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怪我や手術からのトレーニング復帰

怪我や手術後のスポーツ復帰、スポーツ現場ならではの考え方、機能的なアプローチなど、理学療法士の知識を活かしてスポーツに関わりたい方にとって役立つ情報を集めています。クリニック以外の場所で活躍したいと考えている理学療法士の方必見のプレイリストです。ぜひ一度ご覧ください。

リハビリテーション

怪我からストレングストレーニングへの復帰

怪我をした人々を診る機会や指導する機会があれば、必ず患者やクライアントから「怪我をした後はどのように運動を再開していくのか」という質問を受ける時があるでしょう。すでにフィットネスや筋力トレーニングの経験がある人ならば、怪我の程度によっては、トレーニングへの復帰はそんなに難しいものではないかもしれません。このようなクライアントには、単に個人それぞれの怪我に対するプログラムの調整の仕方を示す、道しるべがあれば良いのかもしれませんが、同時に、私はこの機会を、クライアントに理想のプログラムとはどのようなものかを教える場としても利用しています。 しかし、実際にはフィットネスや筋力トレーニングの経験がない人が、怪我をしたことを運動を始めるための発奮剤として使うことの方がよくあります。素晴らしいことですね。 これから筋力トレーニングを始める人や、怪我から復帰してプログラムを始めるという人にはまず、プログラムを注意深く吟味して、それぞれの怪我に合わせてプログラムを調節してあげることをお薦めします。 良いストレングストレーニングの要素 私はまず、プログラムの総体的な構成要素をみて、フィットネスや筋力トレーニングの評価をします。準備、実践、トレーニングからの回復の、どの側面においても成功するのに必要な一定の要素が含まれていることを確認するのです。 筋力トレーニングの初心者には、これが、成功して運動を続けることができるか、失敗してソファに戻ってだらけてしまうかの明暗をわけるともいえます。 これは怪我からトレーニングへの復帰を目指す人にとってはさらに大切です。プログラムが過度すぎれば、怪我を再発させたくないと思うのは当然です。 私がプログラムに求める要素は以下の通りです。 自己筋膜リリーステクニックとダイナミックなモビリティーエクササイズで構成された、良いウォームアップ トレーニング中に適切に発火できるように、特定の筋群を”活性化”するエクササイズシリーズ レジスタンストレーニングを主としながら、同時に可動性とコーディネーションも向上できるエクササイズの組み合わせ 栄養情報を含む適切な組織の再生戦略 必要性、目標、経験に応じて、個々にとって適切なプログラムを作るための選択オプション 次に私が評価するのは、エクササイズの選択や、順序、ピリオダイゼーションなど、プログラムそのものです。2週間もの間、歩けなくなってしまうような、馬鹿げたエクササイズや構成を含んだプログラムは、筋力ストレーニングをこれから始める人や、怪我からの復帰段階にある人々にとって逆効果です。 残念なことに、世間に出回っている人気エクササイズの中には、利点よりも害をもたらしているものも多くあります。エクササイズが効果的であると同時に不利益を起こさないことを確かめるのに、単純なリグレッション(後退)とプログレッション(漸進)を応用することができます。これには純粋に、技術、運動科学の知識、そして、その人に何が効果があり何が効果がないのか、の理解が必要となります。 本音をいえば、この時点でのこのようなグループの人々のプログラムはシンプルであってほしいと思います。もし派手なエクササイズバリエーションによってプログラムが過度に見えてしまえば、それは怪我からの復帰を試みている人にとって最善なプログラムではないでしょう。

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術後期間におけるトレーニングについて論証する

マサチューセッツ州かフロリダ州にあるクレッシースポーツパフォーマンスのどちらかで、1日を過ごすことになるのであれば、必ず驚かされるかもしれないことを目撃するでしょう:術後すぐであるにも関わらず、アスリートがトレーニングをしているのです。トミージョン手術から膝関節置換術にいたるすべての術後において、定期的にアスリートが私たちのところに紹介されてきます。彼らは、松葉杖をついていたり、アンクルブーツを使用していたり、肘のブレースをしていたり、肩のスリングで腕を吊っていたり、あるいは、腰をブレースで固定していることもあるでしょう。術後のアスリートと仕事をすることは、我々にとってかなりの得意分野になってきています;執刀医やリハビリテーション専門家と手を取り合って取り組むことで、アスリート達に“短期的な制限”があるにも関わらず、素晴らしいトレーニング効果を提供できることを確信しています。 残念なことに、この期間に、過度に慎重である超保守的なセラピストや医師に出会ってしまうアスリートもいるでしょう。確かにこの期間は、修復した場所が動きや直接的な圧力に対して脆弱なだけではなく、最初の数週間は感染症に冒されるリスクもあるため、非常に重要です。しかし、私の意見としては、3-4ヶ月も完全にエクササイズをしないで、ただ“リハビリ”をする(これは以前にも聞いたことがありますが)ようアスリートに伝えることは全く不必要だと思います。 このことを念頭において、術後期間にストレングス・コンディショニングトレーニングを戦略的に実施することが非常に重要であると私が考える、6つの理由について概説していきたいと思います。 1. 選手に患者ではなく、アスリートであると感じさせることは重要である。 ストレングスコンディショニングの現場と比べると、理学療法クリニックやアスレティックトレーニングルームは異なった雰囲気があります。リハビリのスペシャリストを非難しようとしている訳ではないのですが、アスリートはむしろ後者の領域にいるべきでしょう。そして、優れたセラピストはリハビリテーションを快活にさせ、アスリートの競争心を煽ることで、アスリートにとって現在の身体的現状を忘れ、ジムに戻ったときの大きな精神的利点を提供してくれます。 精神力な利点について言えば、エクササイズがムードに与える影響と、様々な慢性的疾患のリスクを減少させることは、改めて強調する必要さえないでしょう。あえて言えば、その効果はかなり大きく、リハビリ期間中にこれらの利点をアスリートに持ち続けさせることは重要なのです。さらに深く掘り下げたいのであれば、最近発表されたメタ分析の論文:Exercise as a treatment for depression(鬱病の治療としてのエクササイズ)を強く推薦いたします。 2. 小さなことが、行動に関して大きな成果を産みます。 トレーニングをしている時、ほとんどの人はより健康的な食事をします。意識的か無意識的なのかは個人によりますが、それは何度も目にしていることです。 同様に、多くの学生アスリートは定期的にエクササイズをしているときは、クラスでもより良いパフォーマンスを見せますし、あまりにたくさんの自由時間を与えるとその作業に集中し続けることが難しくなります。 ポイントはなんでしょうか?事実として、トレーニングはある種の悪い習慣を排除します。同様に、生理学的レベルでは、脳の活動を活性化させ、社会にとってより生産的なメンバーにさせることをサポートします。 3. 傷害は単独で起こるものではない 投手は、単に肘に機能的な問題があるために肘を故障するわけではありません。むしろ、運動連鎖に沿った身体的問題の積み重ねによって肘が犠牲になっていることが多いのです。例としては、尺側側副靭帯の断裂をした選手は、健全な選手と比べ、Yバランステストのスコアが有意に悪かったということがGarrisonら(2013)によって証明されました。 このことを踏まえると、身体全体を無視して、腕だけのリハビリに集中して、これを何ヶ月も行うことは馬鹿げているでしょう。残念なことに、理学療法士は保険的な制限からそれほど多くの時間を選手に費やすことができず、そのためこれら重要な補足的なリハビリテーションのアプローチまで至らないこともあるでしょう。ここが、有能なストレングスコンディショニング専門家が不足を補うことのできる絶好の場所なのです。 4.トレーニングは身体組成を向上させ、数多くの望ましい結果を導いてくれます。 ある個人が術後の期間で、筋肉量がかなり落ち、体脂肪が相当増えていることを聞いたときは、ひどく腹がたちます。これは決して起こってはいけないことです。 健全な体組成を維持することで、股関節置換術後の祖父の状態が後退しないよう助けてくれるのと同樣に、良好な筋力—体重比率を維持することで、半月板修復術後の大学サッカー選手が後退することを回避する可能性は上がるでしょう。 これらの利点は、荷重でのシナリオにのみ与えられるだけではありません。肥満は画像診断の正確性に制限をかける最大要素であることは間違いないことを覚えておいてください。言い換えると、リハビリテーションがうまく進まず、MRI、または、レントゲンを撮る必要が出てきた場合、肥満することは、レントゲン技師の正確な読み取りを困難にさせます。少しの予防はかなりの治癒に値するのです。 5.エクササイズをすることで、運動学習の向上を促進することができます。 リハビリ中は、新しく、望ましい動きのパターンを獲得しようと努めるでしょう。研究では(こことここを読んでください)、エクササイズと共に(特に有酸素エクササイズ)に新しいタスクを導入された時、運動学習が向上することが証明されています。 丈夫で健全な有酸素システムと確かな運動能力を維持することで、リハビリの努力をより効果的なものにしてくれます。 6.対側性の筋力トレーニングは固定した四肢に伝わります。 交差転移(あるいは、学習転移)として知られるメカニズムによって、対側肢をトレーニングすると、トレーニングしていない側の四肢のパフォーマンスも向上します。例としては、右下肢の膝を手術し、右下肢を固定し他状態で、安全にトレーニングできる左脚をトレーニングすることで、手術側(右)に効果を得ることになります。固定した下肢の筋量の萎縮を小さくすることにはそれほど効果はありませんが、筋力、パワー、固有受容感覚の低下を絶対的に小さくすることはできるでしょう。実際に、競技復帰に関して、この“フリーリハビリ”はかなり効果的な大きな手助けになります。 余談ですが、Hortobagyiらの交差転移に関する研究によって、筋力の転移は遠心性エクササイズの場合により効果が大きいようで、このアプローチを優先することで更なる効果を期待できるということが証明されました。 いくつかの重要な点 この記事を終える前に、いくつかの事を明確にしておかなければなりません。 1.すべてのトレーナーやストレングスコンディショニングコーチがすべての傷害を引き受ける準備があるわけではありません。 もしあなたが“腰椎分離症”という言葉を聞いた事がないのであれば、腰部のブレースをつけた選手のプログラムを組むべきではありません。そして、尺骨神経移動術と尺側側副靭帯再建術の違いが分からないのであれば、野球肘の術後患者を受け入れる準備はできていません。無責任になってはいけません。 2.効果的な術後トレーニングには、優れたコミュニケーションが要求されます。 リハビリテーションプランを監督する理学療法士やアスレティックトレーナーと、定期的に話をするべきです。彼らは、アスリートが漸進する準備ができているかどうか教えてくれますし、リハビリセッションでしたことと被ることがないよう助けてくれるでしょう。進歩を観察するだけでなく、自分の継続教育のためにもリハビリセッションのいくつかを観察することも奨励します。 3.疑わしい場合は、アスリートに無理をさせない。 大学院の教授の一人である、Dr.David Tiberioがかつて言ったのは、理学療法士は“できる限り積極的であるべきだが、けがをさせてはならない”ということです。私はこれをさらに一歩進め、フィットネスコンディショニングの専門家はリハビリテーション過程においては、“保守的であり、けがをさせるべきではない”と提唱します。フィットネスの維持・向上と競技復帰を促進させることが我々の仕事であり、リカバリーの過程を後退させてはいけません。要するに、漸進に関しては、リハビリに関する人達に全てのチャンスを与えてあげてください。 4.漸進は多くの方法を通して起こるものであるということを覚えておく。 漸進はエクササイズの選択のみではなく、絶対的負荷、動きのスピード、量、頻度、時間、そして、その他の多くの要素の観点からも起こります。うまくいかない要素がたった一つでもあれば、リハビリテーションを後退させてしまうこともあるので、プログラムし、にストレスが多くかかってしまう場合には、別の場所のストレスを減少させなければなりません。例を挙げると、トミージョン手術からのリハビリ中、4−6ヶ月を目処にアスリートは投球を開始した時、肘内側のストレスが増大しますが、多くのアスリートはストレングストレーニングとリハビリテーションプログラムの中で行っている握る種目の量を減らすことが効果的でしょう。 5.”偶然的“な安定性要求に注目する 回旋腱板が最も良い例であるように、多くの筋肉は反射的に作用します。肩の術後、患側の回旋腱板が反射的に働いてしまうので、健側をあまりに早く(あるいは、あまりに多くの負荷をかける)トレーニングすることは注意しなければなりません。交差転移については前述しましたが、これは右側対左側のトレーニング効果ほど単純ではありません;神経システムはすべてを興味深い方法で支配しています。 まとめ この記事を発表するにあたり、術後期間中の適切なエクササイズの重要性を強く説明できたことを願っています。“適切”が何であるかはそれぞれの個人によって違うでしょうし、執刀医、リハビリテーション専門家、ストレングスコンディショニング専門家、そして、アスリートからの情報を総合して決定するべきであるということを忘れないでください。そして、アスリートがどのように行っているのかを基準に、常に漸進、あるいは後退できる、柔軟なプロセスであるべきなのです。

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ACWRのリハビリへの応用

手術後や受傷後のアスリートなど病理学的なプロトコールの制限がある場合、低下している慢性的(長期的)トレーニング負荷に対して何かできることはあるのでしょうか?ACWR(急性:慢性トレーニング負荷割合)のリハビリへの応用方法についてティムが質問に答えます。

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私たちの患者には、治療が必要なのでしょうか?それとも、もっと大きい容量のカップが必要なのでしょうか?

私自身を含め多くの人たちが痛みと損傷を理解するために、いくつかの事柄を簡潔にまとめようと思います。痛みをとらえるために最も分かりやすい方法の一つは、カップの比喩です。間違いなく欠点はありますが、治療の“全体像”を見るのに役立ちます。カップの比喩では、私たちの生活の中にあるストレス要因や負荷などすべてが、カップの許容量を超えると痛みが起きると考えます。つまり、溢れ出すと痛みを感じるというわけです。 あなたのカップには何が入っているのか? ストレス 組織の損傷 睡眠不足 心配 恐れ 不安 習慣 痛みは、あなたにとって有害であるものすべて(あなたのカップの中味)と快適なものすべて(カップの容量を増やすこと)とのバランスです。 これは、2つの方法で助けられるという、すぐに実施可能な比喩と言えます。 1) カップの中にあるストレス要因や負担になるものを減らす。 2) もっと大きなカップを作る。
 このカップの比喩は、基本的に、生活の中のストレス要因に対して、前向きに適応できない時に私たちは痛みを感じるということを示しています。また、ストレス要因は、身体にかかる物理学的負荷だけではないことが分かります。つまりX線画像で見つけられるような退行変性に限ったことではないのです。(これについて詳しくはこちら)どのぐらい持ち上げたり曲げたりする動作をしなくてはならないかということだけでもありません。また、心配や恐怖、落ち込み、痛みに対する破局的思考、睡眠不足、病歴、家族、仕事など他のストレス要因もカップに入っているかもしれないことに気がつきます。 これらのストレス要因は、本質的に悪いことではなく、実際、生活におけるこのようなストレスが触媒となって私たちに反応を起こしてくれます。このようなストレス要因が、私たちを強くし、耐久性を持たせ、上手に対応できるように、レジリアンシー(回復力)を構築してくれるのも事実です。古くからのことわざで「何かしてもらいたければ忙しい人に頼むとよい」というのがあります。 じっくり考えるべき問いかけ・・・痛みに結びつく要因で、治療されるべき要因はこれまでにありましたか?私は、いつもこの質問を投げかけてから私の講義を始めます。驚くことに、治療を必要とする痛みの原因や症状は、ほとんどないように思います。 たとえば、痛みに関連していると通常考えられている次のような生体力学的要素を私たちは治療しますか、また治療しなくてはなりませんか? MFD脂肪浸潤 腹横筋の発火のタイミング 内側広筋の発火のタイミング カッティング動作中の膝の外転モーメント 膝関節炎における内反モーメント 膝関節炎 関節唇断裂 回旋腱板断裂 腱症 骨棘 椎間板ヘルニア 肩甲骨の運動学 あなたがこれらを治療する必要はないと、私は考えます。確かにこれらは存在し、痛みに関与していることがありますが、治療後に痛みがなくなり機能が回復しても、これらが消えることはありません。そこで、カップの容量を大きくしてみたり、カップの中のものに対して耐えられるように訓練してみたりすればどうかという考えになるのです。これに関連するトピックを扱っているブログがあります:こことここ。 心理社会的影響も同様です 痛みに対する破局的思考も、コアの弱化についての信念、熟考、不安、落ち込みなども同様です。これらのすべてが痛みとリンクしていて、問題に関与していることがあります。しかし、これらすべてを治す必要はないのです。 私たちは耐えることができます。 私たちは適応することができます。 すべてのことに共通していますが、私たちは偏った考え方に挑戦する必要があります 私たちはストレスに適応可能であるということから、生活の中で発生するストレス要因を変える必要がないかもしれませんが、それらに取り組む努力をする価値はあると私は思います。実際、何が関連して、何を変えなければならないのかが定かではないということが、痛みや他の全てのことの難しいところでもあるからです。 ですから、臨床で自分に問うべき質問は: 具体的に何かしなければならないことがあるか? または 対処しなければならない具体的なことがあるか? これらの質問は似ていますが、異なります。ひとつは問題に対処する方法が1つまたは2つしかないと言い、もう一方は、できる限り良い状態にするために対処すべき痛みの原因が確実にあると言っています。ふたつの例を挙げてみます。 1) あなたの患者がアキレス腱障害を患っているとします。あなたは、トレーニング負荷をある程度減らし、アキレス腱に適応力をつけるために、活動への耐久性を構築し、トレーニング負荷をゆっくりと増やしていくことによりアキレスに特定の負荷を追加しなくてはならないと考えるでしょう。この場合、あなたが腱症を実際に“治療”するかどうかはわかりませんが、その人がその腱症に耐えられるようになるために、かなり特定されたこと(アキレス腱への負荷)が必要となったのです。
 2) あなたが治療に関わっている腰痛を患っている患者の問診をし、状況を把握した後、サイクリングやガーデニング、ランニングを再開することに効果があると判断します。2年間もこれらを一時的に中断していました。しかし、あなたがた二人とも、再負傷するのではないかと彼らが異常なほど恐怖感を持っていることに気がつきます。脊柱にストレスを与えてはならない、再び始めたいと思っていても、これまでしてきたような運動は椎間板にダメージを与えてしまう、と完全に思い込んでおり心配になります。サイクリングやガーデニング、ランニングだけでも効果があるかもしれませんが、怪我に関するこれらの信念にまず対応し、脊柱の捉え方を再概念化することの方が先決かもしれません。または、それらの有意義な活動の再開中でも構いません。他の意味での治療を施す前に、彼らの信念を最初に“治療”した方が、役に立つという一例です。 
最後に、治療を改善するためのもう一つの重要な質問は:
 大きなカップを作るにはどうすればよいか? これについては、少しズルをします。一緒に取り組む相手にたくさんのヒントがあると考えます。患者のストーリーを聞いて、しっかりそれを理解したならば、痛みの原因となるものが何か、痛みがどのように作用するかについてあなたの意見を説明します(患者の特定のストーリーに関連させながら)。次に彼らがより大きなカップを作るために何ができると思うかをたずねてもいいでしょう。もちろん、その前にコップのたとえ話を伝えておき、それから大きなコップを作るために何ができる気がするかをたずねます。これは、キーラン・オサリバンが“あなたにとって良いことは何ですか?”とたずねるのと大変よく似ています。または、デビッド・バトラーとロリマー・モーズリーが“あなたのSIMs (Safety in Me:私の中の安全)は何ですか”とたずねるのに似ています。 また、次のような大きな質問を投げかけてみたらどうでしょうか: あなたはどうすればより健康になれるのか? あなたがより健康になるために私がどのように手伝えるのか? 私が、この“(痛みを)落ち着かせ、(カップを)作り直せ”というアプローチで気に入っていることは、これを行う方法がたくさんあることです。だから一見互いに非常に異なったアプローチをしているかのように見えるセラピストでも、臨床で同じような成果を出しているのはこれが理由だと思います。この見方により、みなさんがより大きなカップを作れるように、私のサポート力の向上のため、異なる業種の専門家からさまざまなコースを受講し続ける必要があると思っています。まとめとして、カップを大きくできる領域と痛みの緩和に役立つ領域を列挙します。 認知要因:肯定的な信念、高い自己効力感、認知の柔軟性、受け入れ、マインドフルネス 感情的要因:ストレス回復力、不安の少なさ、ポジティブな気分 対処反応:適応的で柔軟な対処 社会的要因:ポジティブな文化的要因、協力的な家族および職場環境、経済的安心感、教育 身体的要因:身体への段階的な負荷、コンディショニング、適応できる機能的行動 ライフスタイルの要因:身体的に活動的であること、健康的な睡眠、健康的な体重、非喫煙者

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パフォーマンスのための理学療法:なぜ私たちの職業は進歩する必要があるのか

理学療法は、けがのリハビリに始まり、けがの予防、さらにはパフォーマンスの向上に及ぶまで広範囲に広げることができます。人々が自身の身体を最大限に活用できるように本当の意味で手助けするには、私たちはそれら三つ全てに焦点を当てる必要があります。 しかし、私たちの多くはそうはせず、そしてもしあなたがその一人であるなら、かなりチャンスを逃していると思います。 これがなぜ起こるのかは確かではありませんが、もし推測するのであれば、私達を躊躇させる2つの主な考えがあるのではないかと思います。 大多数の理学療法の専門家は、けがのリハビリに集中しており、これには私たちの大学のカリキュラムや職場の環境をも含んでいますが、これによって、人々が自身の機能とパフォーマンスを最大限にさせることを手助けするという私たちのポテンシャルを実に制限しています。 私たちはほとんどの時間を「パフォーマンス」ではなく「機能」に注目することに費やしています。 おそらくこれはただの専門用語かもしれませんが、私が学校に通っていた時とキャリアの序盤において「機能」は人々の日々の生活における活動のことであり、そして「パフォーマンス」はスポーツのことでした。そうではありませんでしたか?少なくともそれが私の認識でした。 私はこの定義に、これ以上ないくらい同意できませんでした。私が今どのようにこれらを定義するかを次に書きます: 機能とは活動です。もちろん、これはお風呂に入ったり服を着たりといったことを含むこともできますが、ランニングやジャンプ、投げる、そしてスポーツをすることも一般的には機能であると言えます。 パフォーマンスとはそのような機能をいかにうまく行えるかということです。 パフォーマンスとはアスリートだけが行うものではありません。私たちは皆、私たちが自身の身体を使って行いたいあらゆる機能を実行しなければなりません。これはおそらく、理解しなければならない最も重要なコンセプトであり、そして私のチャンピオンパフォーマンススペシャリストのコースを受講し終わった人たちが最も役に立ったと言った主なことの一つです。 パフォーマンスのための理学療法へ移行する必要性 多くの理学療法士にとって最も一般的なパフォーマンスのスペクトルの視点と、私が推測するものを次に挙げます。どこかの時点で、自分自身のベースラインを定めたでしょう。多くの人はそのベースラインを元に、パフォーマンスを復元または向上させることのどちらかに集中します。 私たちは傍観して、誰かがけがをするのを待ち、それから彼らがベースラインへ復元するのを手助けするのです。 ところで、そもそも、彼らのベースラインがけがをした理由の一部であったらどうしますか? もし、彼らの機能をベースラインに戻すことにだけ集中したのであれば、彼らのパフォーマンスを最適化し、そして向上させるための機会を完全に逃しています。 これが、非常に多くの人がけがの再発や慢性的な痛み、そして手術の失敗が起こる理由の一つだと考えずにはいられません。人々をベースラインに戻すことは十分ではなく、彼らのキャパシティを増加させ、ベースラインを向上させなくてはならないのです。 すでに周知のように、筋力不足やモビリティの問題、そしてアンバランスさなど、多くのことがけがを起こしやすくします。 ソーシャルメディア上で、非常に多くの理学療法の方法が事実的に非効果的か一時的のどちらか、またはその両方であるという批判が最近増加しています。まさにその通りでしょう。 しかし、もしかしたら、理学療法の方法が問題なのではなく、全体の計画なのではないでしょうか?もしかしたら、私たちはただ機能を復元することだけに集中しすぎていて、パフォーマンスを最適化し向上させることには十分でないのではないでしょうか? もし、頭上への肩の可動域の制限があり、ジムでオーバーヘッドプレスを行うたびに肩に痛みがあるのであれば、その痛みは理学療法で大きく軽減できるでしょう。しかし、オーバーヘッドプレスを再び行えば痛みが戻ってくる可能性が高いとは思いませんか?痛みを軽減し、以前のベースライン(適切ではない)に戻しましたが、彼らのモビリティを最適化してはいません。 彼らの長期的な見通しはあまり良くないですよね? パフォーマンスのための理学療法の目的 パフォーマンスのための理学療法の目的は、機能を取り戻すだけでなく、身体のキャパシティを増加させることです。 単に以前のベースラインへ戻すだけでは充分ではありません。私の見解では、それは「これまでの」理学療法です。パフォーマンスのための理学療法は機能を取り戻すだけではなく、さらにパフォーマンスを最適化し向上させようとします。私にとって、それが重要な違いなのです。 もしパフォーマンスの最適化をスペクトルに加えるのであれば、このようになるでしょう: しかし、これだけでは十分ではないと思いますし、もっと良くすることができると思います。 もし、パフォーマンスを取り戻す、または向上させようとしているのであれば、パフォーマンスを最適化しようともするべきです。現実的に、この二つのコンセプトには重複する部分があります。 これは、二つの方法で私たちの焦点を変化させます。 これらのコンセプトは全て重複することを示しています。私たちはパフォーマンスを取り戻して最適化でき、そしてパフォーマンスを最適化して向上することができます。それらを個別の要素と考えるのは、理想的ではありません。 私たちの思考プロセスを後ろ向きから前向きな視点へと変化させます。終着点が単にベースラインへと戻すだけではなく、最適化することでもあり、うまくいけば彼らのパフォーマンスを向上させルことであると理解していれば、けがのリハビリのプロセスについてのあなたの全体的な見解を初日から変化させます。 私たちの職業にはパフォーマンスのための理学療法が必要である 良いニュースがあります。 理学療法士は診断とけがの治療にとても優れています。理学療法士のけがの評価と治療を可能にする評価と診断のスキルは、その人の機能とパフォーマンスのレベルを評価することにも容易に応用することができます。 考えてみてください、けがをしている人と健康でパフォーマンスを向上させたい人とを評価することの違いは何でしょうか? スペシャルテストです。それがおそらく答えでしょう、違いますか? スペシャルテストは特定のけがの診断を容易にするように作られています。もし、このスペシャルテスト、または一連のテスト、が陽性であれば、そのけがをしているのかもしれません。 しかし、スペシャルテスト以外のもの全ては、その人の機能のレベルを本質的に評価します、違いますか?筋力、モビリティ、バランス、動作。これらは、ある人の完璧なパフォーマンス療法とトレーニングプログラムを作るために評価できる全ての項目です。その後、私たちはこれらの特性の一つ一つを最適化し向上させるために取り組むことができるのです。 あなたはどのようにこれら全てを組み合わせますか?けがを治療して身体を最適化するのです。 それには、あなたの考え方を変化させるだけで良いのです。

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コレクティブエクササイズの正規分布曲線

あなたが驚くことであろうと認めざるを得ません。私にとって、コレクティブエクササイズは常に効果があるものではないのです。そうです、言ってしまいました。ああすっきりしました! コレクティブエクササイズは、リハビリの世界と、おそらくそれ以上にパーソナルトレーナーの世界で、近年人気急上昇が見られたものの一つです。今では皆がバイオメカニクスと動作パターンを評価し、所見されたことに対してコレクティブエクササイズを処方しようとしています。これは素晴らしいことです。 私は、最近、パーソナルトレーナーディベロップメントセンターのJon Goodmanと、理学療法とパーソナルトレーニングがどのようにより効果的に協力できるかについての記事を共著しました。私たちこのコンセプトについて少し話し合いました。Jonは、彼が述べたいくつかの理由から、パーソナルトレーナーがアセスメントを行うことについて、どちらかと言えば反対する強固な立場をとっていました。私はこのことについてはJonほど強く思うわけでなく、私たち皆が動作パターンを見て、専門家同士でより良いコミュニケーションを取るために利用できるFMSのようなシステムが開発されたことを歓迎します。誰かのためのプログラムを個別化するためにできるあらゆることは、私にとって素晴らしいものです。しかし、注意点があります… 多くの人が語ろうとしない誰にも知られたくない秘密があります−コレクティブエクササイズはいつも機能するとは限らないのです。 これは、コレクティブエクササイズが常に機能しないことを認めるのを少し恐れているという、ほぼ「裸の王様のお話」のようになっています。もしかすると、彼らは、コレクティブエクササイズが機能しないのは彼らの技術が未熟だったり、知識が十分でなかったりと考えているかもしれません!私が、その気持ちを楽にしてあげましょう。私にとっても、コレクティブエクササイズはいつも効果があるわけではありませんし、なぜ「効果がない」のかを理解することはなぜ「効果がある」のかを理解するのと同じくらい重要なのです。 コレクティブエクササイズの正規分布曲線 コレクティブエクササイズの効能の連続体をよりわかりやすく説明するために、コレクティブエクササイズの正規分布曲線を作りました。コレクティブエクササイズの正規分布曲線によって、なぜある人達はコレクティブエクササイズに反応しないかを説明できます。正確な割合については100%確かではありませんし、これはただのモデルに過ぎませんが、少なくとも議論の出発点にはなるでしょう。 この図では、コレクティブエクササイズに対して非常に有効的に(そして多くの場合で即座に)反応する一定の割合の人たちがいることがわかります。これらの人たちは、私たち皆が手掛けたいと思うオールスターであり、即時反応群と呼びましょう。 反対に、コレクティブエクササイズに対して全く反応を示さない、一定の割合の人たちがいます。このような人たちにおいては、何かがコレクティブエクササイズが機能しないようにしているのです。おそらく、それは痛みや病状、アライメント不良、バイオメカニクス的な問題、構造的な異常、それどころか神経生理学的なことかもしれません。このような人たちには、本質的にコレクティブエクササイズ以上のことが必要です。 そしてそれ以外の人たちがその間に存在します。この人たちは、コレクティブエクササイズに反応しますが、おそらく即座の改善とはならないでしょう。このような人たちは、ある程度の時間がかかるでしょう。 コレクティブエクササイズの正規分布曲線を応用する これは理解することがとても重要なことなので、あなたがスクリーニングを行った人を分類し始めてよいでしょう。もし、あなたがまさに動作のスクリーニングを行い、コレクティブエクササイズをプログラムし、悪い動作を改善することができたパーソナルトレーナーであるならば、おめでとうございます!それは素晴らしいことで、あなたはクライアントにとって非常に良いことをし、そして、もしかしたら、将来的に私たちの医療システムのお金を節約したかもしれません。 コレクティブエクササイズに反応しない人たちに対して、ここが、私がパーソナルトレーナと理学療法士が協力することが実際に効果的であると考えるところです。ひとりで何かするよりも、協力することでより素晴らしいことができるでしょう! コレクティブエクササイズだけでは一切反応しない少ない割合の人達に対しては、徹底的な理学療法的評価が必要で、さらに、徒手療法や神経筋運動計画テクニックや、そして最終的にコレクティブエクササイズといった治療の組み合わせが必要となるでしょう。 しかしここに、仕事で関わるのにかなり素晴らしい集団がいるのです−その他の全ての人たち!この人たちは中間的な領域であり、人々が目的を達成できるように私たちが実によく協力できるのです。真ん中のグループを見てください、私は、コレクティブエクササイズは機能するかもしれないし、機能するのに時間がかかるかもしれないと言いました。この状況では、もし、理学療法士とパーソナルトレーナーがより協力すれば、多くの人々に対して本当に効果を生み出すことができるかもしれません。 徒手療法を彼らのトレーニングに組み入れるというようなことで、人々が目的をより速く達成できるように理学療法はパーソナルトレーナーと協力することできます。 私は幸運です。私のキャリアを通して、最も優れたストレングスコーチたちやパーソナルトレーナーたちと一緒に仕事をしてきており、この人達が私のすることをより良くしてくれたのです。これは非常に理想的な仕事環境で、私が常に多職種の人のグループとチームで仕事をする理由です。 実際の例 うまく説明するために、2つの例を示しましょう。誰かのスクワットのテクニックが良くないことに気づくことがあるかもしれません。コレクティブエクササイズはうまく機能していません。このような人は、理学療法士と協力して対応するのにぴったりの人です。おそらく、股関節の関節包が硬いか、股関節のアライメントがうまく揃っていないのかも知れません(ほんの2つの例ですが、複数の可能性もあります)。彼らに必要なのは、特定の徒手療法によって正しい方向性に送り出すことかもしれず、そうすれば彼らはうまくいくのかもしれないのです。 もしくは、片側だけ肩のモビリティが非常に悪い人をスクリーニングしたとしたらどうでしょう?時折の一般的な肩の痛み以外には特に多くの症状はありませんが、コレクティブエクササイズは効果がないようです。私は先週、よく一緒に仕事をするパーソナルトレーナーから実際にこのような患者を紹介されました。この特定の患者には、コレクティブエクササイズだけでは改善しない非常に特有の肩甲上腕関節包の硬さがありました。 私はこのようなことをいつもしており、トレーニングを継続しながら問題を解決するために適切な徒手療法のテクニックを用いて、数セッションかそれより少ないセッションでその人のパターンを改善させることができます。私にとって、これは楽しいことです。協力することで、人々が目的をより速く達成する手助けをするのです。 そういうわけで、次回コレクティブエクササイズの効果が出ていないと感じた時に、罪悪感を感じないでください。あなただけではありません。もし、あなたが理学療法士かパーソナルトレーナーであるのならば、それぞれの協力できるパートナーを見つけ、そしてコレクティブエクササイズの正規分布曲線を忘れないでください。

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ファンクショナルマッスルファンクション:構造的解剖のその先にあるもの

すべての筋肉の解剖学を学ぶのは大変なチャレンジです。私自身も解剖学に関する知識をテストされることへの不安や、またそのチャレンジに見合うことへのプライドを覚えています。その頃理解できていなかったのは、機能的動作中に筋肉が実際にすることに関しての洞察を提供するには、その知識がいかに限界を持っているのかということでした。解剖学の知識は必要ですが、人間の運動における筋肉の役割を理解するには充分ではないのです。 グレイインスティチュートでは、人間の動きの”真実”を常に探し求めています。この探索はしばしば我々に、教えられたことを再検討することを強いることとなり、結果として過去に私たちがクライアントに行ったことは、最適ではなかったかもしれないと認識することにもなります。下の欄に記載してあるのは、我々がいかにその専門職を”積み重ねていくか”を変えることになる筋肉の機能に関わる幾つかの要因です。 ファンクショナルマッスルファンクション(機能的筋肉機能)は、イコンセントリック(遠心求心性/伸張短縮性)ー 従来の指導は3つのタイプの筋収縮があることを示唆しています:コンセントリック(短縮)、エキセントリック(伸張)、そしてアイソメトリック(等尺)。しかしながら、歩行のようなよくある活動のチェーンリアクションバイオメカニクス(運動連鎖生体力学)を学んでみると、筋肉が同時に伸張しつつ(一つの面、あるいは一つの関節において)短縮し(他の面において、あるいは他の関節において)、長さが変化していない(他の面において、あるいは他の関節において)こともありえることが明確になってきます。グレイインスティチュートにおけるこの筋肉機能の”真実”は、イコンセントリックという言葉で表現されます。 ファンクショナルマッスルファンクション(機能的筋肉機能)は、シナジスティック(相乗的/協働的)ー 構造解剖は筋肉が主働筋と拮抗筋であるという概念を奨励します:一つの筋が他の筋に相反すると。とても孤立した関節における一面動作であれば、これは真実でありえますが、ほとんどの機能的運動においては、この主働筋と拮抗筋という観点は全くの誤りです。相乗作用/協働作用は筋活性の協調されたパターンです。これらの協働作用は一時的に集結し整理され、調整可能な柔軟性を持ちます。すべてのコーディネイトされた動作は、すべての筋肉が同じタスクを達成しようと試みる(競争ではなく協調して)という協働作用を含みます。 ファンクショナルマッスルファンクション(機能的筋肉機能)は、タスク特定 ー 筋肉解剖の学習の成功のために、あらゆる筋肉の機能は普遍であると考えがちです:常に同じであると。しかしながら、筋肉はイコンセントリックでシナジスティックですから、筋肉は特定のタスクで要求される動きに対して調整をすることができ、またしなければならず、そのタスクに対して他のすべての筋肉の貢献も必要となります。筋肉は、スイミングのタスクと比較して歩行のタスクにおいて、またジャンプのタスクにおいては異なる貢献の仕方をしなければなりません。人間という機械は、同じ筋肉群を使って異なったタスクのために異なった協働作用を作り出すことができる能力に恵まれているのです。が、しかし、状況が変化をすれば同じタスクでも異なる協働を要求します。 ファンクショナルマッスルファンクション(機能的筋肉機能)は、状況依存である ー タスクを達成するために身体が成功する協働作用をつくりだすことができ、異なった状況のためにその協働作用を適合させる必要があります。グレイインスティチュートでは、単一のタスクにおいてさえも、そこで作られた協働作用は”状況”に依存する、と言います。この状況を最もわかりやすく考える方法は、タスクが行われる環境や、身体の最初のスタート位置、そしてその他影響する外在の力を考慮することでしょう。協働作用は重力と床反力を利用しなければなりません。協働作用は運動のモメンタム(惰性)を捉えなければなりません。協働作用は、伸張された筋膜と結合組織のエネルギーを利用しなければなりません。これらの環境的な力は常に変化をしています。タスクに対する状況の影響の例の一つは歩行です。スムーズで平坦な表面で歩く、不均等で傾斜した表面で歩く、スイミングプールで歩く、月の上で歩く、これらはそれぞれ異なった環境(状況)をもち、そのタスクをうまく完了させるために協働作用の適合を要求するのです。

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ファンクションの定義とは

ファンクショナルビデオダイジェストシリーズのトゥイーコロジー(微調整学)のDVDからの抜粋。ギャリーとデーブが、ファンクションとは?誰にとってのファンクションなのか?ファンクション=機能の本当の意味を理解するための定義を語ります。

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トゥィーコロジー™(微調整学)

人間の動きの専門家としての私達の使命は、身体機能の基本原則とコンセプトを、最も効果的なエクササイズ、活動、テクニックに置き換えて、その機能性を、より向上させるということにあります。機能に関しての統合的な基本原則から、実践的な方策を論理的に導きだすことができなければなりません。 私達の身体の動きの生体力学は複雑です。人間の身体機能を完全に理解するためには、機能的な生体力学の、より正確な表現に基づいた基本原則とコンセプトを理解する必要があるのです。 トゥィーコロジー(微調整学)とは、分析、リハビリテーション、傷害予防、パフォーマンス向上トレーニング、コンディショニング等にとって、より最適な機能的環境を作るための、最も効果的で機能的な変数要素を選択し使用するための学問です。 私達がどれだけ効果的にトゥィーク(微調整)することができるかどうかは、私達がどれだけ人間の身体機能を理解しているか、ということに比例します。トゥィーコロジー(微調整学)は、私達の戦略の基礎となるものです。私達の戦略、そしてその微調整が基本原則とエクササイズを繋ぎ合わせる完全なリンクを作り上げるのです。 トゥィーコロジー(微調整学)は、概念(私達が身体機能に関して知っていること)を、動き(身体機能の表現)に変化させることでもあります。身体機能の基本原則は、私達が知っていることであり、そしてそこに生まれる戦略(微調整)は、私達が既に知っていることの実践的な使い方であり、エクササイズは、私達が既に知っていることを実際に試してみることなのです。 私達が、身体機能とは柔軟性を持ち、可変的で、駆動され、無意識に、恊働して、三次元的に、チェーンリアクションとして存在するものであると理解しているならば、その変容も常に、その概念と一貫したものであるべきです。 私達の用いる微調整、戦略は、純粋な生体力学を直接的に反映したものでなければならず、人間の身体機能のスペクトラム全体を助長し、向上させることができるものであるべきです。人間の動きは複雑なものであるために、それに伴う微調整もまた複雑です。 私達の人間の生体力学に関する理解と認識の旅路が、この複雑さの中の単純な側面に導いてくれたところで、私達の戦略の機能的変数に関する学びは、トゥィーコロジー(微調整学)の複雑さを単純化することを可能にしてくれます。微調整学を論理的に適用する、というタスクにより、プログラムを3つの基本的な微調整にまとめて単純化してみましょう。 動きの微調整 次元の微調整 影響の微調整 エクササイズや活動の動きの面を、特定の面で促進する環境を作り上げるということは、身体機能は三次元的であるという理解を反映して、動きの微調整としての重要な意味を持ちます。人間の身体の動きのすべては、3つの面全てに関与していますが、動きの面の微調整によって、矢状面、前額面、横断面の動きの優先度を微調整することができます。 ポジションの微調整は、身体の重力との関係性、安定の度合いに関してエクササイズに大きなインパクトを与えます。これらの微調整は、仰臥位、伏臥位、横臥位、四つん這い、膝立ち、座位、立位等のポジションの変化を含みます。これらの主要なポジションの要素は、また更に詳細なポジションの微調整によって、変化します。例えば、支持基底面を広くした立位、支持基底面を狭く、スプリットスタンスでの立位、爪先を内側に向けて、爪先を外側に向けて、片脚で、等。 可動域の微調整もまた、重要な機能の変数です。可動域の微調整は、最終域、中間域、開始域、可動域全体等、全ての範囲を含みます。関節の微調整により、全身の動きに対する関節の関わりを増やしたり減らしたりすることができます。これにより、身体の部位全てと統合された状態を保ったままで、一部の関節のみを機能的に孤立させることも可能となります。 次元の微調整は、時間、反復回数、距離等の変数を含みます。時間は、反応を速くしたり遅らせたりする操作にも使うことができます。反復回数の微調整はレップ数、セット数のみでなく、グループ分けやピリオダイゼーションをも含みます。時間と反復回数の微調整は、決まった時間の中でどれだけの反復回数を実行できるのか、あるいは、反復回数が決まったエクササイズを完了するのにかかる時間をトレーニング変数としたりして、お互いに影響を与え合います。 水平、垂直の距離、あるいは回旋度数等、いくつもの距離に関する微調整もあります。 シークエンスの微調整は、レベル分けや漸進にとって重要な要素です。何を最初に行うのか、そして次に何を、そしてなぜ行うのかによって、機能的なシークエンスが理論的に決定づけられます。 コントロール、負荷、機器、フィードバックの微調整を使うことで、効果的に、エクササイズや活動に影響を与えることができます。外部に存在するコントロールのタイプや量を決定することはエクササイズに大きく影響を与えます。 負荷の微調整はエクササイズや活動にパワフルな影響を与えます。フリーウェイトや、バンジーコード、プーリーシステム、マシーン等の負荷のタイプを微調整することで、望む反応を引きだすことができます。 負荷のタイプ、負荷の適用されるポイントによって、望む効果に対しての微調整の機能性が決定されます。使用される機器のタイプは、最終的に機能を促進するための環境作りをするにあたって、チャレンジ要素を与える微調整となります。フィードバックの度合い、タイプ、タイミングはエクササイズの反応に劇的な影響を与え、また活動に対しての継続的な反応も提供します。 トレーニングやリハビリテーションプログラムの漸進と効率性は、エクササイズを成功の閾値内において実行できるか否かによって決定されます。トゥィーコロジー(微調整学)は、身体機能の現時点の閾値を決定するツールでもあります。この閾値は、トゥィーコロジー(微調整学)を適切に使いこなしてデザインされた機能的な環境で実施されることで、その幅を広げていくことができます。ここで使用される方策は、望む身体機能と、私達の持つ、人間の動きに関する理解と知識とに沿ったものでなければなりません。

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