呼吸に関する考察
人は呼吸なしでは生きていくことはできません。生命の維持のために必須な呼吸は、ガス交換の他にもとても重要な機能を担っています。呼吸に関する考え方には多種多様なものがありますが、それらには数多くの共通項があるのも間違いありません。キネティコスのコンテンツ提供者が紹介する呼吸への考えをチェックしてみてください。呼吸への考えや見方が少し変わるかもしれません。
スピークイージーの呼吸へのアプローチ
自然に鼻から呼吸をすること、肩で呼吸をするのではなくお腹が膨らむように横隔膜がしっかりと働いた呼吸をすること。簡単なようで上手くできていないかもしれない呼吸の重要性について、コーチ・フューリーがわかりやすく語りかけてくれます。
腹式呼吸をやめよう
お腹を膨らませて行う腹式呼吸は望ましくない!?だとすればどのような呼吸方法がより望ましいのでしょうか?マイク・ロバートソンが呼吸のタイミングの再トレーニング方法をご紹介します。
腹式呼吸に関する深い考え
いわゆる横隔膜呼吸と腹式呼吸は同じことを意味しているのでしょうか?前に撮影したビデオが、どういうわけか最近数多く視聴され、さらにポジティブ、ネガティブ両方のかなりのコメントを受け取っているストレングスコーチのマイク・ロバートソンが、ビデオの背景にある考え方をシェアします。
気道をクリアに保つ
COVID-19の爆発的感染拡大の影響を受けているニューヨークに在住のDr.キャシー・ドゥーリーから、肺や気道をクリアに保ちストレス反応を低下させるためにも、呼吸をしっかりと行うことがいかに大切かというメッセージを込めたビデオが届いています。皆さんも是非ご自身の呼吸に注目をしてみてください。
口呼吸と鼻呼吸
9月の最初の週末に「呼吸のメディテーション」をテーマにした4時間のウェビナー配信が決定しているDr.キャシー・ドゥーリーが、鼻呼吸ができることの重要性について、そして鼻呼吸をより容易に行うための具体的な方法に関してシェアをしたビデオをご覧ください。今すぐ始められること、沢山ありそうです。
呼吸:鼻呼吸はなぜ必要か
こんにちは! 宮崎産アスレティックトレーナーの近藤です。 ここ数回にわたり呼吸についての考察をしていますが(前回は“呼吸回数“についてでした。前回の内容を簡単にまとめると、”呼吸回数が多ければ多いほど身体の不調が起こる”です) そして今回は、『鼻呼吸の重要性』についてご紹介したいと思います。 鼻呼吸ができる?できない? 正しい呼吸パターンを獲得する為に大前提となることが、“鼻呼吸ができる”ことです。 ※僕は副鼻腔炎のせいで鼻呼吸が出来ないクライアント(肩の痛みでいらっしゃいました)の治療をしたことがあるのですが、呼吸へのアプローチは効果が薄かったです。 鼻から吸気が出来ないため、風船エクササイズ等も息が苦しくなってしまい頸部筋の過緊張を産む結果になってしまいました。 現在は鼻呼吸ができないクライアントには、まず鼻づまり解消のエクササイズや処置を受けてもらいます。前述の副鼻腔炎や重度の高い疾患の為どうしても鼻が通らない場合は外科手術が必要かもしれません。 口呼吸は増加傾向にある 生まれたばかりの赤ちゃんと、大半の動物も鼻呼吸をします。犬は体温調節のために口からハアハアと息をしますが大半は口を閉じています。 しかしながら、以前の投稿でお伝えしたように、主に環境的変化によって口呼吸をする人は増加しています。 睡眠中、散歩中、安静時、仕事中にも口を開けている人が以前より多くみられます。 この現象に伴い、肩こり、腰痛などの身体の痛み、花粉症などの免疫機能不全、うつ病等の精神疾患は増加傾向にあります。 これらの機能不全と口呼吸には関連があるとする研究は多くあります。 では、なぜ鼻呼吸が必要なのでしょうか? 鼻は、呼気が肺に入る前に、空気の調整をする重要な役割を果たしています。 Buteyko医師は“口呼吸から鼻呼吸へ完全に切り替えるだけで、喘息には約30%の効果がある”と述べています。 ※“鼻呼吸に切り替えない限り、喘息は治らない”とも述べています。 では、これより鼻が担っている重要な役割を具体的に述べていきたいと思います。 鼻の役割: フィルター作用:鼻の中は粘膜で覆われています。 鼻に入る細菌の4分の3は、粘液層上で除去されると推定されています。実際に、鼻の粘液自体に抗菌作用があるとされます。 鼻はまた、喘息を誘発する一般的な大きな粒子をフィルターします。 喘息を患っている方が、大きな出費をしてカーペット、カーテン、寝具を取り換えて、ほこりやチリダニの吸入を減らすためのハイテクな掃除機を購入しますが、出来るだけ鼻呼吸をするように努めることはあまりありません。 温める作用:鼻は吸った空気を温める作用があるので、気道が冷える可能性少なくなります。 鼻甲介でうずまいている空気は急速に暖められます。例えば、6度で鼻に入った空気は、鼻の奥に到達するまでには30度に温められ、気管を通過するときには体温にまで上昇します。 加湿作用:鼻には空気を湿らせる粘液層があるので脱水効果が起こりにくい。 空気量の調整:鼻の穴(鼻孔)は口よりも入り口が小さい。 そのため呼吸の際に抵抗が生じ、結果として、より静かで穏やかになり、正常な空気量となります。 ※正常な換気量は1分間に5~6L、喘息患者は~15Lほどの換気量を持っている場合が多いです。 以上が主な鼻呼吸の機能です。 どんなに正しい呼吸パターンの訓練をしても、鼻呼吸が出来なければ効果は薄いと思われます。 それでは以下に口呼吸が及ぼす影響をご紹介致します。 口呼吸は、口内の乾燥の原因となります。これは、細菌が住み着くのに理想的な環境なので、歯周病や虫歯の原因にもなります。 習慣的に口呼吸する子供は歯並びが悪くなる可能性がずっと高くなるのです。 「ここ何年かにわたり、子供たちが慢性的または習慣的に口呼吸をしていることを裏付ける証拠が増える傾向にある。口呼吸は、あごの発達、頭蓋骨の発達、噛み合わせだけでなく、子供の全身の健康状態にも悪影響を及ぼす」~Buteyko医師 口呼吸が、子供の顔やあごの発育に悪影響を及ぼすことを証明した文献は沢山あります。 それらによると、習慣的に口呼吸をする子供は不正咬合になるだろう。との事です。 ※不正咬合とは、歯の位置のずれ、または上下のあごの位置関係が正常でないことです。 いかがでしょうか?今回は鼻呼吸の重要性を再確認して頂けましたら幸いです。 最後に、鼻づまり解消の為の簡単なエクササイズを1つご紹介します。 1.どちらか片方の鼻の穴を塞ぎ、反対の鼻から空気を吸う。※両側行います。 2.空気不足を作り出すために、通っている鼻の穴を指でふさぎ、詰まっている方の鼻の穴で呼吸する。 ※通っている方の鼻の穴を閉じることで吸う空気量が減り、息苦しく感じるでしょう。 3.そのまま4分間呼吸を継続する。 ※この呼吸法の効果は、どれだけ息苦しさを感じたかによります。 この呼吸法で数分間呼吸した後、最初に詰まっていた方の鼻の穴は以前より通っているはずです。 1日4分間で済むエクササイズですので、鼻づまりにお悩みの方は是非お試しください! 最後までお付き合い頂きありがとうございました!
呼吸
今日は呼吸することについて少し時間をかけて考えてみましょう。 呼吸をするとき、あなたは呼吸中に部位全体が拡張しているように感じますか? 理想的には、そうであるべきなのです。呼吸は三次元で起こるべきです。しかし人によってはそうなりません。 クライアントが呼吸をするのを見るとき、彼らは呼吸とともに上下に動いているでしょうか?それとも内外に動いているでしょうか? 理想的には、内外に動いているべきです。私たちは上下呼吸にならなくてもいいはずなのです…少しそうなりはしますが、すべてがそうではありません。 上手に呼吸をするためには、可動性のある肋骨と可動性のある胸椎が必要です。もしその可動性を持っていなければ、どこか別のところで呼吸をしなくてはなりません。身体はたとえ何があろうと呼吸をしようとします。肋骨と胸椎が固定されるとき、何が起こるでしょうか?私たちは肋骨の一番上あるいは首で呼吸をし始めます。クライアントのうち何人の肩が、ただ呼吸をするだけのために動いているでしょうか?クライアントが座っているときに、呼吸している彼らの肩甲骨の上にあなたの手を置いたら、その手は上下に動いていくでしょう。これはよくありません。 理想的には、少しの横方向の動きが見られます。一定数のクライアントが当てはまるでしょうが、もし挙上しか見られないのであれば、何かがおかしいのです。 呼吸は私たちの行動や情動により影響され、そして呼吸が私たちの行動や情動に影響を与えもします。呼吸は自然な活動ですが、呼吸は感情によって変化します。呼吸の活動―ガス交換―は、私たちがそのことを考えることなく起こっています。もし痛みを抱えていれば、それが私たちの呼吸を変化させます。悪い姿勢のようなことが呼吸を変化させる原因にもなり、またその反対に、呼吸の問題が悪い姿勢の原因となることもあります。 呼吸はガスの交換です。身体は酸素を蓄えておくことができないため、私たちは常に酸素を交換しなくてはなりません。幸運なことに、これは私たちが考えなくてもよいことです。自動的に起こります。私たちが注目することのない、シンプルなガス交換です。呼吸は身体の酸素需要に左右されますーエクササイズをするとき、活動によって酸素レベルのニーズは異なります。 呼吸は、私たちが何をしているかによっても影響を受けますーエクササイズをしているか、あるいは座っていたり休んでいるか。呼吸は私たちが怒っている、不安になっている、あるいは幸せであるときに影響されることもあります。マインドは呼吸に影響を及ぼし、そして呼吸はマインドに影響を与えます。 考慮すべき異なる呼吸パターンが存在します。もしあなたがただ座っていて、呼吸をするのに首の筋肉を使わなくてはならないなら、これは恐らく問題でしょう。 あなたが心拍数を最大心拍数の75―90%まで上げるとき、呼吸は変化します。心拍数がそれほど高くなるときには、胸式呼吸をするでしょう。呼吸パターンについて話すと、胸式呼吸が間違っているということではありません;人がリラックスして座っているときに胸式呼吸をしているということが間違っているだけなのです。高強度でワークアウトしているとき、それは息をするための素晴らしい戦略です。 私たちには肋骨呼吸及び横隔膜呼吸があります;どちらか一方が正しいあるいは間違っているということはありません。どちらにもバリエーションがあり、どちらが最適なのかは、その瞬間私たちが何をしているかによります。 呼吸を一つの運動療法として考えてください。私が呼吸について話すとき、それはRDLまたは片脚スクワットについて話していることと何の違いもありません。私の職場では、目に見えている…あるいは見えていない動作パターンを促進するか抑制するかのどちらかの目的で、呼吸は運動療法として使われています。 呼吸は運動を促進します。 運動は呼吸を促進します。 呼吸は安定性を促進します。 安定性は運動を促進します。 それはまさに一つの大きな輪なのです。 息を吸いこむと、肩関節屈曲及び肩甲骨の挙上が起こります。息を吐き出すと、肩甲骨の下制および相対的な腕の伸展が起こります。明らかに伸展状態にはなりませんが、屈曲はより小さくなります。 トレーニングでは時折、昔からの古い“力を入れるときに息を吐く”という考えに至りますが、それはそのような方法である必要はありません。私たちは、可動性あるいは運動を促進するために呼吸を使うことができ、呼吸を促進するために運動を用いることができるのです。何が起こっているかによって、運動を抑制あるいは促進するために呼吸を使うことができます。 呼吸は安定性を促進します。横隔膜を見ると、肋骨上に付着しているのが見えるでしょう。横隔膜は上は第6胸椎から下は第3腰椎まで付着しています;腱中心は横隔膜周辺全域に渡り付着しています。 横隔膜は、呼吸器として、そしてスタビライザーとして機能しなくてはなりません。しかし、それは脊柱に動いてほしくないということではないということを覚えておいてください。もし脊柱が動くように作られていなければ一つの長い骨になっていたでしょう。しかしそうではありません;脊柱は24個の動かせるパーツです。 脊柱は動くように作られています。肝心なのは、それが股関節あるいは肩がすることのできない何かの代償パターンとして動くように作られているのではないということです。股関節を伸展したり肩関節を屈曲したいとき、私は背中を使ってその状態にさせなくてもそれらの動きができるはずなのです。 肋骨の位置と腰椎・腸腰筋・股関節の間の直接的な解剖学的コネクションは、すべて繋がっています。これらを孤立させることはできません。呼吸をしながら、横隔膜が両面テープのようになっていると考えてください。息を吸うと、横隔膜は引き下がり、肺が酸素で膨らみます。息を吐くと、横隔膜は上に上がり、肺に二酸化炭素を放出させます。横隔膜は胸郭に影響を及ぼすだけでなく、腹部にも影響を及ぼします。それは当然ながら胸椎と腰椎に影響を及ぼすでしょう。 疑いもなく、横隔膜は私たちが呼吸トレーニングで行っていることの非常に重要な部分です。 ここで、私たちはこれらの解剖学的コネクションを改めて見てみなくてはなりません。斜角筋は第一および第二肋骨に付着し、もしある人が斜角筋を主な呼吸ツールとしてつかっているならば、上の2つの肋骨の挙上が見られるでしょう。 神経血管束は、動脈と共に腕神経叢から出ています。もしこれらの2つの脊椎が挙上されれば、これは脊椎と鎖骨の間のスペースを減らし、胸郭出口症候群の症状を生むでしょう。 スペースが減り、神経血管束を侵害することがあれば、血液循環の問題や腋下の知覚異常につながります。大抵これら斜角筋は、呼吸によって少々過活動状態になっています。心拍数を上げるとき、これらの筋肉は必要ですが、私たちが何もせず座っている間は必要としないのです。これらの筋肉を呼吸の主働筋として使っている場合、他の問題を引き起こす可能性があります。 横隔膜は肋骨から背中に渡って付着しています。悪い呼吸パターンを見かけるとき、身体はその他のニーズよりも呼吸を優先しています。ある人が安定性を失ったとしましょう。この人が呼吸をするときはいつも、背中が少し動きます。これが奇異呼吸です。 横隔膜は、腱中心から上へ下へと動かなくてはなりません。もしそれが起こらなければ、腱中心は固まり、背中と肋骨が大きく開いてしまいます。そこで私たちは腹筋を背中の筋肉、そして横隔膜と繋げるために、息を吐く動作を使うことができます。予備呼気量を使うことができるのです。腹部周辺の安定性をしっかりと促進し、横隔膜をスタビライザーとして働かせるために、あの心地の悪い呼気を使うことができるのです。 呼気動作は、スタビライザーとして、そして呼吸器としての横隔膜の機能を助けています。しかしもし腹部を固めてしまえば、うまく呼吸ができないでしょう。もし腹筋を発火させれば、横隔膜は動けません。膨らむことができないのです。 腱中心が呼吸運動中に上下運動するものとして通常に機能することができるように、横隔膜の遠位端で緊張を得る方法を見つけ出さなくてはなりません。呼吸運動に伴う安定性―呼吸でその安定性を得なくてはなりません。 酸素供給の自然な活動と呼吸以外の目的のための呼吸運動を区別しなくてはいけません。呼吸は身体の酸素需要次第です。 呼吸は私たちの行動や情動に影響を与え、私たちの活動や情動に影響されます。 呼吸作用は自動的に行われます;呼吸は意識的に行われます。 呼吸は運動を促進します。 運動は呼吸を促進します。 呼吸は安定性を促進します。
呼吸パターン障害
とても幸運なことに、先週、レオン・チャイトー氏の親密でこじんまりとしたワークショップに参加して、呼吸パターン障害への徒手療法アプローチについて議論する機会に恵まれました。私がチャイトー本人から、そして彼の広範囲に渡るボディワークからどれだけのことを学んできたかについては、ためらいなく明かしていますので、彼と共に一日を過ごした経験は、素晴らしいものでした! 下記は、みなさんとシェアする価値があると思ったコースの主要ポイントのまとめです。これらは全て、ワークショップやチャイトー氏の呼吸パターン障害についての本からの引用ですので、もっと学びたい、あるいは、効能や文献を知りたいと感じたら参考にしてみてください。 呼吸パターン障害とは何でしょうか? 米国の患者の10%が過呼吸症候群と診断されている一方、多くの人々が、わずかながらも、臨床的に重要となり得る、継続的な吸気状態にある呼吸パターン障害を持っています。 これは、低炭酸症につながります。低炭酸症とは、過呼吸により血液中の二酸化炭素が不足した状態で、やがては呼吸性アルカローシス、さらには低酸素症や組織への酸素供給の低下へと発展していきます。 これは一般に、胸式呼吸をする人に見られる症状で、こういった人々は本質的に息を吐ききれておらず、肺気量を十分に使えていません。 そのため、交感神経が優位の状態に置かれ、僅かではありますが、かなり継続的な闘争または逃走状態に陥ります。 やがて、不安や、血中pH値、筋緊張、痛覚域値、等の様々な中枢神経系、周辺神経系の症状の変化へとつながります。いくつかの症状は心臓の問題症状に似ています。 私が今回学んだ、最も興味深い情報は、呼吸と日々の行動との関連性を記した二つの研究に関係していました。 一つ目の研究では、キーボードのタイピング動作を調べ、タイピング中の斜角筋、僧帽筋の筋電図の振幅増加、胸郭と腹部の活動の減少を明らかにしました。これはおそらく、元来からある反射的動作ですが、これにより呼吸がさらに浅くなり、横隔膜の活動が減り、胸の上部や首がより活発に働きます。現代人は一日のかなりの時間をタイピングに費やしていますので、これはとても頻繁に起こっているのです。 もう一つの研究では、人々がテキストメッセージを送ったり、受け取ったりするときに、呼吸を保持し、呼吸数を高め、交感神経の優位を経験していることを示しました。 呼吸パターン障害の評価方法 ナイメーガン問診での高いスコアは、呼吸パターン障害を持つ傾向のある人々を発見するのに、感度と特異度がともに高いことが示されています。 呼吸パターンの観察 呼吸保持−人は一般に25秒から30秒間、息を保持することができます。もし15秒も保持できなければ、二酸化炭素耐性が低いことを意味しているかもしれません。 仰向け呼吸ハイローテスト−手を胸とお腹の上に置き、自然に呼吸をします−どこが最初に動きますか?どこが最も動きますか?側部への拡張と、手が上に押し上げられる動きを見てください。 呼吸の波−うつ伏せになり、自然に呼吸をします。脊椎は頭に向けて波のようなパターンで屈曲しているべきです。一体となって上昇している分節があれば、それは胸椎の制限を意味している可能性があります。 座位での側部拡張−胸郭の下部に両手を置き、呼吸中の動きを追います。左右対称の側部拡張ができているか見てください。拡張は下の動画のようであるべきです:
DNS A & B コース 参加レポート
Dynamic Neuromuscular Stabilization (以下、DNS) A & B Course - Developmental Kinesiology Approach 2015. 8. 21 – 2015. 8. 26 @北海道大学 私は過去にセミナーを通してRobbie Ohashi氏やNBAで活躍する佐藤晃一氏からDNSの考え方に基づいたトレーニングやリハビリを学ぶ機会を得たことでDNSの存在を意識するようになりました。そこからDNSの考え方をトレーニングに応用して効果を上げている人達が何を学び、何を考えてプログラムを組んでいるのかを知りたいと思うようになり、2014年にスポーツコース、そして今回A、Bコースへ参加しました。DNSは日本語では動的神経筋安定化と表現されます。コースに参加した経験や指導を受けたことがなければ、DNSはよくわからない存在かもしれません。私自身もまだまだコースの内容を整理しきれていませんが、このレポートがこれからDNSのコースに参加を考えている方、DNSに興味を持っている方の参考になれば幸いです。 【DNSとは】 ・チェコのプラハスクール、Pavel Kolar博士によって生み出された。 ・単なるテクニックではなく、運動システムにおける神経生理学的な基礎を理解するための包括的なアプローチ。 ・統合された安定化システム(Integrated Stabilizing System of the Spine(ISSS))を活性化する。 ・赤ちゃんの発達運動学をもとに評価、治療、運動療法を組み立てていくための戦略であり、単なる赤ちゃんトレーニングでは無い。 【強く印象に残っているポイント(一部、私見を含みます)】 ・理想的な呼吸とは何か?1日の呼吸数を考えれば、呼吸不全があった場合、特定の筋(呼吸補助筋である僧帽筋上部、胸鎖乳突筋など)の過活動を引き起こすことは容易に想像できる。 ・中枢神経系の運動制御は脊髄レベルから皮質下レベル、そして皮質レベルへと移行する。生後3ヶ月から12ヶ月までは皮質下の成熟によって運動制御が行われ、この時期に基本的な矢状面の安定化、分離運動、四肢の前方方向へのステップと支持機能、機能的関節中心化が発達する。エクササイズにおける発達学的肢位(Developmental Position)はこの期間内に到達する各ポジションが基本。皮質レベルでは認知機能、部分的運動パターンと全体的運動パターンの統合、リラックスできる能力が向上する。中枢神経系の運動制御における3つの段階で何が起こっているかを知ることで、なぜ一流アスリートは運動が滑らかでスムーズかを理解できる。 ・発育発達段階で生じる運動パターンの成熟は成人となっても基本的運動パターンとして使われる。 ・生後3ヶ月から4.5ヶ月の間に獲得される矢状面の安定化は機能的関節中心化(Joint Centration)を促進する。機能的関節中心化は関節面が最大接触し、最適な力の伝達を可能にする。また、最大の筋張力と負荷に耐えることを可能にする。→スポーツには欠かせない。 ・例えば、生後4.5ヶ月の背臥位の肢位で求められる安定性と協調性は、脊柱が体重負荷を維持できる姿勢を可能にしている。スクワットの方がより筋力が必要だが、4.5ヶ月肢位とスクワットのボトムポジションでは求められるものは同じである。 ・矢状面の安定化は“Proximal Stability for Distal Mobility”「遠位のモビリティのための近位のスタビリティ」に共通する考えであり、この矢状面の安定化によって、四肢の相動的な動きが可能になっている。 ・OKCにおける関節運動の固定点は近位、運動点は遠位。CKCにおける関節運動の固定点は遠位、運動点は近位。この運動パターンの違いを理解することは動きを理解する上で重要。 ・直立位は個体発生学上、若い(新しい)パターンであり、損傷を受けやすい。 ・“もし呼吸が正常化されなければ、どのような運動パターンも正常化することができない” (Karel Lewit)呼吸筋である横隔膜は、姿勢機能も持っており、負荷がかかる運動時にはこの2つの機能を満たす必要がある。 ・IAPを高めるために、重要なのは腹部を膨らませることではなく、腹壁がシリンダー形状になること。 ・腹壁がシリンダー状なっていれば吸気時には横隔膜は下がり、腹壁の筋群は遠心性収縮し、IAPを高める。ドローインでは横隔膜の下がるスペースがなくなってしまう。横隔膜は呼吸機能、姿勢機能、括約筋のマルチタスクをこなすため、欠陥が生じることが多い。 ・DNSテスト(横隔膜テスト)では、呼吸機能、姿勢機能、姿勢を維持しながら呼吸機能が働くかを評価する。 ・呼吸の必要性が増大した時、呼吸筋は姿勢制御を減少し、即時に呼吸の必要性に対応する。(Hodges et al, J Physiol 2001; Grimstone & Hodges, Exp Brain Res, 2003)→体幹部のシリンダー形状がとれない場合、IAPを高めることはできず、姿勢制御がより困難になると考えられる。 ・股関節屈曲筋は腰椎前湾も引き起こす。脊椎の後部も含む脊椎伸展筋の作用に十分な拮抗作用を持つ筋は脊椎の前側にはない。→IAPによる安定化が必要。 ・IAPを高めるには横隔膜のドーム形状になっていることが重要。吸気時には腹壁が遠心性収縮しながら活動し、横隔膜が下がってくることでIAPが高まる。下部肋骨が前突している場合、横隔膜は肋骨に引かれ、平坦化する。平坦化した状態では横隔膜の下降幅が低下するためIAPを高めにくい。腹直筋の緊張が強くお腹が凹んだ状態のままになっているケース(砂時計症候群)も同様。→PRIでいうZOA(Zone of apposition)を失った状態に共通。 ・DNSの考えではお腹をへこますDraw – Inは良いパターンではない。あくまで腹部のシリンダー形状によってIAPを高めることが重要。 ・例として円柱形を保ったペットボトルを真上から抑えるつけることを考えてみると、円柱状(シリンダー状)を保ったペットボトルはかなり強い圧力にも耐える事ができる。しかし、一部に少しでも凹みがあると上から圧力をかけた時に簡単に形が崩れてしまう。 ・脊柱が四肢の動きを作り出している筋の固定端の役割を果たしている。例えば上肢の動きにおいて肩甲帯の支持が必要だが、その役割を担う前鋸筋は腹壁の筋による胸郭の安定性が無いと正常に機能しない。同様に正常な股関節屈曲動作は腰椎伸展筋に対する腹壁の筋群による安定化作用が働いていないと正常に機能しない。 ・運動療法、トレーニングにおいて口頭指示で姿勢や運動パターンを変化させることができる場合、ボディアウェアネス、認知機能が優れている。リプログラム(運動学習)が進みやすい(予後が良い)。 ・自身の筋により発生する内的な力は、外的負荷よりも有害であることが多い。 ・骨棘や椎間板突出などの構造的な問題は手術で対応できるが、その原因は不安定性の結果であることが多い。→解決策だけでなくその原因を明らかにする必要がある。 ・どのような身体も物語を語る。“身体に語らせよ”(Vladimir Janda) 【A - Bコース、スポーツコースに参加しての感想】 ・機能的関節中心化を達成するにはどこに注意したら良いかをわかるようになってきた。手や足部への荷重のポイント、キューイングによるアライメントや筋力発揮の変化を身をもって感じることができました。 ・トレーニング種目の中にも背臥位や四つん這い、側臥位、ハーフニーリングなどのポジションを取るものがあります。これらをみるときにDNSの発達学的肢位から考えると良いフォームとは何かということに自分なりの答えを見いだせるようになってきました。DNSでも全ての発達学的肢位は自己治療に使うことができるとし、とにかく赤ちゃんの発達学的姿勢と比べてみることを薦めています。実際に指導現場に戻ると選手の動きをみる目が変わったと感じます。 ・A 、BコースとSportコースでは違う講師でしたが、それぞれの方に特徴があり、微妙に教え方も異なっていると感じました。それぞれに動作の修正の仕方やキューイングの出し方もとても参考になりました。参加者の中には何度もDNSのコースに参加される方もいます。講師による指導方法の違いもあるのですが、現場での指導を経てもう一度コースを受けにくるとまた違った学びを得られるのだと思います。 ・A 、BコースはPTの方が多く、スポーツコースはパーソナルトレーナー、AT、S&Cコーチの方が多いでした。自分の専門分野以外の方とペアを組んで実習を進めていくことも多いので、それぞれのミカタを経験することもできて良い気づきが得られます。私自身はS&Cが専門ですが、スポーツコースやExerciseコースの内容は運動指導分野で活用できる有意義な内容だと思います。呼吸が運動パターンに与える影響を知り、それを修正し、最終的には運動パターンを改善していくという流れをつかめると思います。 ・コースの中では、様々なテストやその結果からの修正の方法、エクササイズや動きのミカタを学んでいきます。興味のある方は是非コースに参加し、実際にご自分で体験されることをおすすめ致します。 【DNSを知るための参考文献】 ・Craig Liebenson, Rehabilitation of the Spine. Lippincott Williams & Wilkins, 2006 日本語の訳本『脊椎のリハビリテーション(エンタプライズ)』もありますが、現在は出版社廃業のため入手が困難です。Amazonでは出品者から手に入るかもしれません。上下巻にわかれており、Pavel Kolar博士の記事は下巻です。DNSコースの復習としても大変役立つと思います。Craig Liebenson、Stuart McGill、Vladimir Janda、Paul Hodges、Karel Lewitなど、他にも多彩なメンバーがそれぞれの立場で執筆をしています。 ・Craig Liebenson, Functional Training Handbook. Lippincott Williams & Wilkins, 2012 世界的にも有名な研究者、ストレングスコーチ、トレーナーなど錚々たるメンバーが分担執筆した本です。Pavel Kolar博士によるDNSの紹介はもちろんCraig Liebenson、NBAで活躍する佐藤晃一さん、キネティコスでもお馴染みのSue Falsone、Eric Cressey、Michael Boyleなど業界を牽引するメンバーが多数執筆しています。概論だけでなく、様々なスポーツにおけるトレーニングやリハビリテーションのアイデアが多数あり、興味深い内容になっています。 ・Clare Frank et al., Dynamic Neuromuscular Stabilization & Sports Rehabilitation. Int J Sports Phys Ther. 2013 Feb; 8(1): 62–73. International Journal of Physical Therapy という学術誌に掲載されたClinical Commentary(解説)記事です。DNSコースインストラクターも担当するClare Frankらの執筆です。DNSのHPで全文を見ることができます。 【DNS・プラハスクールのウェブサイト】 http://www.rehabps.com/REHABILITATION/Home.html ※Kinetikosアドバイザーである大貫さんが2015/10/03(土)にDNSとPRIのコンセプトに基づく呼吸のセミナーを開催されるそうです。興味のある方は参加を検討されてはいかがでしょうか。