アスリートの回復と競技力向上のための戦略
トレーニングに真剣に取り組むエリート・アマチュアアスリートが見落としがちでありながら、実はとても重要な要素が、心身のリカバリー・回復であることは間違いありません。アスリートや活発な活動を行う方々へのための回復方法とは?そして更に競技や試合で最高のパフォーマンスを発揮するための戦略を紹介します。アスリートを指導しているコーチやトレーナーの方々、是非チェックしてみてください。
オーバートレーニングを発見することができる診断ツールはどれか? パート1/3
(パート 2/3はこちらへ) アスリートにおけるオーバートレーニングおよびオーバーリーチングは、発生前に予測することは言うまでもなく、診断することが非常に困難である。現在、初期症状を監視するために現在多くのコーチや研究者たちが注目しているのは、心拍変動(HRV)のようである。しかし他にも選択肢はある。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が、少人数のアスリートにおける非機能的オーバーリーチングを評価するための、4つの診断ツールの能力を調査した興味深い研究論文の再考察を行う。 研究論文: 非機能的オーバーリーチングに対する異なる診断ツール、ネダロフ、ズイヴァー、ブリンク、ミューゼン、レミンク、国際スポーツ医学ジャーナル、2008年 背景 オーバートレーニングはどのように定義されるか? アスレチックトレーニングは、過負荷とその後の回復を伴う。このような過負荷は、単一の激しいトレーニングセッション後、または激しいトレーニング期間後において、疲労感やパフォーマンスの急性な低下を引き起こす可能性がある。しかしトレーニングと回復という通常の流れにおいてこの過負荷は、有益なトレーニング反応、適応、そしてその結果として生じるパフォーマンスの向上をもたらす。しかしながら、過負荷と回復との間のバランスが適切に管理されていない場合、有益なトレーニング反応は起こらず、パフォーマンスは向上しないと考えられている。この好ましくない反応に関する調査は、オーバートレーニングを研究する研究者たちの焦点となっている。これらの研究者たちは、合意声明および指針書を作成しており(ミューゼン2006年、クレーハー2012年、ミューゼン2013年)、その中では下記のような定義が提唱されている。 オーバートレーニングは、機能的(もしくは短期的な)オーバーリーチング、非機能的(もしくは極度の)オーバーリーチング、あるいはオーバートレーニング症候群という結果を引き起こす可能性のある、増強されたトレーニングの過程である。 機能的オーバーリーチングは、レスト後におけるパフォーマンス向上を伴う、一時的なパフォーマンス低下につながる増幅されたトレーニングの過程である。 非機能的オーバーリーチングは、長期のパフォーマンス低下につながる増幅されたトレーニングの過程であるが、レスト後の完全な回復において、ある心理的および/もしくは神経内分泌的症状が付随して起こる。 オーバートレーニング症候群 - 非機能的オーバーリーチングと一致するコンディションであるが、さらに(1)より長期間にわたるパフォーマンスの低下(2ヶ月以上)、(2)より重度な症状や生理機能不適応(心理的、神経的、内分泌的、免疫的な)、および(3)他の疾患では説明がつかない更なるストレス要因を伴う。 上記のように、他の疾患も同様の原因不明のパフォーマンスの低下を引き起こす可能性があるため、オーバートレーニング症候群の正確な診断を引き出すためには、非伝染性疾病(例:甲状腺もしくは副腎に関わる疾病、糖尿病、鉄欠乏症、貧血症)、感染性疾患(例:心筋炎、肝炎、腺熱)および他の主要な疾患や摂食障害(例:拒食症および過食症)の存在を排除する必要がある。 2013年)は、オーバートレーニング症候群と関連がある、血液バイオマーカー、および生理的また心理的な測定における、定量的所見の概要を提供するために行われた。下記は彼らの調査結果である。 血液バイオマーカー – 評論家たちは、グルタミン、グルタミン酸塩、コルチゾール、IL-6、テストステロン、コレステロール、ブドウ糖、レプチン、ヘマトクリット、ヘモグロビン、副腎髄質ホルモン、エピネフリン、およびクレアチンキナーゼを評価した研究に関し報告している。彼らは、影響の規模はグルタミン、グルタミン酸塩、コレステロール、IL-6、およびブドウ糖に対してのみ大きく(事実、グルタミン、グルタミン酸塩、およびIL-6に対する影響は非常に大きかった)、一方テストステロンおよびクレアチンキナーゼに対する影響はわずかあった(クレアチンキナーゼ以外は全て減少)ということを発見している。 生理的測定 – 評論家たちは、心拍変動ではなく、安静時心拍数、安静時収縮期血圧、および安静時拡張期血圧を評価した研究について報告をしている。彼らは、安静時心拍数および安静時収縮期血圧の両方に対する影響は大きく、これらの変量はオーバートレーニングされたアスリートにおいて減少するということを示しているにもかかわらず、この研究は相反する結果を生み出したということを記述している。この発見は以前の総評の結果とも相反している。 心理的測定 – 評論家たちは、緊張、疲労、混乱、活力、怒り、鬱に関する気分状態は研究においてかなり変化してきたが、その方向性に明確な傾向はなかったということを発見している。このような変化は、オーバートレーニングに対する心理的反応の、非常に個体差のある特質を反映している。しかし彼らは確かに、睡眠パターン障害、覚醒状態の増加、睡眠の質の低下と安定性、およびストレスレベルの増加に対する明らかな傾向を観察していた。 要約すると、オーバートレーニング症候群を患っているアスリートは、ストレスに対する自己認識の増加、睡眠の質および量の減少、睡眠障害、自己認識および気分の混乱、免疫抑制、交感神経活動の変化を示すようである。 何らかの理由により、評論家たちは、この系統的レビューにおいて心拍変動(HRV)を考慮に入れていない。安静時心拍数に関してのみ、研究はオーバートレーニングされたアスリートにおける心拍間隔の変動の様々な測定において、増加と減少の両方を示していた。しかしながら研究者たちは、これはオーバートレーニングの状態に至るまでの異なる経路を反映していると提議している。マキビック(2013年)は、系統的レビューを行い、エクササイズ強度の増加と関連するオーバートレーニングは、副交感神経優位につながる一方、エクササイズ量の増加と関連するオーバートレーニングは、交感神経優位につながるという結論に至っている。更に彼らは、非機能的オーバーリーチングの段階もまた、交感神経優位を特徴としているかもしれないということを記述している。現代のスマートフォンは、心拍モニターと連動して、HRVを簡単にかつ正確に測定するために使用することが可能であるため、HRVはコーチにとって非常に魅力的なツールとなっている。
オーバートレーニングを発見することができる診断ツールはどれか? パート2/3
(パート 1/3はこちらへ) (パート 3/3はこちらへ) 背景(続き) 何がオーバートレーニングを引き起こすのか? オーバートレーニング症候群の正確な原因は明確ではなく、それは主に次の2つの主要な理由から研究を行うことが非常に困難であるためである。第1に、倫理的にアスリートに対してオーバートレーニングを誘発することは不可能であり、いかなる研究も定義上、回顧的でなくてはならない。第2に、現在オーバートレーニングは、長期の観察後、また多くの他の可能な原因を除外した後にのみ診断することが可能であり、何ヶ月もパフォーマンスの低下が継続しているアスリートは時に引退を選択してしまうため、実際には非機能的オーバーリーチングであったのか、もしくはオーバートレーニングに達していたのかを評価することが困難となる。それでもなお、研究者たちの様々なグループ間で支持されているメカニズムが幾つか存在しており、クレハー(2012年)は下記の見出しに関する要約をしている。 グリコーゲン仮説 – このモデルにおいては、グリコーゲンの減少が疲労を引き起こし、その結果としてパフォーマンスを低下させると信じられている。しかしながら、スナイダー(1995年)は、正常なグリコーゲン値にもかかわらず、アスリートがオーバートレーニングの状態になることは可能であるということを発見しており、この仮説を非常に支持しがたいものとしている。 中枢疲労仮説 – このモデルにおいては、トリプトファンの脳への取り込みの増加が、神経伝達物質セロトニン(5-HT)値の上昇へとつながり、これが有害な気分症状を生み出すということを提議しているのが原案である。ミューゼン(2006年)は、この仮説の改訂版において、ドーパミンに対するセロトニンの比率の増加は、疲労感や倦怠感を引き起こすと説明している。 グルタミン仮説 – このモデルにおいては、グルタミンの減少が免疫機能障害、および感染に対する感受性の増加を引き起こすと提議されている。しかしながら、オーバートレーニング症候群は感染が存在せずとも起こり得ると考えられており、この仮説を魅力のないものとしている。 酸化ストレス仮説 – このモデルにおいて研究者たちは、過度の酸化ストレスは筋損傷および疲労へとつながると提議している。 自律神経系仮説 – このモデルにおいて、副交感神経優位は様々な症状を引き起こすと考えられている。しかしながら、心臓自律神経バランスを測定するために心拍変動を使用した研究は、トレーニング負荷の増加後、交感神経および副交感神経の優位性の増加を記述しており(例:ハイネン2006年)、ほとんどの場合、心臓自律神経系バランスに対する増強されたトレーニングの影響は1週間以内に是正される可能性があるようである(例:ピコット2000年)。 視床下部仮説 – このモデルにおいては、視床下部-下垂体-副腎系、および/もしくは視床下部-下垂体-性腺軸の異常調節は、コルチゾールもしくはテストステロンを明らかなターゲットとし、オーバートレーニング症候群の様々な症状を引き起こしているかもしれないということが提議されている。しかしながらこの研究は、副腎ホルモン値における上昇、低下、もしくは無変化のいずれかは示しているものの、オーバートレーニングの期間中、これらのホルモンに対し何が起こるのかに関しては結論に達していない(例:リーマン1992年、フーパー1993年、ユーホーセン1998年、マッキノン1997年、ウッシタロ1998年)。それはそれとして、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究者たちは何年もの間、視床下部-下垂体-副腎系の全く同じ問題に直面している(例:詳しくはピットマン2012年によるこの総説全文を参照)。 サイトカイン仮説 – このモデルにおいて(詳しくはスミス2000年参照)、炎症およびサイトカインの分泌は、知られている限りほとんどのオーバートレーニング症候群の影響や症状を引き起こすと提議されている。このモデルの強みは、他に提議されたメカニズムの多くと関連している可能性があるということである。主な弱点は、わずかな研究しかオーバートレーニング状態のアスリートにおけるサイトカイン上昇の有症率を評価しておらず、そのような研究は良い結果を生み出してきていないということであった(例:ハルソン2003年)。 要約すると、現在一般に認められたオーバートレーニングの起こるメカニズムは存在しない。これは、発生前にオーバートレーニングが起こっているのかどうかを評価することを非常に困難なものにしている。 *** オーバートレーニング症候群を診断するために使用可能なツールは何か? オーバートレーニングのメカニズムに関する理解の欠如にもかかわらず、それらが部分的にしか検査されていないとしても、コーチやアスリートたちはこれを回避する助けになるかもしれない手段を実行しようとすることに熱心である。ユーホーセン(2002年)は、有益かもしれない現在入手可能な診断ツールをリストアップおよび再考察し、またネダロフ(2006年)は精神運動機能という形の更なるツールを提議している。下記は安静時に検査することが可能なこれらの変数の要約リストである。 安静時心拍数 心拍変動(HRV) 気分状態のプロフィール(POMS) 血中代謝マーカー ホルモン 免疫学的パラメーター 精神運動機能(反応時間など) 下記のさらなる変数は、エクササイズ中のオーバートレーニングのマーカーとして提議されている。 パフォーマンスの低下 血中代謝マーカー ホルモン 心拍数 自覚的運動強度 これらの多くのマーカーは有益であるが、どれも決定的ではない。概して、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングの有益な指標は、気分の変化(POMSスケールを使用)、免疫マーカーの低下、反応時間の減少、パフォーマンスの低下、HRVの増加もしくは減少、そして同レベルのエクササイズの際の最大下乳酸濃度の減少を含んでいるようである。 ***
オーバートレーニングを発見することができる診断ツールはどれか? パート3/3
(パート 2/3はこちらへ) 研究者たちは何を行ったのか? 上記のように、オーバートレーニング状態のアスリートにおける研究の結果に基づくと、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニング症候群を示しているアスリートは、自己認識ストレスの増加、睡眠量および質の低下、睡眠障害、自己認識および気分の変化、免疫抑制、および交感神経系活動の変化を示す可能性があるようである。この研究において研究者たちは、下記のようなこれらの特性の1つもしくはそれ以上を測定する能力により、非機能的オーバーリーチングの評価を行う能力に関し、下記のツールを比較している。 アスリートに対するリカバリーストレスアンケート(RESTQ-sport)- これは各分野4つの質問からなる、19分野の構造化アンケートであり、活動に関連し感じたストレス要因および回復の頻度を確立するために、各質問は7点スケールにて回答される。トレーニング負荷の変化に対するアスリートの反応を監視することに関し、この方法は既に正当性が立証されている。 気分状態のプロフィール(POMS)- これは、鬱状態(8項目)、怒り(7項目)、疲労(6項目)、緊張(6項目)および活力(5項目)を評価している合計32項目からなる、5分野にわたるもう一つの構造化アンケートであり、各質問は5点スケールにより回答されている。 反応時間 - 幾人かの研究者たちは(例:ネダロフ2006年)は、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングであるアスリートにおいて、精神運動機能が損なわれていた可能性があると提議している。これは反応時間の低下または減少により明確にすることが可能である。これは複数回測定し記録することが非常に簡単なツールである。 視床下部-下垂体-副腎系(HPA)軸機能 - 上記のように、オーバートレーニング症候群を患うアスリートにおいては、同日に2回行われた特定の種類の最大エクササイズテストに対する、コルチゾールおよび副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)反応の機能不全が存在する。自転車エルゴメーターによる段階的なエクササイズテスト(120Wから始まり、極度の疲労に至るまで3分ごとに30Wずつ増加)の前後に、各テストに対しコルチゾールおよびACTH濃度が測定された。 ゆえにこれらの4つのテストはストレスに対する自己認識、自己認識および気分の変化、交感神経系活動の変化、および精神運動機能の変化を評価している。研究者たちは、被験者として3名の女性スピードスケート選手へアクセスした。1名は健康なコントロール被験者であり、2名は後に様々な段階の非機能的オーバーリーチング(NFO)と診断され、そのうち1名は現在も非機能的オーバーリーチングの状態にあり、1名は非機能的オーバーリーチングからの回復途中であった。NFOを患うアスリートは2週間トレーニングを控えており、NFOから回復中のアスリートは12週間トレーニングを停止していた。 *** 何が起こったのか? アスリートに対するリカバリーストレスアンケート(RESTQ-スポーツ) 研究者たちは、コントロール被験者は、一般およびスポーツに特化したストレススケールにおいて低い値を示し、一般およびスポーツに特化した再生スケールにおいて高い値を示したと記述している。NFOを患うアスリートは一般およびスポーツに特化したストレススケールにおいて高い値を示し、一般的な再生スケールにおいて低い値を示し、またスポーツに特化したサブスケールのいくつかにおいて低い値を示した。NFOから回復中のアスリートは、これら2極端の中間の値を示していた。 気分状態のプロフィール(POMS) 研究者たちは、コントロール被験者は、抑鬱気分スケールにおいて低い値を示し、活力に対しては高い値を示したと報告している。NFOを患うアスリートは、疲労スケールにおいて高い値を示し、活力を含むその他の気分のスケールに対しては中から低程度の値を示していた。NFOから回復中のアスリートは全てのスケールにおいて中程度の値を示していた。 反応時間の課題 研究者たちは、NFOから回復中のアスリートは最速の反応時間を示し、現在NFOを患っているアスリートは最長の反応時間を示したということを発見している。 ホルモン反応 研究者たちは、コントロール被験者は両方のエクササイズテスト後、コルチゾール濃度のわずかな減少を示したということを報告している。NFOから回復中のアスリートは、最初のテスト後わずかな減少を示したが、2回目のテスト後はわずかな増加を示した。NFOを患っているアスリートは、最初のテスト後わずかな増加を示し、2回目のテスト後に大幅な増加を示した。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、RESTQ-スポーツ(一般およびスポーツに特化した自己認識ストレスを測定する)、反応時間テスト(精神運動性速度を測定)、およびダブルエクササイズプロトコルに対するコルチゾール反応は、非機能的オーバーリーチングの存在を監視するために有望なツールであるという結論に至った。しかしながら彼らは、POMSテスト(気分状態を測定)は、NFOを患っているアスリートとNFOから回復中のアスリートを有効的に区別することが不可能であったため、このテストはそれほど有益ではなかったと記述している。 *** 制限要素は何か? この研究の主な制限は、被験者が3人のみであり、そのうち1人はコントロールであったということである。ゆえに、個人差により他のアスリートにおいては全く異なる状況が観察される可能性がある。その他の主要な制限は、データが1点でのみ集められており、非機能的オーバーリーチングの診断がなされた期間中に集められた情報のみを反映しているということであった。もし研究者たちが同じアスリートに対し、彼らが非機能的オーバーリーチングになる前のデータを集めることが可能であったならば、アスリート個人における大きな変動を示していた可能性があるという点で、POMSテストはより有益であったかもしれない。 *** 実践的な意義は何か? 原因不明のパフォーマンス低下は、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングに対する確立した測定方法である。規定のトレーニングプログラム及びリカバリーを行っているにもかかわらず、持続的なパフォーマンスの低下を示すアスリートは、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングに対し評価されるべきである。 オーバートレーニングの診断にあたり、非伝染性疾病(例:甲状腺や副腎に関わる疾病、糖尿病、鉄欠乏症、および貧血症)、感染性疾病(例:心筋炎、肝炎、および腺熱)、またその他の主要な疾病もしくは摂食障害(例:拒食症と過食症)の存在を除外する必要がある。 オーバートレーニング症候群を患うアスリートは、ストレスに対する自己認識の増加、睡眠量および質の低下、睡眠、自己認識、および気分の障害、免疫抑制、および交感神経系活動の変化を示す可能性があるようである。 潜在的に有益な非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングの早期警告に対する指標は、気分状態の変化(POMSスケールを使用することが可能)、免疫マーカーの低下、反応時間の減少、パフォーマンスの低下、HRVの増加もしくは減少、および同レベルのエクササイズの際の最大下乳酸濃度の減少を含む。 RESTQ-スポーツ(一般およびスポーツに特化した自己認識ストレスを測定)、反応時間テスト(精神運動性速度を測定)、およびダブルエクササイズプロコトルに対するコルチゾール反応(エクササイズに対するHPA-軸反応を測定)は、非機能的オーバーリーチングの存在を監視するために有望なツールである。
回復の戦略
トレーニング後の疲労を回復させるために、回復のためのメソッドを使いすぎてしまってはいませんか?あるいは、不適切なタイプのメソッドを使用してはいませんか?コンディショニングのスペシャリステであるジョール・ジェイミソンが、正しい回復戦略の選択方法に関してシェアします。
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「リカバリーのためのトレーニング」セミナー中の様子を撮影したこのビデオでは、ジョール・ジェイミソンが、エネルギー消費のコントロール、そしてリカバリーがいかにスキルであるのかをデモとともに解説しています。カーディアックアウトプット(心拍出量)トレーニングは、心拍数を130-150BPMに維持する、基礎レベルのコンディショニングプトロコールとして幅広く知られるメソッド。更に特定の心拍数まで運動強度を上げたのち、一定時間その心拍数を維持することで、エネルギー消費量を正確に制御するスキルを向上させるバリエーションもご紹介します。
トレーニングデータを解釈する際は、何もしないと決める前によく考えよう!
負荷管理とは「アスリートにトレーニングさせない」ということではない! 「負荷管理」はハイパフォーマンススポーツにおいて人気の出てきたフレーズですが、残念なことに、この方法は一般的に、選手に休息を取らせる、練習を休ませる、またはプレー時間を短くすることと関連付けられてしまっています。このフレーズは非常に一般的になってきていて、平均的な「スポーツファン」でさえも負荷管理について意見を持っています。通常、自身の好きな選手を見るために多くのお金を払ったのに、彼らはその選手が「負荷管理」という理由により休まされている事を知るためだけにアリーナにやってくることがあるのがその理由でしょう。 以前の記事の中で、アスリートのトレーニングをモニタリングするいくつかの重要な理由を述べました: (1) 高い慢性的なトレーニング負荷を築き上げ、 (2) 競技の最も強度の高い場面に備え、そして (3) アスリートをこのような高い負荷まで早く、そして安全に漸進させるため。 効果的にアスリートを管理することの明らかなメリットを考慮したとき、負荷管理が単に、スポーツ医学のスタッフが「アスリートをトレーニングから休ませるため」の口実として作り上げた言葉であると、一部のコーチや解説者がいまだに(間違って)信じているのは興味深いことです。 スポーツは進む方向を見失い、私たちはまた同じ方向に進んでいるのでしょうか? 2000年代の初め、研究者らは、特にチームスポーツにおいてトレーニング負荷と怪我の関係性について研究をし始めました。[1,3] この研究は、いくつかのテクノロジーの進歩と同時に起こりました−一つ目は、ウェアラブルな運動センサー(例、GPS)であり、そして二つ目はアスリートのトレーニング負荷を管理するために用いられるデータベースの導入でした。スポーツチームは、所属選手を追跡するためのさらなるリソースに投資し始めました−アスリートを管理するスタッフに支払われる給料は、プレーできない怪我をした「スター選手」にオーナーが支払うものに比べたらほんのわずかなものです。それは賢い投資でした! より多くのテクノロジーの開発者達が、彼らの商品が「怪我を予測し、そして予防する」ために利用できると明言し、メディアがその話を助長して、オーナー達はより興味を駆り立てられるのです。ハイパフォーマンスディレクターは「データ」を活用しているように見せなければならず、おそらくその最も簡単な方法がアスリートをトレーニングから外すことだったのでしょう。トレーニングの「限界」が設定され、アスリートが「走りすぎている」または「トレーニング負荷が高すぎる」ことを恐れるあまり、一部のパフォーマンススタッフはシーズン途中にコーチに練習を止めるように持ちかけることもありました! いくつかのケースにおいては追加のリカバリーはもっともなことかもしれませんが、常にアスリートをトレーニング負荷から遠ざけることは、競技の過酷な要求を切り抜けることができる頑健なアスリートを築き上げるための最良の方法ではないでしょう。[4] 私達はどのようにして頑健なアスリートを育て上げるか? 以前の見解とは正反対に、慢性的なトレーニング負荷の低さが怪我のリスクを増加させることを示すエビデンスが増えてきています。[4] これらの発見は、プレーできる状態のアスリートを増やすためには、トレーニング負荷を減らすよりも、より高い慢性的な負荷へと漸進させることが望ましい方法であることを示唆しています。しかし、スポーツパフォーマンスと医療のスタッフは、アスリートをプレーできる状態に維持することだけが仕事ではありません−これらのアスリートは必要なときにプレーする準備ができていなければなりません。 負荷−怪我についての研究と同様に、最近のエビデンスは、慢性的な負荷が高く、負荷の「スパイク(急激な上昇)」が少ないアスリートは、プレーする準備がよりできていることも示しています。[7] これらの結果は、効果的な負荷管理プログラムがパフォーマンスを向上させることができることを強調しています。トレーニング負荷以外の複数の要因が怪我のリスク [2,5] とパフォーマンス [5,7] の両方に影響を与えるであろうことが認識されている一方で、効果的な負荷設定プログラムの欠如は、目隠しをしながら的を撃つことと同様です。 もし、アスリートのトレーニング歴に関する情報がなければ、スポーツ医学スタッフはいかにしてトレーニング負荷のスパイクを回避することができるでしょうか? もし、トレーニング負荷を計測しないのであれば、アスレティックトレーナーや理学療法士、またはストレングス&コンディショニングコーチはいかにしてより高いトレーニング負荷へと漸進させることができるでしょうか? トレーニング負荷、アスリートの可用性、そしてプレーするための準備度の関係を考慮したとき、もし彼らのトレーニングプログラムが適切な負荷設定の戦略に基づいていないのであれば、どうしてアスリートは彼らの潜在的なパフォーマンスを達成し、怪我をしないでいつづけるための最大の可能性を得ることができるのでしょうか? 「フィットネス」とトレーニング負荷に対する耐性はどうでしょうか? トレーニング負荷のスパイクは怪我の発生に貢献するかもしれませんが、「負荷」のみでは全ての怪我を説明することはできません。さらに、一部の選手はトレーニング負荷のスパイクに対してより耐性がある一方で、他の選手はより影響を受けやすいでしょう。ケースによっては、トレーニング負荷のスパイクは不可避です(例、重要な選手が怪我からすぐに復帰する、プレーオフで複数のダブルオーバータイムの試合を行う)。もし、トレーニング負荷のスパイクが不可避であるならば、怪我のリスクを軽減させ、選手がスポーツで成功するための最大の可能性を与えるために、パフォーマンスとメディカルのスタッフはどのような実用的な手段をとることができるでしょうか? まず、もしメディカルスタッフが、近い将来に負荷が上がる可能性が高いとわかっているならば(例、週に1回の試合から複数回の試合へのスケジュールの変更)、そのスケジュールの変更前の数週において慢性的な負荷を増加させることで、負荷に対する耐性を向上させることができるでしょう。このプリローディングは慢性的な負荷を増加させ、それによって「底」と「天井」の間のギャップを埋めることができます−「底」からよりも「天井」から負荷を急激に上昇させることの方が難しい。なぜなら慢性的な負荷が小さいと、負荷は増加する他にないからです。 次に、しっかりと発達した身体特性(例、ハムストリングのエキセントリック筋力)は、独立して怪我のリスクを減少させることが示されています。 三つ目に、特定の身体特性(例、下半身の筋力、スピード、そして有酸素性持久力)は、トレーニング負荷と怪我の関係性をコントロールします−有酸素性持久力やスピードそして下半身の筋力がよく発達した選手は、身体特性があまり発達していない選手よりもトレーニング負荷のスパイクに対してより耐性があります [9](図1)。 図1.身体特性(このケースでは、有酸素性持久力)がどのようにトレーニング負荷と怪我の関係性をコントロールするかという例。トレーニング負荷と怪我の関係性はスピードや反復スプリント能力そして下半身の筋力によってもコントロールされる。[8] もし、絶対的な負荷(「底」または「天井」のどちらか)を短期間で変更することができなければ、パフォーマンスやメディカルスタッフはフィジカルテストの結果を用いて、特定の負荷設定パターンに基づいた明確なリスクグループに選手を分類することができます。トレーニング負荷と怪我の関係性の様々な調整因子の例、そして似たようなトレーニング負荷にある2人の異なるアスリートを実用的に管理するための提案を下に記します: 表1.似たようなトレーニング負荷を持つ2人の異なるアスリートに対する実用的な応用方法の例 備考 「トレーニングを変更する」とは必ずしも「より多くの休息を与える」ということではありません。専門家は、アスリートの管理データを解釈し、行動を起こすための実践的手引きとしてこのフリーアクセスの論文 [6] を参照してください。 何もしないと決める前によく考えよう! あらゆるトレーニング日における怪我の絶対的なリスクは非常に低いものです(トレーニング日につき1%未満)。疑心暗鬼になるよりも、専門家は何もしないと決める前によく考えることが推奨されます。 頑健で耐性に優れたアスリートを築き上げることは、良いトレーニングプログラムから始まります。スポーツ医学の専門家は、(1)頑健なアスリートを育てるトレーニングをデザインする自身の能力と、(2)彼らのアスリートは自身が思う以上に耐性があることを信じるべきです。 最後に、効果的なアスリートの管理プログラムでは、選手のトレーニング負荷を許容する能力に影響を与える調整因子を考慮します。これらの調整因子とそれらがトレーニング負荷に対してどのように作用するかといった知識によって、トレーニング負荷のみを独立して測定するよりも、より包括的なアスリートの管理システムを得ることができるでしょう。 参照 Anderson L, Triplett-McBride T, Foster C, et al. Impact of training patterns on incidence of illness and injury during a women’s collegiate basketball season. J Strength Cond Res 2003;17:734-738. Bittencourt NF, Meeuwisse WH, Mendonca LD, et al. Complex systems approach for sports injuries: moving from risk factor identification to injury pattern recognition-narrative review and new concept. Br J Sports Med, 2016;50:1309-1314. Gabbett TJ. Influence of training and match intensity on injuries in rugby league. J Sports Sci 2004;22:409-417. Gabbett TJ. The training—injury prevention paradox: should athletes be training smarter and harder? Br J Sports Med 2016;50:273-280. Gabbett, T.J. (2018). Debunking the myths about training load, injury and performance: empirical evidence, hot topics and recommendations for practitioners. Br J Sports Med 2018: bjsports-2018-099784. doi: 10.1136/bjsports-2018-099784. [Epub ahead of print]. Gabbett TJ, Nassis GP, Oetter E, et al. 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より良いパフォーマンスと回復のための呼吸ストラテジー パート1/2
数年前、私は取り除くことができないと感じる慢性的な肩の痛みを抱えていました。 私は、その肩の痛みを治すために、よくある方法をいろいろと試しました:アクティブリリース、様々な種類のマッサージ、電気刺激、その他考えられることの全てを。そのどれもが、短期間の痛みの緩和をもたらす以外は、ほとんど役に立ちませんでした。 数日後には、元の状態に戻ってしまいました。 数ヶ月後、私はビル・ハートマンとマイク・ロバートソンのセミナーを受講していました。彼らに、私が肩に抱えている問題、知り得る全ての治療法を試したこと、それでもまだ痛みがあることを説明しました。 ビルの答え?より良い呼吸をすること。 彼は、私をテープルの上に載せ、素早い評価をし、一連の呼吸エクササイズと数種のモビリティードリルを紹介しました。「よし、じゃあ立ち上がって、肩を動かして、どう感じるか教えて」 私は立ち上がって、肩を動かしました、すると…痛みがなかったのです。 もちろん、私は一連のエクササイズが効いたことに感動しましたが、それまでに試した全ての方法と同じような結果になるだろうと思っていました:一時的な緩和をもたらしても、数日後には痛みが戻ると。しかし、数日が経っても、数週間が過ぎても、痛みが戻ってくることはありませんでした。 ビルは、何ヶ月も私に取り憑いていた、時には物凄く痛み、眠ることさえできなかった障害を、たった数分で改善することができたのです。 それは、私が初めて呼吸の大切さに触れた機会であり、ビルとマイクは、他にほんの数名しか意識さえしていない健康とフィットネスの側面をカバーしていることがわかりました。 過去数年にわたり、私は、パフォーマンス、回復、一般的な健康においてさえも、呼吸がどれほど重要な役割を担っているかについて学んできました。適切に呼吸をする方法を学ぶことから、文字どおり全ての人が恩恵を受けることができます。もしあなたがコーチまたはトレーナーなら、これはあなたのクライアントにとっても人生を変え得るものでもあるのです。 これこそが今日、より良いパフォーマンスとリカバリーのために適切に呼吸をする方法について、深く話すために、私がビルとマイクを招待した理由です。 ビルとマイクは、インディアナポリスフィットネス&スポーツトレーニング (IFAST)という、メンズヘルスマガジンによるアメリカのジム、トップ10に、過去6年間で3回ランクインしている施設を所有しています。 ビルから始め、その後にマイクから聞きますが、まずここに、呼吸ストラテジーがどのようにリカバリーを改善できるかを説明する短い動画があります。 現在のパフォーマンスとリカバリーのモデルは破綻している(人間はなぜ機械ではないのかの理由) 皆さんこんにちは、ビルです。IFASTフィジカルセラピーのオーナーとして、またインディアナポリスフィットネス&スポーツトレーニングの共同経営者として、私は、他の形式の治療では改善できなかった痛みを持つ人々の解決方法を見つけています。 プロアスリートから一般の人々まで、彼らが皆、調子の良い、痛みのない身体を取り戻し、パフォーマンス及び健康を最適化できるように取り組んでいます。 今日の私の目標は、呼吸がどのように動きやリカバリーに影響するのかに対して簡潔な概要を与え、局所から全体の回復へとつながるパフォーマンスモデルを提供することです。 パフォーマンス(または動き)と回復となると、コーチやトレーナーの多くは、決定的要素として筋系に注目する傾向があります。大抵はこんな感じです: パフォーマンス、または体組成(あるいは両方)を向上するために、より大きく、より強く、より調整され、よりパワフルにしたい筋肉に適切な刺激を与えます。 ワークアウトや競技の間に十分な休息を取り、関わった筋肉の修復に必要な栄養素を身体に与え、必要な時にまた仕事ができるように準備します。 少なくともこの大半を正しく行う事で、物事は、あなた、またはあなたのクライアントやアスリートにとって良い方向に向かいます。単純でしょう? この通りなら素晴らしいです。問題は、人間は機械ではないという事です。個々のパーツの集合として身体を見ることができるほど、単純ではないのです。 パフォーマンスと回復を、筋系に対して純粋に局所的なものとして捉える事は、単純に不十分なのです。 実際には、身体は多くのサブシステムにより繋がっていて、それぞれが、パフォーマンス、回復、そして全体的な健康に対して重要な役割を担っています。筋系の動きと回復を最適化しようとすることは、パズルの一つのピースにすぎないのです。 動きと回復のためのより良い、より完全なアプローチは、一つのスーパーシステム – または「ヒューマンシステム」に集約するそれぞれのサブシステムを考慮し、統合されたモデルを通して物事を見ることです。 これらのサブシステムそれぞれが、他のサブシステムのパフォーマンスの成果とそこからの回復の両方を管理し、促進する能力に影響を与えます。 動きと回復の最適化における最初のステップは、すべてが筋系に始まり、筋系で終わる時代遅れのモデルから脱却し、身体の様々なサブシステム全てを考慮した、統合されたモデルを採用することから始まります。 すなわち、私たちは、個々の部分の寄せ集めとして身体を見ることをやめ、相互に連結し、共に働く、密着したシステムの集合体として身体を見ることを始めなければなりません。 この転換ができたら、次のステップは身体の様々なサブシステム全てが大切であると理解することですが、私は、そのうちの一つが他のすべての土台であると考えています。 (効果的に)呼吸をしていない時に悪いことが起こる 健康とパフォーマンスの「パズル」の最も大切な二つのピースである、動きと回復を最適化することにおいて、適切な呼吸の仕組み以上に大切なものは他にありません。 呼吸は、他の全てのサブシステムが健康に働くための土台であるにも関わらず、動きとリカバリーという側面において、最も十分に使われておらず、最も軽視されている部分です。 カレル・ルウィット博士はかつて言いました:「呼吸が正常化されていなければ - 他のどの動きのパターンも正常化できない」 呼吸が不十分だと、少なくともある程度は、他の全てのことが良い状態ではなくなります。適切な呼吸はそれほど大切なのです。 呼吸を正しく行うことができれば、身体の他の全ての「システム」が、最適な動きと回復を促進するために共に働く原材料があることになります。 動きやパフォーマンスという観点からすると、これは当然であるべきです。 もし、効果的に、効率的に呼吸をしていないとすれば、最も基本的な要求が酸素の効果的な活用である運動において、どうして良いパフォーマンスが期待できるのでしょうか? 呼吸の流れの力学的効果、及び、呼吸がどのように動きを損ない、あるいは促進するのかについては、いくら強調してもしすぎることはありません。不十分な呼吸パターンにより、姿勢や動きの質が損なわれ、やがてエクササイズや競技における非効率的な動きにつながり、パフォーマンスは、本来行うことのできるレベルから明らかに減少します。 呼吸は、筋骨格系のポジションを変えることにより、動きのパターン、姿勢、痛み、またパフォーマンスに影響し、肺の膨張不足、または過膨張につながる気流の制限を招き、動きを制限する力学的障壁を作り出します。 すなわち、まさに本当の意味で、パフォーマンス及びエクササイズ時に最適に動くことができることは、効果的に呼吸ができる能力に起因しているのです。 回復も同様に、悪い意味で影響を受けます。最適な回復について本当に理解するためには、筋肉を通り越えて、神経系を観察しなければなりません。 神経系の回復は、動動系への出力をもたらす能力の再獲得に関わる強力なインフルエンサーです。しかし、健康を維持する能力と同様に、こういった局所における適応が起こることを可能とする、幾つものサブシステムの反応に与える影響にも基づいて考慮をしなければなりません。 神経系が慢性的な疲労を抱えていると、あなたが計画したトレーニングプログラムやコンディショニングプログラムがどんなに「効果的」であるかに関わらず、「トリクルダウン(流れ落ちる)」効果により、成果は最適状態には及ばなくなります。 例えば、強力に活性された、硬直した、適応しにくい神経系は、他のシステムの能力にも同様の低下をもたらす可能性のある広範囲の影響を持ちます。 自律神経系が無理を強いられ、交感神経系優位な状態に居続けると、ストレスホルモン過多となった血液循環が、エネルギーの修復メカニズムが効果的に働くのを遅らせるかもしれません。これにより、消化が阻害され、必要なエネルギーや栄養素の吸収が制限されることにもなりえます。 忘れないでください:全ては相互に繋がっているのです。 「交感神経支配」にあることは、免疫システムが炎症を管理する能力を弱め、軟部組織が肥大化する能力や、順応して再建する能力を低下させます。 やがてこれは、腱などの組織の退化を招き、最終的に怪我につながります。 簡潔にまとめると、過度な負担、過度なストレス、疲労にさらされた状態のために、神経系が、より「交感神経支配」状態にあればあるほど: 身体が動きを促進することに対して非効率的になります(例 ワークアウトや競技時のパフォーマンスが、「理想的な」生理学的環境下で可能なパフォーマンスに及ばない)。 身体が、ワークアウトセッションや競技の後に回復プロセスを促進する能力が低くなります(つまり、身体は低いレベルの疲労状態に居続け、次回のワークアウトや競技でのパフォーマンスが代償されます。またそれが長期にわたって続くと、全体的な健康にもマイナスの影響を与えます)。 身体により多くの「ストレス」がかかると、神経系への要求はより大きくなります。神経系に過度に負担をかける要因となるものには下記が含まれます: 貧しい睡眠習慣 長引く健康問題(たとえ「少し」でも) 悪い食事の選択による必要栄養素の欠如 やる気に満ち溢れた、忙しい、「絶対諦めない」タイプの人であること フィジカルトレーニング/コンディショニング(そうです、核心的な部分ではエクササイズは身体にとって「ストレス」です) 望ましくない呼吸パターン もちろん、これらストレスの環境的、行動的側面のそれぞれに取り組むことは大切ですが、もし私が、これらに「優先順位」を作らなければならないとすれば、良い呼吸のパターンを発達させることが常に最上層にくるでしょう。 回復に関して言うと、適切な呼吸は、神経系をストレスにさらされた交感神経支配状態から、より修復的な、回復基盤の副交感神経支配状態へと移行することを可能にします。結論はこうです:エクササイズや競技時に最適に動き、かつ回復を促進するためには、あなたの神経系状態を確認しなければなりません。 良いお知らせ? 呼吸は、筋肉や、他の健康及びフィットネスの構成要素のように「鍛える」ことができます。より良い呼吸のメカニクスを発達させることにより、時間とともに、無理を強いられてきた神経系の結果を望ましい状態に変えることができます。 練習をすれば、効果的な動きと回復プログラムの一部として、クライアントやアスリートは、パフォーマンスを維持するために、練習のセットの繰り返しの間に回復を促進することができるとともに、健康と長期間という観点から、より良い回復をする能力を向上することができます。
より良いパフォーマンスと回復のための呼吸ストラテジー パート2/2
動きと回復を改善する3つのシンプルな呼吸エクササイズ マイク・ロバートソンです。 私は、今しがたパフォーマンスとリカバリーにおいて呼吸がどれほど大切かについて話し終えたビルと共に、IFASTの共同経営者です。 私はおよそ18年前に健康及びフィットネス業界での仕事を始めました。これまでに、すべてのメジャースポーツのプロアスリートと働く機会に恵まれ、彼らのパフォーマンス、及び健康を、次のレベルへと進める手助けをしてきました。 でも、堅苦しいことはこのくらいにして、みなさんがここにいる真の理由に戻りましょう:動きを改善し、回復を促進するための呼吸の使い方です。 ビルは、なぜ適切な呼吸のメカニクスが、最適な動きと回復にそれほど重要なのかをとても上手に説明してくれました。 次のステップは、適切な呼吸のメカニクスを教えるために、あなたのプログラムに特定のエクササイズを取り入れることです。不思議に聞こえるかもしれませんが、多くの人々 -あなたが見ているクライアントやアスリートを含め- は、効果的ではない呼吸をしています(少なくとも理想的ではない)。 ビルが上述したように、良いニュースは、呼吸は、健康、フィットネス、パフォーマンスプログラムなどの構成要素と同様に、鍛えることができるということです。 ここで、今すぐに始められるエクササイズを紹介します。 ベア呼吸 床に四つん這いになる 手は肩の真下、膝は股関節の真下に位置する 床から身体を離すように、肩甲骨の間にストレッチを感じるまで、腕を通じて床を押す 脛が床と平行になるように、床から膝を持ち上げる このポジションを保ち、鼻から吸って、口から吐く、充分な呼吸を3-5回する 数秒間、リラックスして自然な呼吸をする 上記を3-5回繰り返す 壁呼吸 壁を背にして立ち、足は腰幅に開いて、壁から10-12インチ(25-30cmくらいのところに位置する) 骨盤を後傾し、壁に対して下背部を平らにする 上背部を前方へ丸めながら、両手を前方へ最大限伸ばす このポジションを保ちながら、3-5回呼吸をし、リラックスする 3-5回繰り返す 前腕プランク呼吸 床にうつ伏せになる 手のひらを床に向けて、人差し指と親指でダイアモンドの形を作るようにして、手を顔の下に位置する。 前腕を通じて押し、肩を前に押して、胸とお腹を床から持ち上げ、体重が前腕と恥骨のみに乗っているようにする この上向き姿勢を保ちながら、鼻から吸って、口から吐く、完全な呼吸を3-5回します スタートポジションに戻る これを3-5回繰り返す。 これらの回復呼吸エクササイズにおける素晴らしい点は、ほぼいつでも行うことができることです。 これらのエクササイズは、動的なウォームアップやクールダウンに取り入れるのも非常に簡単で、ジムの以外の場所、自宅でも行うことができます。ビルが述べたように、こういった種類の呼吸を数分行うと、副交感神経系を活性することができるため、より緩んで、リラックスした状態になることに気がつくでしょう。 日常のルーティンの中にこれらのエクササイズをいくつか組入れてみてください。すぐに違いを感じることができるでしょう。
エクササイズのサプリメント−使う価値はあるのか?
プレワークアウト...クレアチン...BCAAs...プロテインパウダー...現在の市場で入手可能なエクササイズサプリメントのリストは、すごいことになっています−私たちにとってさえ!筋肉を増やす、より早く走れる、より高く飛べる、より重いものを持ち上げる、より早く回復する、そしてそれらの間にあるものすべての実現を約束するサプリメントを販売することで、数億円稼ぐことができます。しかし、ラベルや販売員が、そのサプリメントはあなたに効果があるでしょうと言っているからといって、本当に効果があるのでしょうか?現在よく使われている幾つかのエクササイズサプリメントについての最近の研究を検証していきましょう。 市場には様々な異なった種類のプレワークアウト製品があります−すべての商品は、エネルギーレベルが上がる、集中力が増す、筋肉の成長と回復を向上させる、そして/あるいは、持久力を向上させる、あるいは、これらのどれかの組み合わせを向上させると主張しています。プレワークアウト製品はカフェイン、様々な種類のアミノ酸、そして/あるいは、様々な種類のビタミン/ミネラルを含んでいることが多いようです。 バラエティー豊富でバランスのとれた食事を摂取していれば、プレワークアウトのサプリメントからさらにビタミン、あるいは、ミネラルは摂る必要は全くありません。 カフェインは、世界中で最も広く使われている刺激物です。カフェインは中枢神経系を刺激し、注意力の増強、筋収縮の向上、運動スキルの向上を促します。カフェインを摂取することで、エクササイズをより楽に感じさせる、疲労感を遅延させる、そして、短時間高強度のエクササイズパフォーマンスを向上させる可能性があります。本来カフェインは、コーヒー、チョコレート、いくつかの種類のお茶に含まれています。エクササイズ前、あるいは最中に食品、あるいは、サプリメントからカフェインを摂取することができます。カフェインは人それぞれに異なった影響を与えるため、それが役にたつのかどうか、あるいは、不適切な副作用が出るのかどうかを判断するために、競技前に試しておくことを勧めます。プレワークアウトやカプセルのようなサプリメントは、消化吸収が早く、素早く効果を感じたり、より強く効果が出る可能性もあることを認識しておくことが重要です。 プレワークアウトのサプリメントに含まれるアミノ酸は、全てではないですが、ほとんどは提示されている効果を支持する十分な科学的根拠がありません。 分岐鎖アミノ酸(BCAAs)は3つのアミノ酸を含みます:ロイシン、イソロイシン、バリン。これらのアミノ酸は必須アミノ酸であり、人体では作り出すことができず、肉、鶏肉、魚、卵、乳製品、ダイズ食品、マメ科植物、ナッツ類、タネ類のような食品から摂取する必要があります。これらのアミノ酸は肝臓で最初に代謝される必要がなく、筋肉で直接代謝することができる点で独特です。BCAAsは、筋肉の成長を促促、させ、筋肉の分解を予防し、エクササイズ起因性のダメージを減少させ、疲労を予防することでパフォーマンスを助けることができるという仮説が立てられています。結果として、BCAAsはサプリメント店、ジム、あるいは、それらが有益であると感じる個人の間で広く奨励されています。しかし、これら公表されている効果を結論づける研究は、現在ありません。BCAAサプリメントによる有害な副作用もまた報告されていません。 クレアチン・モノハイドレートは肝臓で生成される有機化合物であり、筋細胞に貯蔵されます。クレアチンを多く含む食品源には肉、鶏肉、魚のような動物性食品が含まれます。クレアチンは、除脂肪筋肉量を増加させ、ウエイトリフティングやスプリントのような、短期爆発的な(10−30秒)エネルギーが必要なスポーツのパフォーマンスを向上させ得るというエビデンスがあります。しかし、長距離のスイミング、ランニング、サイクリングのような、長時間のスポーツにおけるパフォーマンスでの効果は発見されていません。 全ての人がクレアチンのサプリメントに対して反応し、その効果を感じるわけではありません。ベジタリアンは、動物由来のたんぱく質の摂取量が低いという理由により、クレアチンサプリメントからより高い効能を経験するかもしれません。クレアチンサプリメントの副作用は、膨満感、筋痙攣、吐き気、そして/あるいは、下痢といったものが含まれます。別の副作用として体重増量があります(筋量増加と水分保留の混合によって)が、これはクレアチンサプリメントの期待している結果であることが多いようです。妊娠、あるいは、授乳中であれば、クレアチンサプリメントを使うことは賢明ではありません。 タンパク質は筋組織を維持、修復、構築するために重要な栄養素になります。エクササイズ後のみでなく、1日を通して、十分なたんぱく質を確実に摂取することが重要になります。また、摂取したタンパク質がエネルギー源としてではなく筋肉を成長させることに使われるように、十分な総量のカロリーと炭水化物を確実に摂取することが重要です。 身体が、筋肉の修復と成長に使用できるたんぱく質の量には限度があることを覚えておくことは重要です。過剰な量のたんぱく質を摂取することが、際限のない筋肉の成長になるわけではありません!事実、身体が必要とする以上のタンパク質を摂取することは、実際には余分なカロリーを摂取することになり、結果として脂肪組織の増加に繋がるかもしれません。 理想的なタンパク質源は、肉、魚、鶏肉、乳製品、大豆食品、卵、マメ科植物、ナッツ類、タネ類のような栄養価の高い自然食品になるでしょう。なぜなら、それらの食品は他の栄養素も豊富に含んでいるからです。しかし、プロテインパウダーは、手軽で活動中にたんぱく質源が必要な時に有益となります。市場では、幅広く様々な種類のプロテインパウダーが入手可能です:ホエイ、カゼインから大豆、米、ヘンプ、エンドウマメからクリケットプロテインパウダーまであります。ほとんどの研究ではホエイとカゼインに焦点を当てていて、最新のエビデンスによると、ホエイプロテインは身体に最も早く吸収されることが示されています。しかし、どのたんぱく質源であれ効果的に筋肉の修復と成長を刺激します。 安全性と効果の確証を持っているサプリメントは、少ししかありません。市場で入手できる製品の多くは、公表されている効果を支持する十分なエビデンスに欠けていますが、魅力的なマーケティングと誇張された宣伝文句で未だに広く販売されています。販売員や製品で謳われている宣伝文句は(比喩的に)話半分で聞くことが最善です。良い自問は、“これで誰が利益を得るのか?”ということでしょう。 スポーツサプリメントのトライアルを決めるのであれば、常に自然製品番号(NPN)、あるいは医薬品識別番号(DIN)を探すようにしてください。これらの番号は、その製品の安全性と品質をHealth Canadaがチェックしたということを意味しています。しかし、どんな新しいサプリメントを始める時でも、それがあなたにとって適切であり、安全であることを確証するためにヘルスケアプロバイダーに確認することが常に最善になります。 結局のところ、良いトレーニング、健康な食餌、そして適切な休息に勝るサプリメントは存在しないのです! 参照 Sports Nutrition Evidence Summary (Practice-based Evidence in Nutrition) Sports Nutrition - Creatine Background (Practice-based Evidence in Nutrition) Branched Chain Amino Acids (Sports Dietitians Australia)
コンペティションのための最善なテーパリング方法とは? パート1/2
コンペティションのためのテーパリングは、最近まで研究者によりあまり研究が成されていなかったという理由からか、科学というよりもむしろ芸術のように思われている。しかし現在は、テーパリングや、様々なタイプのアスリートにおいてパフォーマンスを最大に引き出すための計画に関する論文が数多く存在している。 この総説は、テーパリングに関する研究内容を理解するための有益な枠組みを提供する。最新の情報を提供するため、この総説には最近の系統的レビューからの結論も含むこととした。 研究論文: コンペティション前のテーパリング戦略に関する科学的基本原理、ムジカ&パディラ、スポーツ&サイエンス、メディスン&サイエンス2003年 背景 テーパリングとは、重要なコンペティション前の最終週において、激しいトレーニングにより蓄積された疲労の影響を減少するために、トレーニング量やトレーニング強度、もしくはその両方を減少させることである。 正しく行えば、様々な有益な生理的変化が起こり、著しいパフォーマンスの向上へとつながる。間違った方法で行うと有害となり得る。テーパリングの際に起こる生理的変化には下記のものが含まれる。 最大酸素摂取量の増加 (e.g. Banister, 1999 and Neary, 1992) 無酸素性作業閾値の上昇 (e.g. Zarkadas, 1995) 筋パワーの増加 (Johns, 1992) 酸化酵素の増加 (Neary, 1992) 筋グリコーゲンの増加 (Neary, 1992) ヘモグロビン値とヘマトクリット値の上昇 (Mujika, 1998 and Mujika, 2000) テストステロンの増加とコルチゾールの減少 (Mujika, 2000 and Mujika, 2002) 筋力の増加 (Martin, 1994) タイプIIa筋繊維のサイズ、強度、速度、パワーの増加 (Trappe, 2001) 睡眠の質の変化 (Taylor, 1997) 気分の変化 (Raglin, 1996) これらの生理的変化のほとんどは、テーパーの有益な効果に貢献すると考えられているが、それぞれの変数要素のカテゴリーが一般的に観察されるパフォーマンスの向上にどれほど貢献しているかは明らかではない。 テーパーの3つの主なタイプは、段階的なテーパー、直線形のテーパー、急激なテーパーである。段階的なテーパーにおいては急激なトレーニング仕事量(ワークアウトの量、強度、頻度の組み合わせ)の減少が起こる。直線形のテーパーでは、トレーニング仕事量が直線的に減少する。 急激なテーパーでは、仕事量は非直線形で減少し、テーパーの早い時期に仕事量が加速的に減少する。テーパーはトレーニング仕事量の減少速度によっても定義することができる。直線形の減少、急激な減少共に、仕事量の減少速度によりさらに調節することが可能である。 *** 評論家たちは何を発見したか? トレーニング強度を維持することの重要性 持久系アスリートに対して評論家たちは、トレーニングされている選手と (e.g. Hickson, 1985) されていない選手の (e.g. Shepley, 1992) 両方において、有酸素プログラム後の最大酸素摂取量向上を維持するためにはトレーニング強度を維持することが重要であると発見した。 ストレングス&パワーアスリートに対しては、かなり少数の研究しかなされてはいないが、強度を維持することによる効果は同様なようである (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 下記のグラフは、4週間に渡る少量で高強度のテーパリングによる、上半身と下半身の強度とパワーに対する有益な効果を示している。 研究者たちは、テーパーを行う際に強度を維持(もしくは増加)する重要な役割に対する様々なメカニズムを提案した。少量で高強度でのテーパーに関するこれらの要素には、全血液量、赤血球容積、クエン酸シンターゼ活動(酸化容量の指針)、筋グリコーゲン濃度、テストステロン値が含まれる (e.g. Shepley, 1992 and Mujika, 2002)。 この点において、テストステロンが垂直跳びのような下半身の爆発的なパフォーマンスと良好な相関関係にあるということは興味深い (e.g. Cardinale and Stone, 2002)。 *** トレーニング量を減少させることの重要性 評論家たちは、持久系アスリートにおいては、テーパーを通じてトレーニング量を減少させることはトレーニング量を加減するよりもパフォーマンスの向上に対して良いということを発見した。しかし、パフォーマンスを向上させるために必要であるトレーニング量の減少度合いに関しては、多少驚きがあるかもしれない。 トレーニングを積んでいる持久走の選手 (e.g. Houmard, 1990)と自転車競技の選手 (Rietjiens, 2002) において、50−70%のトレーニング量の減少はパフォーマンスを維持もしくは多少向上させるように思われるのに対し、約85%の減少はパフォーマンスの著しい向上につながるようである (Mujika, 2002)。 しかしながら、競技選手におけるテーパリングの効果についての後の系統的レビューとメタ分析において、最適なトレーニングの減少量は実際にはこれよりもかなり少なく、テーパーを行う前の量の41−60%である、とバスキット(2007年)が発見したことは注目すべきことである。 今までに行われたこれらの研究は中レベルや低レベルのトレーニング量との比較をしておらず、脱トレーニングとの比較しか行っていないため、ストレングス&パワーアスリートにおいてのトレーニング量減少の効果を評価するのは困難である (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 ***
コンペティションのための最善なテーパリング方法とは? パート2/2
評論家たちは何を発見したか?(続き) トレーニング頻度を維持することの重要性 評論家たちは、持久系のアスリートに対して有酸素トレーニングの適応は、テーパリング前の頻度の30−50%というかなり低い頻度で維持できることを報告した (e.g. Houmard, 1990)。しかしながら彼らは、それよりもかなり高い頻度でのトレーニングもまた、パフォーマンスの向上をもたらすと指摘している (e.g. Mujika, 2002)。 ストレングストレーニングを行う人において、レジスタンストレーニングの適応も同様に、テーパー前の値の33−67%というかなり低い頻度のトレーニングで維持できるようである (e.g. Graves, 1988)。しかしながら、この研究での被験者は高いレベルでのアスリートではなかったようである。 *** テーパーの期間を決定する際の重要な個体性 アスリートから頻繁に聞かれるテーパーに関する質問の一つは、テーパーの期間の長さである。評論家たちはこの期間に関する研究は限られていると観察している。さらにこれはアスリートによって個人差があるようである (e.g. Mujika, 1996)。 この総評には含まれていないが、後の研究では、エリートアスリートにおいて最適なトレーニングの減少特性はテーパー前に行っていたトレーニングの仕事量によって決まると発見されている (e.g. Mujika and Busso, 2008)。この研究から、無理をしすぎたトレーニングは通常のトレーニングよりもより長いテーパー期間を必要とすることがわかっている。しかし、この研究で確認された最適な期間は2−3週間であり、これはアスリートのテーパーを評価するための有益な指針となるかもしれない。 後の競技選手におけるテーパリングの効果に関する系統的レビューとメタ分析においてバスキット (2007) は、テーパーの有益な効果が発揮されるか、悪影響を回避するかの境界線は8−14日の期間であるということを発見した。 *** テーパーはどの程度パフォーマンスの向上を可能にするか? もちろん正しく行われたテーパーによるパフォーマンスの向上が微々たるものであれば、上記のポイントは興味をそそるものではない。しかし幸運なことにそうではなく、評論家は標準的なパフォーマンスの向上率は3%程(0.5-6.0%の範囲)であると示唆している。 後の系統的レビューとメタ分析においてバスキット (2007) は、競技選手を調査した27の選択された研究結果によると、パフォーマンスの向上率は-2.3%から8.9%の範囲であり、平均の向上率は2%であったと発見している。 これらの結果は魅力的ではないかもしれないが、2-3%の差は一般的には、持久系のスポーツにおいて表彰台に上がるか上がらないかの違いよりも大きいということに留意すべきである。(例として、トレウィン (2004) はオリンピックでの10名のトップ競泳選手において約0.6%の違いを発見している)これは選手が競技において戦うためには正しいテーパリングが必要不可欠であると示唆している。 *** 制限要素は何か? この総評の主な制限要素は、論文が異なるスポーツを基に整理されていなかったことである。ゆえに主に持久系スポーツに関しての研究が考察されていたが、スポーツよる区別がされておらず、ランニングの研究が自転車競技、スイミング、ロウイングに関する研究と一緒に報告されていた。さらに総評は、トレーニングされている人とされていない人によって行われた研究や、異なる力量のアスリートによって行われた研究を注意深く識別していないものであった。 *** 実践的な意義は何か? ストレングス&コンディショニングコーチに対して: テーパー中にトレーニング強度は落とすべきではない。むしろトレーニング強度を維持するか、もしくは増加するべきである。 テーパーの際、テーパー前の量の60%程の著しいトレーニング量の減少が必要である。 テーパー中にトレーニング頻度を減少させることは、パフォーマンスの維持に繋がるが、高いレベルでのトレーニング頻度を保つことは更なるパフォーマンスの向上につながる可能性がある。 テーパーの期間の長さは決定するのが困難であり、かなりの個人差がある可能性がある。また、アスリートがトレーニングをしすぎている場合にはより長くする必要があるかもしれない。しかしテーパーの期間としてはおおよそ2週間がよい指針とされている。 テーパーは正しく行えば、競技選手において平均2-3%程パフォーマンスを向上させることができ、これは、この集団においては大きな違いである。これは大切な競技の前にアスリートとコーチは非常に真剣にテーパーに取り組むべきであるということを示唆している。
ピーキング
“ピーキング”にとって考慮すべき最も重要なことは、アスリートがピークに到達するまでに“すでにいろいろ経験してきた”のを必要とすることへの理解です。そして私が意味するのは、アスリートは、今ここでいろいろな経験をしているということを必要としているということ。誰かが、低いレベルの馬鹿げたリフトやイベントのためにピーキングをしていると私に伝えてくることほど、頭にくることは他にありません。この“ピーキング”ということについて討論を始めることができるその前に、アスリートはピラミッドをある程度登っていなければならないのです。言い換えれば、200パウンドのベンチプレスのためのピーキングはしません:単純にしばらくベンチプレスを行い、誰かにスポットをお願いし、成功させるのです。ほとんどコメントが想像できないような1,000パウンドのベンチプレスということになれば、何らかのピーキングが要求されるでしょう。 ピーキングにとっての最も素晴らしいリソースは、この質問に単に答えることです:“以前はどのように行っていたか?”私は文字通り、異例なパフォーマンスの手がかりを探す探鉱者のように自分の日記を“掘り返し”ます。そして他の成功した冒険の方向性に従い、それらを次のゴールに応用します。ここに衝撃的なことは何もないことは分かっていますが、ほとんど人はそうしていないのです。ですから、ピーキングのルール1があるとすれば、それはこれになるでしょう:競う。そして、自分の日記と一枚の紙とともにそこに座り、成功したものとしなかったものを書き出します。 誰もがこのアドバイスを、メンタル的に無視します。“真実”を探すためにこの部分を飛ばす人々を見てきました。さあどうぞ前に進んでください、あなた達は皆戻ってきてしまうと私は確信しています。では、もう一度始めましょう:私がピーキングから得たすべての素晴らしいレッスンは、私のアスリート、あるいは、自身の経験、そして、何がうまくいったかを記録するために時間を費やす規律からきています。ここに100万ドルのヒントがあります:競技会に持っていく物のリストを作ります。聞いてください、私はここで自分自身のアドバイスに従ってないんですよ。何年も前に、私は全米ウエイトリフティング大会に行き、妻のリフティングカードを持っていきました。出発前に二重の確認をせず、問題が発覚した時、私はルイジアナで裸で体重計の上にいました。私が指導しているアスリートの一人であるポール・ノースウェイは、チェックリストをバッグにラミネート加工しているのですが、大会の前に一度すべて取り出し、再チェックし、大会前日にすべて詰め直します。 私は何年も前に、大会の3-7日前に荷造りをすることが、コンピューターで多くのパーセントをプログラムするよりも実際高く成功が保証されるということを発見しました。そうする事で、チャンピオンモードにより早期に入り、このちょっとした実践が、アスリートを多くの人が試合当日に陥る“モンキーマインド”ではなく“大会”モードに移行させ始めるのだと考えます。 つまり、ピーキング101には2つの基本原則が含まれます:一つは、自分自身の経験から学ぶこと。私の経験は、あなたの経験とは異なります。私は、いろいろなことに反応し、準備するためにあれやこれを行う必要があります。あなたは、これを自分自身で見つけ出す必要があるのです。例えば、私は、リフティングの前にチェスの本を読むことが、プラットフォーム上で本当に助けてくれることを発見しました。分析の深さは、身体的に私をリラックスさせ、マインドを遠くにおかせてくれるようです。競技を始めるときには、よりクリアになっているようです。これは、あなたには効果がないかもしれません。ピーキングの2つめの原則は、競技会の朝よりかなり前に、用具一式、移動の問題、栄養上のニーズ、その他細かいところまで準備をしておくことです。気づいてください、私は回数やセット数に関して一度も言及していません。おそらく今後もしないでしょう。 ピーキングの鍵は、常にメンタルなものなのです。投擲についてこんなフレーズがあります:長いウォームアップは毒である!言い換えると、試合前のウォームアップで良い投擲をすることは、試合中自分自身の首を締める良い方法になってしまうということです。そのため、私は良い投擲をしないことを確実にするためのウォームアップを計画します。アスリートにも同じことを教えてきました:身体を温め、メンタルを準備し、ウォームアップを勝とうとすること以外の方法でエゴを充足させるドリルや投擲を行います。はっきり言って、多くの人々は、勝てる試合を手放してしまっていると思います。これはやめましょう。 ピーキングのメンタル面には、数多くの小さなステップがあります。例えば、アメリカの陸上競技会では、アスリートは集まって椅子に座らされ、音楽を聞くことやコーチングを受けることは許されず、トラックに入場します。そのため、なぜ朝まで待って、アスリートにそのことを知らせるのでしょうか?私はそのことについて毎日、毎週話していますし、すべての重要過ぎる関係者達を“からかう”ための戦略すら出てきます。例えば、アスリートが入場する時、私の指導する投擲者の一人はバンドのメンバーのように歩くことを決めました。数分後、他の競技者が今日どこにいるのか忘れたかのように見える中で、彼女は自分自身の古い個人記録を破りました。 ピーキングについての私の問題は、子育てという考え方で表現するほうが実際にはより近いかもしれません。もしある晩、私が本当に疲れている時に、娘が私に向かって嘔吐したとしても、ただ単に“ごめん、今日は死ぬほどつかれているんだ。でも次の金曜日にはすごいパパになることを約束するよ”とは言えないでしょう。マジで、大会、あるいは競技会は今日であり、出場して、競うのです。 長くゲームをプレーすればするほど、ピーキング戦略についてより多く知ることになります。私は40代になって、何か重要なことに向かう最後の2週間が極めて重要であることを発見しました。これは、負荷や量という観点が重要なのではなく、“何も台無しにしない”ということが重要なのです。言い換えると、本当に軽いおもりと、直前に対処しうる弱点の正しい評価を含む、本当に微細な技術トレーニングが私の必要としているすべてであることが分かったのです。もちろん、自身の日記を研究することでこのことを学びましたが、学びは明白です:いくつかの愚かな決断で、すべてのハードワークを台無しにして、何か重要なことの最後の数日のところで失敗しないでください。結婚式前のバチェラー・パーティーの様に、タイミングの悪さのために、自分を台無しにしないでください。