しましょう…。 私達は何を測定しているのか? このブログで私達は、どのように姿勢を評価するのか、そして、それは科学的に有効なのかどうかということに関連しているいくつかの疑問を調査します。まず始めるにあたって、優れた測定方法を持っていなければ、問題に関する何かを非難するのは非常に困難ですから。 実際の科学的根拠に関する最初の情報は(姿勢に関する議論でしばしば欠けていますが)、立位での腰椎彎曲の測定に着目すること(しばしば脊椎彎曲は腰痛の原因として非難される)。この評価は、世界中の治療室やジムにおいて行われているものです。 腰椎彎曲は腰痛における大きな要因ではないようではありますが(上記の科学参照)、腰椎彎曲の増大(時折減少)は腰痛を増悪させるという考えは、骨盤の傾きが腰椎彎曲の大きさに影響を与えているという考えとしばしば組み合わさっています。 かなり昔、1990年に、この考えはHeinoおよびその他によって研究され*ここをクリックしてください*、骨盤傾斜角と腰椎彎曲は単純に相関関係が無いということを発見しています!骨盤のポジションに着目することが、測定がより困難である腰椎で何が起きているのかに関して伝えてくれることはほとんどありません。これよりも以前の1987年に発表された非常に類似した研究*ここをクリックしてください*もまた、同様の結果を輩出しましたが、このデタラメは、今日いまだに教えられています。 ともかく、立位の測定に関する研究論文*ここをクリックしてください*に戻りましょう。著者は、400名(無痛者332名、腰痛罹患者83名)の立位姿勢における変動性に関して調査し、立位の際は毎回やや異なる方法で立っていることを発見しました。 著者は彼等の言葉で“立位は非常に個性的で、再現性に乏しい”と述べています。 では、これがなぜ重要なのでしょうか? 簡単に言えば、あなたが姿勢の評価をする際、実際にどの姿勢を測定しているのかということです。ある姿勢は大きな彎曲を、またある姿勢は小さな彎曲を示すかもしれません。 この情報を踏まえて、姿勢評価の解釈の仕方に関していくつかの疑問があります。 これらの姿勢のうちのどれが問題に関連しているのか? 何回測定して、何回平均値を求めるのか? 彎曲が過剰、あるいは彎曲が不十分かどうかを決定するために、何に対して比較するのか? 著者は、立位姿勢における一貫性の欠如は、実際に“間違った診断と場合によっては不必要な治療”に通じるかもしれないという点を強調しています。 もしあなたが問題ではないことを重要視すれば、それが効果を表していない、あるいは一時的にしか効果を表していないという事実(潜在的になぜかなりひどい腰痛が持続するのか)がわからなくなるかもしれない、何か他のことに注目しなくなるでしょう。 人々が日常生活で用いているものもまた、クリニック、あるいはジムで測定されるものとは異なるかもしれません。クリニックやジムで測定するものは、‘スナップ写真’として表現されるかもしれません。そして、この研究*ここをクリックしてください*は、この‘スナップ写真’を研究の被験者によって日常的に実際に用いられているものと比較しました。 著者は立位時の平均値が姿勢評価時の腰椎前彎は最大で33.3度であったのに対し、24時間通しての平均値はたったの8度であることを発見しました!。とても大きな差異です! ‘スナップ写真’的な姿勢評価は、どの程度の前弯が実際に用いられているのかに関して、私達に十分に情報を与えてくれないでしょう。そして、実在しない問題の及ぶ範囲を多く見積もり過ぎてしまうかもしれません。 また、これらは放射線測定であり、臨床における‘最高基準’であることを忘れてはいけません。しばしば腰椎前彎は、骨盤傾斜を示している骨盤上の目印の関連性に着目するといった、より初歩的な方法で測定されますが、これと腰椎彎曲とのはっきりとした関連性は無いことを私達はすでに議論しています!これ自体、2008年にPreeceの研究*ここをクリックしてください*によって、問題として立証され、骨盤の形態学もまた変動的であり、誤った測定に通じるとされています。 “これらの結果は、骨盤の形態学におけるバリエーションは、骨盤傾斜と左右非対称な寛骨の回旋の測定に有意に影響を及ぼすかもしれないということを示唆している” ここにASIS(上前腸骨棘)−PSIS(上後腸骨棘)の左右差における関連性(骨盤傾斜を測定するために使用された)の配分があります。右側に偏っていることが見て取れ、骨レベルでより前傾していることを意味しています。 つまり、私達がそれほど問題ではないことを測定することが本当に苦手であるということかもしれません。なんてことでしょう! あなたは先入観にとらわれている? 姿勢を測定する人達にとってもう一つの重要な疑問は…、痛みが存在することを知っている際に、更に姿勢の‘異常な点’を見ようとする傾向があるのかということです。 この研究論文*ここをクリックしてください*は、そのように示唆するでしょう。ここで著者は、しばしば肩痛の原因として提案される、肩甲骨の運動障害、あるいは肩甲骨の異常な位置と動作に着目しています。 彼等は、肩に痛みを持つ人67名と無痛の人68名を比較し、二つのグループの間において、肩の位置、あるいは動作には差異が無かったことを最初に発見しました。 興味深いことに、評価者が有痛者を評価していることをわかっていた際、彼等は  姿勢、あるいは動作の問題に対して高い罹患率を報告していました。有痛者における‘異常な点’が無痛者と同等の場合であっても、有痛の場合ににおいては、非難すべき‘異常な点’を発見することに対して先入観があることを示しています。 著者はまた、肩甲骨の運動障害は実際のところ、個体間における正常な変動性を表していると示唆しています!恐らく、もし彼等が何度も肩甲骨の運動障害を評価すれば、異なった測定値を出すのではないでしょうか?まず始めに、逸脱に対する基準として用いられる有意に定義された‘良い姿勢’など無い、ということを覚えておくことが重要です。 健常者はどのように座るのか? もう一つの疑問は、腰痛を患っていない人達が実際にどのように振る舞うのかということです。彼等は日常的に素晴らしい姿勢をしているに違いないということですよね?しかし、実際はそんなことはありません。 この研究論文*ここをクリックしてください*は、前かがみの姿勢で座る無症状の50名の状態を示しています。10分間の座位で、立位姿勢と比較して、脊椎角度は腰椎で24度屈曲、胸腰部で12度を示しましたが、この前かがみの姿勢での座位は、彼らに問題を起こす原因になっているようには見えませんでした。 下記のグラフからも見て取れるように、脊椎彎曲の変化は、痛みにはそれほど関連していないように見えます。 もし姿勢と痛みが相関関係になければ、痛みは何と相関関係があるか? この研究論文*ここをクリックしてください*は、頸椎のアライメントの変化が実際に年齢と相関関係にあることを示しています。この研究は被験者を年齢に応じて4つのグループに分けました。そして、4つのグループ全てにおいて、年齢の増加に伴い、頸部の角度の値が全て相関関係にあるということを発見しました。 ここでの覚えておくべき重要なポイントは、120名の被験者全員が痛みを患っていないということです。実際に、ここでの除外基準はかなり厳格で、著者は実際に、現在痛みを抱えている、あるいは痛みの既往がある64名(標本の3分の1にあたる)を除外しました。 簡潔に言えば、私達は年を重ねるにつれ、姿勢は‘より悪く’なり、あるいは、恐らくもっと正確にいれば、姿勢は(角度を)増大させる…。しかし、これは重大なしかしですが、これが更なる痛みの原因のようではありません。 要約すると、あなたが読んだり、バー、ジム、治療室で言われたりするような、‘悪い’ 姿勢=痛みというほど単純なものではないようです。 覚えておいてほしいこと 痛みを抱えている人達と痛みの無い人達とでは、姿勢に差異は無い。 姿勢は動作と同様に変動性を示している。 これは、行なっている評価があなたが思っていることを示さないかもしれないということを意味している。 あなたの評価は、姿勢の‘問題’を見つけ出そうとする先入観を持っているかもしれない。 1日を通して用いられている姿勢は、恐らく評価される姿勢とは異なるであろう。 私達は歳を重ねるごとに姿勢は変化し、これは痛みの無い人にも起こることである。

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腹横筋、それが問題ですか?なぜ私達は、腹横筋にこだわるのでしょう?(パート1/2)

私達が、理学療法士や他の医療従事者を対象にコーキネティックのコースを開催するときはいつでも、腹横筋と腰痛という同じテーマが浮上してきます。このことが、私にこのテーマについてのブログを書かせる動機づけになりました。 多くの医療従事者が、効果的な腰痛戦略として教えられたものを疑問に思い、葛藤していると感じています。単純にコアや腹横筋に働きかけることが、簡単で効果的な戦略なのであれば、慢性的な腰痛など存在しないでしょう。多くの腰痛は、治療介入なしに自発的に消えていくのが真実です。腰痛は、身体が痛みの起こらない他の動作戦略を発見すると共に、断続的に戻ってきたり、他の部位へ移動したりします。これは、その状況をなんとかしようとして身体が代償したり、その疼痛閾値を修正したりする能力であろうというのが、私の謙虚な意見です。 このブログの焦点は、研究や議論を席巻する傾向にあるタイミングの問題ではなく、腹横筋が何をして、何をしないかにあります。私は、列車がいつ駅に着くかよりも、着いた後にどうするのかに気をもんでいるのです!Hodges (1998)の研究では、症状のある人と症状のない人での腹横筋収縮の違いは、約20ミリ秒、もしくは約1/50秒でした。ごく僅かな違いです。このようなごく僅かな遅延において、私達はこのタイミングの問題を意識的な収縮で修正するすることができるのでしょうか、それともこれは意識的な制御の域を超えているのでしょうか? もう一つの疑問は、私達はそれぞれ単一の筋肉を、意識的に動かすことができるのかということです。身体において、筋収縮が単独で起こることはありません。収縮は、関節の動作と安定に関与している筋肉の領域において、運動単位を支配している脳によって発生します。この神経支配は、関節の角度、スピード、努力のレベルの変化につれて変わります。これは、身体の筋活動を全体的に眺める際のとても複雑な見解を、極めて単純にしたものかもしれません。 機能的周期運動の間、意識的な活性化が起こることもありません。私達の運動パターンは、意識の域を超えて設定、もしくは発達しています。これは、私達が生活の中での他の問題に気をもんだり、夕食で何を食べるかについて悩むことを可能にしています。身体や環境に作用している力に起因している私達の骨の動きは、骨の捻転や移動を制御するために、筋肉の反応を引き起こします。これらの反応は、通常、求心性収縮的に筋肉を短縮する前に、骨の動作を制御するため、筋肉を遠心性収縮的に伸ばします。筋力を作り出すために、固有感覚系を介して潜在意識的な引き金を提供しているのます。そして、これは意識的な活動よりも、とても効率的なシステムなのです。この過程は、全身の全ての筋肉で発生し、最も重要な心臓も同様で、潜在意識的に発生します。 そして、このことが私に、私のよき指導者であるデビット・ティベリオ博士が常に筋肉について、“もし筋肉のスイッチが入っていないなら、何がスイッチを切ったのか?”と尋ねていた問いかけを思い起こさせます。 この質問に答えるためには、私達は筋肉の付着部と、筋肉が機能的動作において何をするのかをより理解しなければなりません。 腹横筋は、肋骨と骨盤に付着しています。これは、単純に腹横筋は、身体の主要な発動力である両腕、両脚の動作の影響を受けていることを意味しています。また、腹横筋の線維は、横行配列があり、収縮をすることで前部と後部の付着部同士をお互いに近づけ、体幹を回旋させます。実際、腹横筋は2つの部分に分けられます。Cresswell AGおよびその他 (1999)は、体幹回旋運動時の“左右の腹横筋間の活動における相互パターン”を記録しました。片側の遠心性収縮的伸長と反対側の求心性収縮的短縮は、首尾一貫しています。では、なぜ私達は腹横筋を回旋筋として見ずに、等尺性であり続ける傾向のある筋肉として見るのでしょうか?Hodges (1998)の素晴らしい研究では、腹横筋を評価するために、参加者は異なる腕の動作を行うことを要求されました。最も腹横筋の反応を引き起こした動作は、肩の外転でした。この外転の力は脊柱を同側に回旋させ、この脊柱の回旋への反応として、固有感覚反応と腹横筋の活動を引き起こします。これは、腹横筋の回旋する性質を示しています。このケースにおいては、研究自体は良いものであったにも関わらず、エクササイズ戦略を立てる際の、私達の解釈が間違っていたのかもしれません。

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腹横筋、それが問題ですか?なぜ私達は、腹横筋にこだわるのでしょう?(パート2/2)

腹横筋を活性化する(遠心性収縮)ためには、胸郭と骨盤の動作を必要とします。胸郭と骨盤は、両腕・両脚の動作の影響を受けています。運動連鎖の上もしくは、下のものは、潜在意識的な腹横筋の活動と機能的状況下での動作において、胸郭と骨盤での適切な動作を引き起こすために動いていません。脊柱から遠く離れた動作であっても、中枢神経においてまだ固有受容的反応を引き起こすでしょう。私達は、足が股関節の動作に多大な影響を与えていることを知っています。よって、足は腰椎と腹横筋においても反応を引き起こすに違いありません。腰痛をみる際、足を十分にみていますか?これはこれで、充分にひとつの記事になってしまいますよね! 適切な関節運動が生じなければ、この腹横筋への固有受容的信号も発生しないでしょうし、腹横筋の活動を減少させるかもしれません。私達はまた、何を腹横筋の活性化と捉えるのかを自らに問いただす必要があります。これは遠心性収縮、もしくは求心性収縮なのでしょうか?これは筋電図が教えてくれるものではありません。常に仮説においては、筋肉は短縮していて、このことは腹横筋“発火”のためのエクササイズ戦略に、影響を与えています。 もし腹横筋の役割が、個々に脊柱を安定させることならば、腹横筋は胸郭と骨盤が分離した際にも、求心性収縮もしくは、等尺性収縮したままにする十分な力を保っているのでしょうか?これに答えるためには、私達は腹横筋を機能的状況に置かなければなりません。 私達が歩行のような誰にも共通する機能をみて、発生しているモーメントに関しての生体力学の研究を読んでいれば、骨盤が前方に落ち前傾になることを知っています。前方を見続けられるように、胸郭はさほど屈曲しません。これは腰部脊椎に伸展モーメントを発生させます。骨盤が前額面で上方に回旋し、脊椎は同側に側屈して腰椎に側屈モーメントを発生させます。骨盤回旋が片側で起こると、反対側では体幹の回旋が起こります。これが、再び腰椎の周辺で回旋モーメントを発生させるでしょう。腹横筋の活性化が良好であれば、これらの力モーメントを得るのでしょうか、もしくは腹横筋が運動を固定するために、関節運動は起こらないのでしょうか?では、どのようにこれが運動連鎖の上部と下部の運動に影響を与えるのでしょうか?腹横筋は、骨の運動に抵抗するための力生産能力を有しているのでしょうか?身体は、高い力モーメントを伴う状況下での脊椎安定化のような大きな仕事に直面する際、一つの筋肉だけを利用するという選択をするのでしょうか? 堅いニュートラルな脊椎という概念自体もまた少し奇妙です。進化は、本当に少ない分節を持つ椎骨の構造を創り出すでしょうか?関節運動のためではなく、固定されることを意図した骨。というのではなく、私達は、腰椎の大部分は屈曲・伸展するのをみます。ニュートラルは、私達が通り過ぎる姿勢かもしれませんが、明らかに私達が留まっている姿勢ではないのです。ジムにおいては、私達はなんとか不自然な姿勢でいるように試みることはできるかもしれませんが、テニスコートに出たり、道を歩いたりするだけでも、腰椎で発生している関節運動は、ニュートラルとは程遠いのです。 また、長時間にわたる等尺性収縮、もしくは求心性収縮の残存における代謝的関連もみなければなりません。従来のモデルに従えば、いかなる動作においても、腹横筋が脊椎を固定するために求心性収縮をし、私達が長時間動けば動くほど、腹横筋は長時間収縮し続けることになります。筋内圧や血流が包含するのは何なのでしょうか?どのように不可欠な酸素が到達し、乳酸の除去が発生するのでしょうか?遠心性から求心性への動作は、筋肉が必要とする血液を筋肉系に供給するパンピング機構をもたらします。求心性動作以前の遠心性動作の機能的な過程は、潜在意識的な情報とエネルギーのみでなく、身体が代謝的に生存する手助けをするポンプを提供します。 腹横筋の力は、実質的に構造自体、その領域の生体構造にあるのかもしれません。腰椎の主な運動は、矢状面で発生します。腹横筋の線維配向は、横断面です。これは、矢状面力が作用する際、線維の分離は、制限されることを意味します。これにより、受動的で潜在意識的な反応を介して発生する自然な剛性と安定性をもたらします。これは、身体が稼働するための推進力であるエネルギーの観点からすると、極めて効率的です。 これがコラーゲン含有量が高く、短い線維長の遅筋線維優位と組合わさることで、受動的な剛性が発生します。他の筋肉や筋膜と孤立した状態で起こることはありませんが、これに適合可能な筋紡錘獲得を介して、神経学的に制御されたフィードフォワード要素を加えると、私達は、腰部脊椎に力強く潜在意識的な効果を得ることができます。 いつもの通り、またもや大量の私見と共に、回答の数を凌ぐ程の疑問を提供してしまったのではないかと思います。臨床状況から離れ、動作と合力に従うと、腹横筋は異なる役割を担っています。これらの環境下では、全ての筋肉は、静的な状況において、私達が認知している役割とは異なる役割をするのかもしれません。

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あなたの腰は元凶でなく、多くの場合において犠牲となる理由

ある人が腰が悪いと伝えたとしても、多くの場合その人は間違っています。腰に痛みがあるかもしれませんが、しかしそれはいつも彼らが「悪い」腰をもっているというわけではありません。腰痛、特に腰椎領域は、多くの場合身体の他の部位に制限があることに起因しているのです。腰部は元凶ではなく、腰部は犠牲者なのです。 グレイ・クックの言葉を借りると、「腰痛は症状であり、診断名ではないのです」。 さらにグレイが言うには: 腰痛は症状であって、それは硬い股関節や悪いリフティング動作、骨癌といったあらゆることから起こりえます。多くの場合、腰痛は、身体がどこかの部位の機能不全を代償していることに起因しているのです。 もしあなたが脊柱のリハビリをし、安定させ、またトレーニングしようとしても、脊柱が代償しなければならない原因 −股関節伸展の欠如、片側の股関節内旋の欠如、片側の脚のバランス能力の悪さ、胸椎の可動性の悪さ− に目を向けなければ、あなたは脊柱を守るための良い仕事をしていないことになります。あなたは、ネガティブな点を取り除いたほうが良くなる状況に、プラスなことを加えようとしているのです。 ゴルフ、テニスや野球などの回旋系のスポーツを例に挙げます。スイングするためには、身体が大きな回旋を行う必要があります。この回旋は胸椎と股関節を使って達成されるように意図されていますが、これらの部位が動かないとなると、アスリートは腰椎の部分でごまかして回旋を行おうとします。 これは腰椎の役割ではありません。 シャーリー・サーマンによる「運動機能障害症候群の診断と治療」という本の中で、著者である彼女は、”腰部の回旋の全体的な可動域は…およそ13度である。Tの10番からLの5番までの各部位間の回旋は2度ずつとなっている。一番大きな回旋の可動域はLの5番とSの1番の間で5度。”と述べています。 したがって、もし、腰部に頼って回旋を行っているのであれば、あなたはけがを誘発しようとしているのです。 腰部をけがにさらすような代償動作は、ジムの中でもよくあります。もしあなたが、デッドリフトやケトルベルスイングを行うときに脊柱の安定を維持できるだけの十分なヒンジ動作がなければ、身体は腰部を伸展へと強いり、よりけがをしやすい状態にしてしまいます。 マイク・ボイルは次のように言っています: 「最も簡単な言葉でいうと、身体は最良なことではなく、簡単なことを行うのです。」 これは、一般的にジョイント・バイ・ジョイントアプローチと呼ばれている、局部的な相互依存の概念を理解することが重要である例です。 腰痛によって不便さを感じたり何らかの機能障害がおこったりした時、誰かが責任をもって評価しリハビリを行うことがなくても、その状況から非常に簡単に回復できるでしょう。 しかし、あなたが何をするかといえば:もうゴルフをしなくなるでしょう。ランニングをすることを諦めるでしょう。この先ずっとジムで行わないリフティング種目があるでしょう。より快適にしてくれるマットレスを常に探しているでしょう。 多くの場合、より楽なるために、あなたはただ生活を切り詰め、制限をかけますが、より機能的であることには程遠いものです。痛みは無くなりますが、引き起こさないようにしているためであり、リハビリをしたからではありません。 もし、あなたの行動が運動パターンに影響を与えていないならば、あなたの行動は何をしているのでしょう? 腰痛について最も責任のある行動とは、治療に走ることではなく、脊柱の安定性を求める前に要因を完璧に、客観的にそして一貫的に考え出そうとすることです。 運動全体の観察は、医学的な診断には関係ないが通常の機能の回復に関連している制限を明らかにすることで、医療的な焦点を向け直し、広げることができるでしょう。私たちは「発信源vs原因」というアイディアを検討することができます。従来の整形外科的な特殊な検査は「痛みの発信源」を明らかにします。しかし、「原因」は多くの場合、他の一つまたは複数の部位の可動性や運動制御の不足であり、医学的な検査のみに基づいて推測するのは難しいのです。SFMAの診断は「原因」を示し、一方で医学的な診断は「痛みの発信源」のみを示すのです。 SFMAは、機能不全を痛みの主な根源から切り離して治療しなければならないという、局部的な相互依存と呼ばれる概念に基づいています。痛みを伴うある身体の部位の機能不全と、身体の他の部位の機能不全とを関連づけている数多くの研究があります。これらの最適な例として、腰部痛に関連した股関節の障害や、首や肩の痛みに関連した胸椎の障害があります。痛みの発信源から離れた部位を治療し、そして身体の他の部位の機能を回復させるということはこの概念を支持しているのです。

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知識は力なり ー 腰痛を患っている人たちが知るべきこと

ここに、腰痛を患っているみなさんに知ってもらいたい情報を紹介します。初めて腰痛を経験する人、または何年にもわたって腰痛を患っているみなさんへ。 腰痛についての情報 腰痛はよくあることです。毎年最大20%ぐらいの人は、毎年何回か腰痛を経験する可能性があり、なんと私たちの80%は、生涯のうちに腰痛を何回か経験するようです。実際、腰痛を経験したことのないという方が珍しいかもしれません。 腰痛は6週間ぐらいまで長引くことがあります。これは、みなさんが予想する以上に長いかもしれません。ですから、少し長引いたからといって過度に心配する必要はありません。たった数日で治まる痛みが多い一方、長引くこともよくあるのです。 長期的に続く腰痛を患い、そのことで多くの問題を抱えている人がみなさんの周りにもいるとは思いますが、実際には通常より長く継続する腰痛を患う人は約10%から25%です。つまり、腰痛が6週間以上は続かないという望みは高いということです。 肩や足首、膝の痛みのように他の身体部位の痛みと何ら変わりはありませんが、腰痛はより以上に心配される傾向があります。 痛み自体は正常であり、怖がることではありません。痛みは、私たちを守ってくれる防御機構なのです。これなしで生きていくわけにはいかないのです! 腰部にしても他の身体部位においても、痛みは身体的状況を正確には反映してくれません。たいした損傷がないにも関わらずひどい痛みに襲われることもあります。紙で指を切ってしまったことやハチに刺されたことを考えてみてください。強烈な痛みではありますが、それほど損傷を負ってはいないのです。 診断 腰痛において診断を下すことは厄介なことが多いですが、患者はたいてい答えを求めます。助けるために必ずしも明確な答えが必要であるということではありません。 分かっていることとして: 腰痛の圧倒的多数、実に99%は重症ではありません。残りの1%は骨折や癌が考えられるにしても、頻度としては大変まれなことです。 約10%は、椎間板や神経など特定の組織に絞り込めます。 これらの統計から、その腰痛が「すべり症」や神経障害である可能性は少ないことを示しています。これらの用語をよく理解しないまま腰痛の原因として安易に口にする人が多く見受けられますが、それでは解決になりません。 セラピストは、腰痛がその10%に当てはまる問題であるかを調べるテストをします。筋力や知覚、反射テストだけではなく、神経や神経根の臨床テストもあります。 MRIのみから診断するのは大変困難です。多くのMRI所見は、痛みを持たない人にでも存在するからです。つまり、画像と伴に臨床テストが不可欠なのです。 MRIの所見は、痛みを映し出すことはできません。 ですから特定の組織や病理に絞り込むことは、9割は不可能です。狭いスペースにさまざまな無数の組織があり、それらがもし刺激を受けたり炎症を起こしたりしているならば、その影響はひとつの組織には収まらないでしょう。 炎症は良いことです。これは身体がしっかり機能しており、修復の役割を果たしていることを意味しています。 医学的見解から、この種の腰痛はいわゆる“非特異的”と呼ばれ、重大な問題はないということで、私たちはこれを前向きな診断と考えるべきです。かなり痛いですけれども。 “非特異的”という用語は、組織に対してという意味であり、あなた自身に対して非特異的であるとか、あるいは原因がないということではありません。あなたの痛みは必ず本当に存在しており特異的なのです。 非特異的な痛みに厳密な病名を付けることができなくても、たいてい運動に対し良好な反応を示すので、効果的な処方ができないとか腰痛が発症した原因についての基本的な説明ができないということではありません。 その他の要因 さまざまな多くの要因(あなたが考えたこともないような多くのこと)が、腰痛に影響することがあります。 このことは、腰痛が別の生き物であるかのようにあなたは感じるかもしれませんが、恐らく、潜在的なすべての要因についてまだ知らされていなかったか考慮していなかったからかもしれません。 これら他の要因には、異常な睡眠、仕事と家族など生活から来る多くのストレス、この痛みは決してなくなることはないだろうという感情、腰痛に対するネガティブな考えや、日常的な活動を行うことに対してのネガティブな気持ちなどがあります。 脊柱の姿勢や骨盤の傾き、小さい筋が発火していないとか、腰痛を起こしている部位の位置を戻す必要があるとか、そういうことではないかもしれません。どうしてそのようなことが言えるのでしょうか? 私たちは、このようなことを嫌というほど勉強してきました。 このような説明をあなたがセラピストから受けたとしたならば、そのセラピストはこの分野の最新の研究に精通していないのかもしれません。これまでに、たくさんの意見を提供され、そして、たいていそれは混乱を招くだけだったでしょう。ここで、この分野の科学的データを認識する必要があります。 治療 残念ながら万人の腰痛に効く魔法のような治療はありません。 ひとつの問題だけとは限らず、いくつか異なる問題が同時に起こっているかもしれません。小さな痛みでも、あなたを過敏にさせるような他の要因によって増悪するかもしれません。 セラピストは、基本的なアドバイスを提供したり、より専門的な介入が必要であれ他のセラピストを紹介したりすることができます。 数時間や数日間など短期的に役に立つさまざまな治療法はたくさんありますが、自分の回復を単に他人の手に委ねてはいけません。そうなると長い目で見ると悪化させることが分かっています。 短期間であれば増悪するような活動は避けなくてはならないかもしれませんが、いずれはその活動に必ず戻るようにしましょう。長期的には何も制限するべきではありません。違うことを言う人がいても気にしないでください。 腰部を保護する必要があると感じている人も、結果的には悪化させるかもしれません。 自分にとって何が効果的か、また何が悪化させるかを学ぶことは、腰痛に対処する上で重要です。あなたのセラピストがそれを行う手伝いをするべきです。 運動やエクササイズも効果的かもしれません。 残念ながら、腰痛に効く魔法のようなエクササイズはありません。何でも楽しめそうなものを見つけ、行ってみてください。ピラティスでも筋強化トレーニングでも、友達とスポーツをしたり、ただ単に公園へ散歩にでかけたりするだけでもいいのです。 強くなるために、あるいは体力をつけるために自分を追い込まなくてはならないと思わないでください。でも、時には疲れるほど身体を動かしてみるのもいいでしょう。身体はその動きに慣れてきます。 運動やエクササイズは、身体に自信を取り戻してくれます。身体的問題を治すよりも、このことの方が回復のカギとなるかもしれません。 長引く腰痛 持続する痛みに対して一般的に使用される用語に慢性疼痛があります。慢性という言葉には「悪化する」という意味は含まれていません。実は、3ヶ月以上続く疼痛を表す一般的な用語です。 もしあなたが自分の痛みや回復に対してとてもネガティブな考えをしたり、特定の行動を避けたりするなど活動面での振る舞い方を変えてしまうとすれば、腰痛に対する私たちの反応が、どのぐらい長引かせてしまうのかに影響するかもしれません。 持続的な腰痛を防御機構として捉えることもできます。このような場合、痛みが役割を果たし過ぎているということになります。 痛みは正常で好ましいことですが、これを赤ワインによく似田母野として捉えることもできます。少量であれば素晴らしいものですが、素晴らしいものでも飲み過ぎては二日酔いになってしまいます。 最近では持続的な痛みを、身体の状態を単に反映する反応ではなく、防御機構そのものの問題と捉えています。 痛みに関与するメカニズムを治そうとすればするほど、痛みを強く感じるのです。ジムで上腕二頭筋を鍛えているのに似ています。筋肉と同様に、防御機構も順応することができ、これまで以上に保護してくれるようになるのです。 このことは、これまで痛みを感じることがなかったようなことが、今や痛みを感じさせ、これまで正常であったことにとても過敏になり得ることを示しています。 以上のことすべては、あなたの症状の改善は見込めないと言っているのではありませんが、痛みの「スイッチを切る」というような単純なことではないということです。

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非特異性の腰痛は存在します。あなたはそれを認めたくないだけなのです。

非特異性の腰痛とは、多くの場合で臨床医が恥ずかしいと感じるかもしれない診断です。まるで彼らが失敗したかのように。まるで、確信の無いことが悪く、不十分な治療につながることを認めているかのように。そうではないのです。それは多くの場合で唯一の適切な診断であり、最も正確な診断なのです。他の容認できる診断として非特異性の肩の痛みがあります。または非特異性の膝の痛みもあります。なぜなら、非特異性の腰痛と言及する時は、侵害受容・痛みの特定の解剖学的な根源を誰もが知らないということを認めることだからです。これは実際に議論できる問題ではないのです。 あなたがパニックになる前に、患者のために特定の診断を見つけようとすることは価値があるということを私は間違いなく認めます。なぜなら、時にはそのような診断が存在し、それは多くの場合で厄難であるからです。しかし、覚えていてください、診断とは常に(身体の)構造に対してです。痛みを引き起こしている構造なのです。そしてもし、あなたが文献に対してとても実直であれば、侵害受容を取り除くために構造を特定してターゲットにすることができず、また、構造が痛みを引き起こしていることを確かに示すことができないということを理解しているでしょう。痛みは間違いなく、それよりもずっと多因子性のものです。そして、非特異性で構造的な痛みの診断は、私たちを驚くべき複雑性への可能性を開き、私たちの治療を向上させることもできるのです。 もし考えてみるなら、私たちの「特定的な」診断さえも実はそれほど特定的ではないのです。例を挙げると、膝蓋大腿痛症候群とは実際には一体何を意味するのでしょう?患者が訪れ、スクワットや走るときに膝蓋の周りが痛むとあなたに伝えます。あなたは彼らにスクワットをさせ、それが痛むことを発見し、もしかしたら膝に負荷をかけることで膝の痛みを再現し、あるいはその痛みは別の部位が引き金になっていないことを確認して、ジャーン!真剣な臨床医の顔をまとい、解剖学の教科書を取り出して「膝蓋大腿痛症候群」、おおざっぱに訳すと「脚の骨の上の膝のお皿の痛み症候群」であるという悲報を伝えるのです。ええと、患者は30分前に膝のお皿が痛いと伝えたばかりですよね。あなたは本当に組織に対して特定的な診断にたどり着いたわけではなく、患者が言ったことを言い換えただけです。侵害受容の源がいまだにわからず、そして間違いなく痛みの根源はわかっていないでしょう。 同じことが大多数の腰痛のケースにおいて言えるのです。私たちは痛みの組織的な根源を実際には理解していません。しかし、これは私たちの治療が非特異的であるということではありません。では、腕の良い臨床医がこの解剖学的に不確かなことについて行うのはどのようなことでしょう?   バイオメカニクスの分野のみの作業では、臨床医はその人を力学的に悪化させるものを見つけ出します。曲げたり、ひねったり、ジャンプしたりといった特殊なテストを用います。患者がどの動作が痛いかを伝えてきた時、その単純な説明を「あなたは動的伸展パターンを持っています」と言い換えるかもしれません。これはCFTの研究グループにおいてみられた以前の分類方法です(しかし、もうすでに使われていません−進化とはすばらしいものです)。しかし、それが本当に意味するのは、どの動作が患者の痛みを悪化させるのかということだけです。どの構造が感作されているかを確実に推論することはできませんし、関係もないのです。多くの人達が長年かけて、これを機能的な診断であると主張してきましたが、それは診断ではないのです。脊柱を屈曲したときに痛みがある人にも同じことが言えます。これは屈曲障害または屈曲不耐性と呼ばれるかもしれません。もう一度言いますが、これは診断ではありません。これから、どの構造が感作しているのか推測することができません。私たちは椎間板を考慮しなさいと学校で教わりましたが、椎間板から「痛み」を評価しようとする唯一の研究は、それは脚から脊柱への症状が集中化していることが椎間板の炎症の根源であることを示しているだけということを示唆しています(原文はこちら)。   脊柱の屈曲不耐性と呼ぶことは、腹痛と診断するものの、それがブリトーによって引き起こされた腹部のストレスであると言うようなものです。その「診断」は正確で有益ですが(ブリトーを食べる量を減らしましょう)、正確な診断ではありません−単に炎症を引き起こすものを分類する炎症性の腰痛の診断のようなものです。   しかし、もう一度言いますが、どちらにせよ、構造的な診断は必要なく、何故ならそれでは何も変わらないからです。もし、あなたが炎症や痛みの力学的な要素に注目しているセラピストであるならば何をしますか?ほとんどのセラピストは治療をしてからその動作の過敏性に合わせて取り組んでいくでしょう。一部の人はその動きを避け、一部は干渉し、一部はただその人の脱感作のために他の何かをするでしょう。 しかし、なぜこのような過敏な動作を基準にしている機能的な診断が本当の診断ではない、または全体像すら見ようとしないのかを指摘するために、ここで少し視点を変えてみましょう。もし、腰痛を「伸展によって引きおこる腰痛」と呼ぶことを診断と考えるのであれば、より幅広い規制の中で治療するときあなたは何をしますか?つまり、あなたが生物心理社会的なモデルの範疇で治療するなかで、痛みに影響する動作や、力学的な負荷以外の他の分野に注目するということです。 あなたは、痛みの感情や認知的な原動力に注目するセラピストであるかもしれません。私たちは、不安や鬱が痛みと関連していることを理解しています。確立された手段を用いることで、あなたの患者の心配事や鬱の程度が上昇していることが、一時的に痛みの発現と悪化の両方に関連していることに気づくかもしれません。そこで、あなたはこの患者を不安不耐性による腰痛であると診断しますか?これらの変数に対して取り組む治療プログラムを出し、そして患者は回復します。ははあ、あなたは正しい診断をしました。それとも違うのでしょうか? そして、もしあなたが本当の生物心理社会学者になろうとするのであれば何が起きるのでしょうか。痛みのすべての原動力、媒介、モジュレーター、誘因、交絡要因、素因や(もうおわかりですね)を探すのです。同じ患者を評価し、痛みに関連した多くの要因を見つけます。 患者は: 脊柱の伸展に過敏になっています 痛みの発現は繰り返しの伸展に関係しています 不安が大きく、鬱になったことが何度もあります 特に痛みに関連した不安があり、損傷することを心配しています 有意義な活動に参加することをやめてしまいました 彼らの痛みがレントゲンで見つかった退行性の椎間関節の変化によるものであると信じています(通常の加齢に伴う変化と一致しているにも関わらず) 直立した姿勢が健康的だという考えを広げ続けるような持久的な対処行動に積極的に参加しています 通常の家庭での役割を負担して「助け」ようとする配偶者がいます。彼らの腰部に関するボディマップは歪んでいます。 痛みの多面性を認識することは、あなたがより特定的になることを可能にするでしょうか? 上の要因の全ては、確実に患者の痛みの一因になっているでしょう。そこで私たちはこれらの誘因要素すべてを統合した文字の混ぜ合わせ診断でも作るのでしょうか?例:伸展・不安・恐れ・反芻・意識的・抑制・ノーマル人体構造の不耐性腰痛を持っています。というように。 いいえ、そんなことをしなくてもいいのです。私たちは痛みが複雑なものであることを認識しています。私達は、いまだにこれを非特異性な腰痛と呼んでいますが、徹底的な評価を行い、いくつもの誘因要素があることが理解できました。患者の話を聞き、徹底的な検査を行うことで、彼らの器の中に何が入っているかを本質的に理解したのです。 あなたの器の中に入っているのは何か? 痛みとはあなたに害をなす全ての物(あなたの器の中のもの)とあなたにとって良い全ての物(器を大きくするもの)のバランスなのです。 ストレス 組織の損傷 睡眠不足 気苦労 恐れ 不安 癖 (それらが)器からあふれたときに痛みが起こるのです。   患者の敏感性という器の中の物に対して取り組むか、その器を大きくするためのトレーニングをするかのどちらかを行います。 痛みとは多くの場合で構造的に非特異的であることを認識した時、その痛みに関与している全ての要素を治療することができるのです。あなたのその治療法は、推測された構造的または機能的特殊性から予測された治療プログラムよりもより個別に適応したものであるでしょう。

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慢性疼痛を予測するために脳を見てみよう

腰痛は非常に一般的です。事実、一年に一度も腰痛を患わないなんていう人は、少し異常でしょう。(もちろん、何か重要な体験をしそこなっているというわけではありません)。 幸い、たとえ腰痛を患ったとしても、かなりの短期間で回復する確率は高いものです。急性腰痛の90%以上は、特別な介入がなくても数週間から数ヶ月程度で自然治癒します。しかし、人によっては痛みが慢性化することがあり、何年間も継続してしまうことがあります。腰痛がたどる経過には、なぜ人によってこれだけの差が現れるのでしょうか? 腰だけに目を向けていては、その答えは見つからないでしょう。専門家は長年にわたって身体検査の結果を参照にして腰痛のアウトカムを説明しようと努めてきました。しかし、姿勢、コアストレングス、脊椎と椎間板の健康状態のエビデンスの収集は、正確な予測を立てるにはほとんど役に立ちません。姿勢とMRI結果は、痛みとの関連性が乏しく、腰痛の原因となる構造的/物理的な所見さえひとつも見つかりません。 もっと最近では、主観的な要因を重要視するようになりました−疼痛の強度、ネガティブな気分、破局化、うつ状態、仕事の満足度など。これらの要因の説明は、腰部の物理的状態をただ見ていくよりも、腰痛のアウトカムを予測するのに少しは役立つでしょう。しかし、多くの疑問が残ります。 ヴァニア・アプカリアン博士の研究所による最近のいくつかの研究では、痛みを説明する"聖杯"を発見したのかどうかがかなりの賢人たちを湧かせることになりました――ある人は慢性疼痛を発症してしまい、またある人は回復することがあるといったことの正確な要因です。 もし、アプカリアン博士が正しければ、聖杯は脳にあるということになります(ひとつ重要な注意点と警告:脳が痛みの主な原因であるとしても、痛みが"気のせい"であるとか、痛みは自分のせいである、痛みは自分で忘れられる、身体は関係ないなどと、ここで言っているのではありません。) アプカリアン博士研究所の論文から抜粋したものを下記にあげます(このポストの最後をご参照ください。各論文の全文は、フリーオンラインでご覧になれます)。腰痛の有無に関わりなく、回復期や慢性期などさまざまな段階の脳のスキャンが主に含まれた彼の研究は大変興味深く、その解釈や結果をまとめるのに役立ちます。 侵害受容、急性疼痛、動き、感情の関係性 痛みは、一般的に侵害受容活動による意識下の主観的経験である。Baliki 2015 意識下の急性疼痛の知覚は、非常に影響を受けやすい・・・痛覚は、価値判断を反映しその瞬間その瞬間で移り変わる。Baliki 2015 感情行動に関与する大脳辺縁系が、侵害受容と痛覚の橋渡しに重要な役割を果たしている。Baliki 2015 侵害受容器は、疼痛の知覚がなくても活動することがある・・・・私がこの投稿を書きながらも椅子に座りながらもじもじ姿勢を変えている主な理由は、私の皮膚や筋や骨を支配している侵害受容器が私の姿勢を調整する必要があると命令しているからである。Baliki 2015 意識的に痛みを認知していなくても、行動の侵害受容性制御は繰り返し起き、"潜在意識"となる。Baliki 2015 日常の運動は、各個人の自然な関節可動域を越えれば、ケガや組織ダメージを起こしやすい・・・これは、運動行動は侵害受容器によってひとまとめに抑制されるという結論を裏付ける。Baliki 2015 我々は、侵害受容が痛覚の存在なしに起こり続けるということと、それが基本的な生理的過程であるということに私たちは異議を唱える・・・痛みが存在しなければ、侵害受容によって調節される行動は、すでに成立している習慣的な行動範囲によるものと推定する。それとは対照的に、痛みが引き起こされると、これにより末梢神経と脊髄に新たな侵害受容性学習/感作を起こすこととなる。嫌悪感を抱くような経験から受けとる価値観やサリエンシー(強烈な体験による痛い記憶)によって増強される情動学習も同様である。Baliki 2015 急性疼痛から慢性疼痛への移行 負傷による急性疼痛を経験した被験者のごくわずかなものが、慢性疼痛に進行する。Hashmi 2013 急性腰痛患者の大半(90%以上)では、しつこい痛みがほとんどないかまったくなく、一日または数週間で完全な機能回復を果たした。Apkarian 2009. この領域が慢性疼痛に関してまだ取り組んでいない2つの批判的な問いとは:1)どのような人が発症しやすいのか? そして、2)発症しやすさの根底にあるものは何か? Hashimi 2013 これまでの臨床研究は、人口動態や感情状態、ライフスタイル、併存疾患、その他といった慢性疼痛を起こす多くのリスクを明らかにしたが、全体としては、こうしたパラメーターは慢性疼痛の分布の中では比較的小さな部分を占めているにすぎない。それとは対照的に、脳の解剖学的そして機能的特徴は、80%~100%の精度で慢性疼痛の発症を予測する。Hashmi 2013 今では、慢性疼痛を持つ脳の解剖学と生理学は、急性疼痛を経験している健常者の脳とは異なることを示す十分な証拠がある。Vachon-Presseau 2016 人間や動物に関する一連の論文は、報酬を得ようとする動機付け行動の中心である皮質辺縁系が、急性疼痛ではモジュレーターとして、慢性疼痛ではメディエーターとして働くと特定した。Vachon-Presseau 2016 脳の縦断画像研究で、深刻な腰痛歴がある人を1年間追跡した。この間、痛みと脳のパラメーターが度々記録された。この研究がスタートする時に、内側前頭前野と側坐核の同期性の強さ(つまり、機能的連結性)は、被験者が一年後にそのまま慢性に移行するであろうことを予測した(80%以上の精度)。Apkarian 2016 持続的に増大するmPFC―NAc間の機能的連結性は、感情的サリエンシーの信号の増幅として理解できるかもしれない。Vachon-Presseau 2016 皮質辺縁系のあらゆる分野は、継続的な疼痛状態から影響を受けるか、または、継続する疼痛状態を制御あるいは増大するという有力なエビデンスがある。Vachon-Presseau 2016 慢性疼痛の再定義 慢性疼痛の定義は、単に長く持続する痛みとか正常な治癒期間を越えて続く痛みなどといった同じような言葉を繰り返し当てはめているにすぎない。Baliki 2015 私たちは、慢性疼痛の新たな定義を提案する。痛みを、そのセンセーションによって定義するのではなく、行動適応を制御する神経生物学機構を強調した定義を提案する。そして、私たちは、疼痛の持続性は、皮質辺縁系の学習機構による皮質の再構成を介して起こると仮説を立てる。Baliki 2015 侵害受容から疼痛への変換を開閉する閾値メカニズムでの長期的な変化も、慢性疼痛への移行の根底にある。さらに私たちは、閾値のシフトはシナプス学習を基にした再機構を発動させる辺縁系の回路によって決まってくることも提案する。つまり、これらの考えを簡単にすると、疼痛の意識的知覚のための中脳辺縁系域値の低下としてまとめることができる。これは機能的に、脳を痛みに対して中毒の状態にしてしまうことである。Baliki 2015 慢性疼痛とネガティブな気分の関係 侵害受容や疼痛が身体的損傷に対して行動を制限することで私たちを保護するのと同様に、ネガティブな気分というのも危機に曝されることを最小限に抑え、行動を抑制することで生存を促進する。Baliki 2015 慢性疼痛の症状と海馬の体積の減少が関連づけられるのと同様に、うつ症状も海馬体積の減少に関連すると、多くの論文が示唆している。Baliki 2015 よって当然、これらの症状が併存することが多いのは驚くべきことでもなく、実際、現在ではネガティブな気分と急性疼痛や慢性疼痛の間の相互関係に関する論文がわずかではあるが発表され始めている。Baliki 2015 意義と新たな疑問 この研究は、既にわかっていることに加えて何を提供してくれるのでしょうか? 慢性疼痛は中枢性感作と脳の変化であると理解してきました。しかし、これらの変化は継続的な末梢からのインプットによって引き起こされているという可能性はまだあったのです。アプカリアン博士の研究では、末梢性侵害受容は慢性疼痛の中心的な要因ではないと示唆しているようです。 いくつかのアプカリアン博士の研究は、さらなる追試を実施する必要があるということと、彼の所見を異なる角度で理解する人もいることを追記しておくべきでしょう。 私は間違いなく、彼の数多くの論文で基本的に未解決な疑問をアプカリアン博士に訊ねるでしょう: 仮に慢性疼痛の大部分が脳の情動系によるものであるならば、実際問題として、治療や予防に役立てるために私たちに何ができるでしょうか? そして、慢性疼痛から回復した人たち(私を含めた多くの人たち)の脳はどうやって変化していったのでしょうか? 彼らの脳は、進化したのでしょうか、それとも退化したのでしょうか? 私は、すべての人に当てはまるような、いかなる特定個人の動きや恐怖感、価値観、意義といったものと脳との無意識な結びつきを変えることへの成功への簡単な答えは存在しないのではないかと推測します。

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